今週からは池上調教助手との「ジュニア」対談を行います!
2010.4.1
先週の尾関厩舎は、土曜日中山12R(4歳500万円下)に出走したノボパガーレの3着が最高という結果でした。
パガーレについて話をすると、状態は平行線でしたので、メンバー的にもチャンスはあるだろうと思っていたのです。なので、本音を言わせていただければ、あそこまでいったなら、勝ってほしかったぁ。何とも言えないもどかしさも感じさせられますし、競馬はなかなか思い描いたようにいかず、本当に難しいです。
そう思うのには、競馬の結果に加えて、もうひとつ理由がありまして、ノボパガーレ自身の成長ということがあるのです。個人的な意見を言わせていただきますと、ノボパガーレ自身の成長が遅いように思えるのですよ。
僕を含めた多くの関係者は、2歳、あるいは3歳の早い段階の馬について話をする時、成長分込みというか、伸びていくと思われる部分をイメージしているはず。ノボパガーレについてもそうで、接している感覚では、いまの時点ではもっと成長しているイメージがありました。
まだ4歳ですし、成長の余地はあると思いますが、500万を勝ち、さらに上のクラスで戦い、活躍するためには、さらなる成長が不可欠だという感触を受けます。素質的には良いモノを持っていると思いますので、何とか成長を遂げてほしいと願わずにはいられません。
さて、今週からは、桜花賞に出走を予定しているギンザボナンザなどを管理する池上厩舎所属の池上昌和調教助手との対談が始まります。
同じ「ジュニア」ということで、僕自身、聞いてみたい部分がたくさんありました。まずはギンザボナンザの話から聞きましたので、そちらをどうぞ。
[西塚信人調教助手(以下、西)]今回は、池上厩舎所属の池上昌和調教助手をお迎えして、対談をお送りしたいと思います。池上さん、どうぞよろしくお願いいたします。
[池上昌和調教助手(以下、池)]どうぞよろしくお願いいたします。
[西]さっそくですが、アネモネステークスでのギンザボナンザ、おめでとうございました。強かったですね。
[池]ありがとうございます。クイーンカップでは折り合いを欠いて敗れてしまったのですが、それまでのレースを見ていて、折り合いを欠くということはまったくの想定外。むしろ、折り合いが付くのがセールスポイントだという意識でしたので、正直なところショックを受けました。(前に)壁ができなかったという状況があったにせよ、負け過ぎじゃないかとの思いもありながらアネモネステークスを迎えたので、半信半疑の部分がありました。枠(2枠2番)も良かったですし、折り合いも付いて、非常に良い内容だったと思います。
[西]デビュー前から、いわゆる「走る」という手応えみたいなものはあったのですか?
[池]特に、走るという手応えを感じていたわけではありません。入厩当初は、牝馬特有と言われる線の細さを感じさせられたりもしていましたし、力強さが出てきてほしいなぁと思ったのが最初の印象でしたね。
[西]新馬戦で3着になりましたよね。
[池]その頃には、走るという手応えを感じることができていて、走ってくれるだろうと期待していました。お陰様で、今年の3歳世代は良いメンバーが揃っているのですが、入厩当初はその馬たちと比較して特別な存在というのではなく、普通という感覚でした。
[西]評価が変わったのはいつ頃だったのですか?
[池]調教を進めていくなかで、飼い葉を食べてくれて、少しずつ実になっていったのですよね。本格的に追い切りを始めた頃でも、意外と動けるというくらいでした。それが、新馬戦が近くなるにつれ、他の未出走馬と併せ馬をするなどより実戦に近い追い切りを行っていったのですが、全然手応えも違えば、息遣いも違ったのです。闘争心むき出しというのではなく、涼しい顔をして併せた相手に負けなくて、走るんじゃないのかなという手応えを感じ始めて…。1週前の追い切りでは「走る」という手応えがハッキリとしていたという感じです。
[西]そうだったのですか。セレクトセール出身ということもあり、もう最初から素質の片鱗を見せていたと勝手にイメージしていました。
[池]そうじゃないんですよ。でも、手応えを感じた新馬戦の1週前の頃には、付くべきところに筋肉が付いて、馬体面でも良化がありましたよね。
[西]今回勝って、栗東へ滞在することになったと、新聞で読みました。栗東に滞在するのは、飼い葉食いの面を考えてのことですか?
