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社台スタリオンパレード2020が開催される
取材・文・写真/村本浩平
毎年、多くの生産関係者を集める社台スタリオンステーションの種牡馬展示会。それは昨年のリーディングサイアーがひしめき合っているだけでなく、血統構成や種付け料といった多彩なラインナップ。そして、毎年のように話題性溢れる新種牡馬を導入し続けていることも大きい。
今年、新種牡馬として導入されたのは、日本ダービーと天皇賞・秋を勝利したレイデオロ。昨年は6戦6勝、そのうち、G1・5勝の成績を残し、昨年のエクリプス賞年度代表馬に輝いたブリックスアンドモルタル。現役時はブリーダーズカップジュヴェナイルに優勝し、父としては今年のフロリダダービーの勝ち馬(ケンタッキーダービーは1位入線後降着)となったマキシマムセキュリティを送り出したニューイヤーズデイ。そして先日、電撃引退が発表された大阪杯とジャパンCの勝ち馬、スワーヴリチャードとなっている。
まず展示が行われたのはブリックスアンドモルタル。種牡馬説明を行う事務局スタッフが、
「その年の北米年度代表馬が社台スタリオンステーションで種牡馬入りするのは、サンデーサイレンス以来30年ぶりとなります」
とのコメントを行う。そのサンデーサイレンスは日本競馬界の歴史を変えただけでなく、生産馬のレベルを世界水準まで押し上げた。
種牡馬展示会では運動神経の良さだけでなく、闘争心も見せていたサンデーサイレンスであるが、ブリックスアンドモルタルはその正反対といった感じで、四肢の柔軟さを見せつけるだけでなく、大人しく周回を重ねていく。
だからこそ、30年の時間をかけて日本生産界に広がった、サンデーサイレンスの血とはうってつけの感もあり、足して二で割ったどころか、全米を統治した2頭の能力がさらに増幅された産駒が、この掛け合わせからは出てきそうな気がしてくる。
▲ブリックスアンドモルタル
続いて登場したのはレイデオロ。この日は現役時に管理をしていた藤沢和雄調教師も展示会に足を運んでいた。その藤沢師は、
「なかなか勝てなかった日本ダービーを勝たせてもらえた馬でした」
と話しながらレイデオロの方を見る。名伯楽に悲願のタイトルをもたらしたレイデオロであるが、そもそも、その牝系にはレディブロンド、シンボリクリスエス、そして母のラドラーダと、藤沢厩舎ゆかりの血統が並ぶ。
そして、祖祖母にその名を残すウインドインハーヘアは、ディープインパクトの母でもある。つまり、ディープインパクトやその後継種牡馬、そしてブラックタイドやキタサンブラックの血を引く馬との配合を行うと、ウインドインハーヘアの牝馬クロスが成立する。
血統論者ならずとも、誰もが試してみたい、いや試して欲しい配合とも言える。そもそもディープインパクトを配合された繁殖牝馬は、母系も優秀な馬が多く、その上、近年のリーディングサイアーは、その後、ほぼ間違いなくブルードメアサイアーともなっている。
そう考えると、ディープインパクト牝馬にレイデオロの配合は、近年を代表する名牝のクロスだけでなく、その母系の後押しからしても、スーパーホースを誕生させる方程式ともなっていきそうだ。
▲レイデオロ
3頭目に展示されたのはニューイヤーズデイ。マキシマムセキュリティを送り出しただけでも、ニューイヤーズデイの種牡馬としての価値の高さ、そして成功も間違いないと言えそうだが、それをさらに後押ししてくれそうなのが、現役時にブリーダーズカップジュヴェナイルを勝利した仕上がりの良さ、そしてスピード能力の高さと言えるだろう。
近年、日本で成功している種牡馬、もしくは母父としても需要が高いのは、アメリカの短距離系種牡馬。それはサンデーサイレンス系の種牡馬と相性がいいだけでなく、日本ではダートでの産駒成績も証明されているからである。
ニューイヤーズデイの産駒もダートは勿論のこと、マキシマムセキュリティの競走成績からしても、マイルから中距離に適性がありそう。サンデーサイレンスの血が入った繁殖牝馬とはアウトクロスが作りやすいのは明らかであり、芝もこなせるようだと、ひょっとしたら日本でもクラシックホースを送り出すことさえあり得るのかもしれない。
▲ニューイヤーズデイ
新種牡馬最後の登場となったのはスワーヴリチャード。この日は現役時に管理をしていた庄野靖志調教師、そしてオーナーだった諏訪守氏も展示を見守っていた。
事務局スタッフからマイクを渡された諏訪氏は、
「セレクトセールで一目見たときから、どうしても欲しいと思った馬でした。ここに来られた皆さんに応援していただいて、数多くの産駒を残していただきたいと思いますし、彼の子どもで取れなかった日本ダービーが勝てたら、これ以上ない幸せだと思います」
と語った。その日本ダービーこそ、同じ時期にスタッド入りしたレイデオロの前に2着に敗れたものの、4歳時の大阪杯では長くいい脚を使って勝利、そして5歳時のジャパンCでも、成長力を示して勝利と、まさにハーツクライ産駒の長所を証明した。
しかも、不得手と思われていたマイル戦の安田記念では、3着に敗れはしたものの、自身は1分31秒4の時計で走破したことは、種牡馬としての可能性を高めた感もある。先にハーツクライ産駒として種牡馬入りしたジャスタウェイが、スプリントでも重賞馬を送り出しているように、スワーヴリチャードもまた、自身の得意とした条件だけでなく、父が果たせなかったマイルG1制覇、そして諏訪オーナーの夢でもある日本ダービー制覇を果たして欲しい。
▲スワーヴリチャード
30頭が展示された今年の種牡馬展示会で、トリを務めたのは今年で19歳となるハーツクライ。昨年までトリを務めていたディープインパクト、そのディープインパクトと並ぶ社台スタリオンステーションの看板だったキングカメハメハの名前が、このラインナップになくとも、次代のリーディングサイアー候補、そして、日本競馬界を生産面から動かしていく種牡馬が、社台スタリオンステーションに揃っていることは変わりない。