今週からは、小島茂之調教師をお招きしての対談です!
2010.5.6
先週の木曜日(4月29日)に、ミンナノアイドルが無事ゲート試験に合格いたしました! これで晴れて競走馬としてデビューが許されることとなったわけです。
入厩以来、順調に調教を進められていますし、いよいよ速いところにステップアップしていくことになります。
ここまで跨ってきた感じでは、ひいき目なしに標準くらいは動くことができるという感覚があり、とにかく楽しみの方が大きいです。
来週以降も、ミンナノアイドルについてお伝えさせていただきますので、どうぞ楽しみにしてください。
さて、今週からは、いよいよ小島茂之調教師との対談がスタートします。
調教師の先生は、この対談で初登場ということになるのですが、ぜひ小島先生に出ていただきたいと思っていたのですよね。いろいろなお話を聞くことができ、自分なりにとても面白かったという手応えがありました。それではさっそくどうぞ。
[西塚信人調教助手(以下、西)]今回は小島茂之先生との対談になります。こうして調教師の先生に来ていただくのは初めてなので、緊張します(笑)。よろしくお願いいたします。
[小島茂之調教師(以下、小)]こちらこそよろしくお願いします。
[西]さっそくですが、阪神牝馬Sのプロヴィナージュ(2着)は惜しかったですね。
[小]1400mでしたから、勝ったに等しかったでしょう。あのメンバーを相手に1400mで勝つのは、相当に難しいと思います。
[西]僕の勝手なイメージでは、1600m~2000m、あるいはそれ以上が合うのかなと思っていたのですが。
[小]僕自身は、1600mが下限だと思っています。1600mでも、日本におけるトップの馬たちとの戦いになると、厳しいという印象もあります。ただ、何とか勝てるように頑張っていかなければならないわけですし、1600mなら何とかできるんじゃないかという思いも持っているんですよ。
[西]1600mなら対応できる可能性を感じているということですね。
[小]本当は1400m(阪神牝馬S)には出走させるつもりはありませんでした。ただ、賞金を加算しなければ(ヴィクトリアマイルへの出走が)怪しいなという状況になってきたので、オーナーと(佐藤)哲三(騎手)と相談して、「1400mもありだろう」という結論になったのです。哲三も「自分に考えがある」と言ってくれたのですが、バッチリだったですよ。
[西]事情によっては、適性外のレースに出走させなければならないケースもあると思うのですが、そこで激走されると、かえって適性が分からなくなるというか、困惑する部分はありませんか?
[小]プロヴィナージュに関しては、今回はこれくらい走るだろうという自信はありました。1400mを走らせると決めたのは1ヵ月半くらい前だったのですが、まず、そのように早くから準備していましたからね。それと、春の目標としてヴィクトリアマイルがありますので、そこへ目指していくとなった時、1600mに向かって馬をつくっていかなければなりません。
[西]目標に向かって、馬を適応できるようにしていくのですね。
[小]本来は、京都のような大きいコースの2000mとかが合うのでしょう。それと、1~2年前のプロヴィナージュだったら厳しかったかもしれませんが、いまなら対応できる手応えがあったんですよね。哲三も成長を感じていたようで、「いけるでしょう」と言ってくれました。
[西]最初からそのような手応えを感じていたのですか?
[小]いや、積み重ねてきた結果ですよ。デビュー当初は、上手くいけば2000mも持つだろうが、マイルがベストだろうと思わせられていました。それがいまでは1600mが下限だと思わせられている。馬が成長してきていることもあるのでしょう。先日の六甲S(阪神芝1600m)で佑介(藤岡騎手)が乗って、「1600mでも対応できるし、これですぐに2000mで競馬すると言っても、対応できます。こういう馬だとは思いませんでした」と驚いていたように、そういう部分を兼ね備えているのでしょうね。
[西]距離に関してや、芝・ダートといった適性の見極めというのは、とても難しいと思うのですが、いかがですか?