[池]今回の栗東滞在ということで言うと、いちばんは輸送です。これが京都だったら、環境を変えず、美浦で調整していた可能性はより大きかったと思います。それが阪神ということで、輸送時間がさらに長くなるなど、この時期の牝馬にとってリスクは少なくないと思うのです。だからと言って、栗東に滞在することにリスクがないかと言えば、環境が変わることによるリスクもあります。そこは、ひとつの賭けではあるのですが、輸送のリスクよりも、滞在のリスクの方が小さいと思ったからです。
[西]ある意味、勝負ですよね。しかも、競馬が終わった週の金曜日というタイミングでもありますから。(栗東への輸送は、アネモネSの6日後の金曜日に行われた)
[池]そう。正直、もう1週間くらい桜花賞まで間隔があったなら、迷わず栗東へ向かっていたでしょうね。調教師との話し合いでも、そこがポイントでした。
[西]翌週に出発するという選択肢はなかったのですか。
[池]行くならその週だという判断でした。栗東へ行くなら、環境に1日でも早く慣らしたいですからね。
[西]そうですよね。
[池]競馬が終わって飼い葉が落ちてしまったということではありませんでしたので、行っても良いのかという意識にはなりました。
[西]個人的には、そこを聞いてみたかったんですよね。実際に、(栗東滞在が)決まったのはいつだったのですか?
[池]水曜日の段階でやっと結論を出した感じでした。
[西]金曜日に出発して、日曜日に馬場を見せながら馴らして、という感じになるのですかね。
[池]翌週の頭までは、角馬場などで調整をしながら馴らしていければいいかなと思ってはいますよ。翌週の末に、軽い追い切りが始められればというような感覚ですね。
[西]逆算すると、そういうことになりますよね。
[池]金曜日以外ということで言えば、木曜日だとレース(アネモネS)からの日数が短くなるわけですし、土曜日ということになると、3連休で渋滞が激しくなってしまい、逆に輸送が仇となる可能性があるということで、金曜日にこだわったのですよ。
[西]木曜日だとやはり短いですよね。
[池]やはり、もう1日欲しかった。ウチは彼女に限らず、レースが終わった後、3日間くらい運動の日となっているのです。3日運動して、軽く角馬場で乗って、そこまで確認してから決めたかった。
[西]栗東滞在については、最近は飼い葉や輸送ということより、その施設で鍛えるためという意味合いが強くなっている傾向にありますよね?