[小]全部の馬が同じように対応できるわけではないですからね。個人的には、馬体、血統、そして乗った感触などから、イメージは持ちますよ。ただ、そのイメージに囚われないようにすることも気を付けている。常に、芝かダートか、距離に関しても、もって長くて良いか、短い方が良いのかと、思っているんですよ。だから、先ほど話が出たような、思ってもみなかった条件で激走されるというのは、あまりないかな。手を尽くしたからここへ行ってみようということはあるけど、それで激走したことって……あるかなぁ。
[西]ありませんか?
[小]あっ、そう言えば、逆はあったね。芝を使ってきて、そろそろ引退だということになった。ただ、僕ともうひとりの助手はダートが面白いんじゃないかと思っていたので、お願いしてダートに出走したら、結局、そこから3つ勝ったということがあったね。
[西]そうですか。そういう適性というか、可能性の部分は難しいなと感じさせられるんですよ。
[小](池田)鉄平(調教助手)をはじめ、ウチの助手たちからヒントをもらうことはたくさんあります。俺の考えも言うけど、スタッフの考えや意見も言わせるようにしているんですよね。
[西]西塚厩舎時代に隣で見せていただいていて、そういう面が素晴らしいと思っていたんですよ。調教師と調教助手の関係で見た時に、言葉は適当ではないかもしれませんが、(調教助手が)イエスマンにならざるを得なくなっていくというか、なかなか意見が言えなかったりするじゃないですか。
[小]えっ、どこの厩舎の話?(笑)
[西]どこということではなくてです(笑)。調教助手としては、自分が進言したことで失敗した時、責任を感じてしまいますよね。さっきの話で言えば、ダートを使って惨敗していたら、責任を感じると思います。
[小]でも、そういうことは頻繁にありますよ。この間も、「絶対に掲示板は外さない」と言っていたら、いちばん後ろを走ってきてさ(苦笑)。
[西]そうですか。
[小]そういうことはあります。だから、競馬は面白いのでしょう。思い通りにならないですからね。ただ、クィーンスプマンテの時(09年エリザベス女王杯)には、違った自信があって、話を聞かれた記者さんたちには、「よほどの不利を受けず、逃げることさえできれば、掲示板は外さない」と言いました。これで外すようなら、持っている引き出しやポケットをひっくり返して、もう一度考え直さなければならないと思っていました。あの時のように、すべてがハマることもあるということですよ。
[西]そうだったんですか。
[小]意見、言葉というのは、大切な情報のひとつですよ。調教助手や厩務員、そして自分自身の声のすべてがそうだと思います。
[西]携わっている人間なら、誰もがいろいろな感じ方をしていて、意見があるのでしょうけど、それをいかに引き出すことができるかというのが重要なんでしょうね。実は、そこがなかなか難しかったりすると思います。
[小]ウチでは、ハッキリ言えば、言わない方が怒ってしまう。もちろん、言われることで、頭にくることもありますよ(笑)。「何を言ってるんだ」という気持ちになったりもするけれど、そこで考え直すようにしています。
[西]先生はスタッフの人たちに、「言うように」と言っていらっしゃいますよね。
[小]ミーティングの度に、「9割はノーと言われるかもしれないが、まずは言え」と言っている(笑)。
[西]そうですか(笑)。
[小]極端な言い方ですが、言わないで、後から「こう思っていた」、「こうするべきだったんじゃないか」というのは、あなたの責任ですよ。例えば、どんなに小さいことであっても、僕に話をした。でも、ノーと言ったり、違う選択肢を選んだ。その結果、スタッフたちの言う通りになったら、こちら側の責任になるのですよ。
[西]そこで言うことによって、その責任というのは、こちらの手を離れて、先生になるということですよね。
[小]まあ、誰でも自己否定されると嫌なものなので、例えば馬に何か気になるところがあると言われただけでも、担当者はそういう気分になり得るのかもしれない。でも、それに打ち勝つというか、耐えられる人間つくりというのも必要なんじゃないかと思っています。
今週はここまでとさせていただきます。
先週、飼い葉の話をさせていただいたところ、こちらの予想を超える好評をいただきました。個人的には、対談と並行しながら、あのように現場の実態をお伝えできるような企画をやってみたいと思っていたので、嬉しかったです。
これからは、時々、あのような形の回をやっていきたいと思っておりますので、みなさんも何かあれば、どしどしとメールをいただければと思います。
ということで、最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。