[池]そういう傾向が強いようですね。ただ、僕自身は栗東の施設を見学に行ったことはありますが、滞在して馬を調教したことがないので、違いであるとか、その効果については実体験を持っていないんですよ。しかも、彼女について言えば、トモに必要以上の負荷を掛けたくないという面がありまして、美浦でも坂路には入っていないので、栗東でも入ることはありません。
[西]あくまで、今回のギンザボナンザの栗東滞在は、輸送のリスク回避が目的ということですね。
[池]そうです。あくまで栗東“滞在”ということですよ。実際、栗東に到着してすぐに、いつもと同じように飼い葉を食べるとは思いません。先ほども言ったように、翌週の中間くらいまでに環境に慣れて、食べるようになってくれて、週末に軽い追い切りができればOKだという感覚でいます。もし、週末に追い切りができなかったとしても、ここまで順調に競馬をしてきている馬ですし、その週にサラッとやれれば十分だと思います。
[西]そうですよね、ここまで順調に使われてきている馬ですからね。飼い葉食いはどのくらいなのですか? フィードマンとしては、牝馬の飼い葉食いと聞くと、気になってしまうんですよね。
[池]牡馬のように、モリモリ食べるわけではありませんが、では食べないかというと、まったく食べないというわけではありません。
[西]読者の方のなかには想像ができない方もいらっしゃると思うので、説明させていただきますと、本気で食べない馬というのがいるのです。与えたモノを綺麗に、飼い葉桶の底をナメるくらいに食べるかというと、与えられる量や個人差もありますが、そのような馬ばかりではありません。必ず多少残す馬もいますし、日によって量が増減することもよくあるのです。
[池]あとは、食べるスピードが馬によっても違うし、同じ馬でも日によって違いますよね。
[西]些細なことで、変化したりするのですよね。
[池]例えば、放馬馬に絡まれて、テンションが上がってしまったことで、いつも食べる飼い葉の分を食べることができなくなってしまうこともありますからね。
[西]あります、あります。ただ、基本的に食いが細いタイプなら、ある飼料だけはよく食べるというモノがあったり、食べないのであれば、食べないなりに対応もできるのですが、まったく食べない馬というのはどうしようもないですよね。ひと口どころか、飼い葉桶に頭さえ入れない馬がいますからね。
[池]厩舎によっては何kgという表現をしたりもしますが、ウチで言えば5升から7升のエン麦、あるいは配合飼料を与えています。そこで飼い葉食いが少し細いと言うのは3升から4升、日によっては5升を何とか食べるという感覚でしょう。本気で食べない馬というのは、1升とかいうレベルになりますからね。
[西]もう絶食に近い状態と言っても言い過ぎじゃないと思いますよ。あと、栗東とかばかりでなく、出張という形で近いところで言えば福島でも、レースの前日に到着してから競馬が終わるまでまったく食べないということもありますからね。
[池]います。本当に食べない馬は、本当に食べないですからね。
[西]そういう部分で言えばギンザボナンザは食べる方なのですか。
[池]そうですね。それなりに食べてくれます。追い切りをかけた日は多少スピードが落ちたり、量が減ったりということはありますが、日によっては与えた分をしっかりと食べてくれますし、いわゆる普通の牝馬という感じでしょう。
[西]牝馬としては食べる方ではないですか。
[池]時間をかけてでも、与えられた量を食べる牝馬はいますし、またそういう馬でないと上のクラスに行けないと思いますよ。
[西]そういう部分はあると僕も思いますよ。
[池]飼い葉食いが細い馬で上のクラスに登っていったという馬は、僕の経験だけでは記憶にありません。
今週はここまでとさせていただきます。
冒頭で触れたノボパガーレが出走した土曜日(27日)は、尾関厩舎は中山で2、3、7、10、そして最終レースに管理馬たちを出走させていました。
僕も装鞍の手伝いなどのため、3時に起きて、飼い葉を付け、調教に跨った後、9時30分までに到着するように美浦を出発したのです。そして、最終レースが終わり、競馬場を出たのは17時を少し回った頃でした。
もうクタクタで、車の運転をしていても凄まじい眠気に襲われたのです。そのような状況について、他の厩舎の助手さんたちと話をしたところ、やはりほぼ同じようなタイムスケジュールで動いているということでした。
みな一様に、「帰りの運転が眠い」と言っていて、「よくこれまで交通事故を起こして命を落としたという事例がない」という話になりました。大先輩となるベテランの助手さんに聞いても、「昔から同じなのだが、いまだかつて交通事故が起きていないのが不思議」という答えが返ってきたのですよね。
なるべく電車でと思うのですが、ギリギリになってしまうことも多く、どうしても車ということになってしまうのですよ。
今回の眠気はこれまでよりも強烈だったということで、気を付けなければならないと痛感すると同時に、ハードなんだという感覚を覚えました。
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