対談の最終回は、映像とともにお送りします
2010.7.1
先週は、エフテーストライクが着順こそ6着(テレビユー福島賞)でしたが、あわやというレースを見せてくれました。
状態としては、この馬なりに高い状態をキープしている感じで、よく頑張ってくれたと思います。年齢(6歳)的にも、何とかこの準オープンを勝ってもらいたいと思っています。
あと、先週と言えば、頑張ってくれると思い、ここでもお話をさせていただいた新馬たちでしたが、残念な結果となってしまいました。
無責任だという突っ込みをいただくかもしれませんが、新馬戦は本当に難しく、先人たちの『馬は走ってみなければわからない』という言葉を痛感させられます。
普段おとなしい馬が競馬に行くとテンションが上がってしまうケースや、その逆も珍しいことではなく、調教では何でもないのに、競馬では進んで行こうとしないなど、実際にレースをして初めて分かるケースが多いんですよね。僕自身も楽しみにしていただけ、本当にショックでした。
さて、今週は、佐藤雅人装蹄師との対談の最終回になります。雅人に協力してもらい、映像を収録させてもらいましたので、それとともにお楽しみいただければと思います。それでは、どうぞ。
装蹄の映像を見る
(※スマートフォンではご覧になれません)
[西塚信人調教助手(以下、西)]読者の方から、装蹄師になるためにはどうしたら良いのですか、というメールが届いていたんだけど、どうすればいいのかな。
[佐藤雅人装蹄師(以下、佐)]宇都宮に日本で唯一の装蹄学校があるのです。年に1回募集が行われていて、それを受験することになりますね。
[西]雅人もそうだったの?
[佐]そうです。高校卒業して、すぐに受験しました。
[西]試験はどういったことをするの?
[佐]1次が筆記試験で、2次試験が面接でした。
[西]人気は高いのかな?
[佐]最近はそれほどでもないと聞きます。でも、僕たちの時には、16人の定員に対して80~90人くらいの応募がありました。
[西]何年間か通って、卒業すると装蹄師のライセンスが取得できるということ?
[佐]期間は1年間で、卒業試験で装蹄師2級の資格を受験することになります。それに合格すると、2級の認定装蹄師になれるということですね。
[西]それで、JRAの開業装蹄所をはじめ、地方競馬で開業する装蹄師、あるいは北海道の牧場で活躍する装蹄師に弟子入りすることになるわけだ。
[佐]競走馬ばかりではありませんし、それぞれでいろいろな基準があると思います。JRA施設内の開業装蹄所に弟子入りする場合は、2級の免許が必要というルールになっています。
[西]雅人は親父さんが装蹄師という環境だけど、他の人たちは弟子入り先をどうやって探すの?
[佐]在学中に募集が来るのです。それを見て応募する形になりますね。一般社会の求人と同じような形です。
[西]ボードに、給料や福利厚生などの条件が張り出されるわけだ。
[佐]そうです。
[西]個人的な印象で申し訳ないんだけど、装蹄師というと、相撲部屋みたいな雰囲気を感じるんだよね。兄弟子・弟弟子という関係がそう思わせるのかもしれないし、よく見かける厳しい光景がそう感じさせるのかもしれない。『バカ野郎』、『この野郎』という怒号が飛ぶことも珍しくないからね。
[佐]関係としては、やはり社長と従業員とかいうのではなく、あくまで親方と弟子ですね。昔は、ひとり親方に何人もの弟子がいて、家で晩飯を食べさせて…という環境だったようですから、いまよりもよりそういう傾向が強かったようです。
[西]いまはそこまでではないよね?
[佐]そうですね。家に住み込んでいることもないですし、晩飯を一緒に食べることもあまりないですね。でも、親方は親方ですし、兄弟子は兄弟子です。
[西]そういう環境の中で、いつかは佐藤雅人装蹄所を開業することを目指して頑張っているんだと思うけど、開業する上で基準みたいなものはあるの?
[佐]一緒に弟子として頑張って、そこから牧場を中心に開業する人もいます。JRAのトレセンで装蹄師として開業する場合は、2級の上に1級というのがあり、その上に指導級という資格があって、その資格を取得すると工場を貸付していただけることになるのです。
[西]1級とか指導級という資格はどうしたら取得することができるの?
[佐]2級を取得後、5年が経過すると1級の受験資格が与えられるのです。そして1級合格後、10年が過ぎると指導級を受験することができることになっているのです。
[西]雅人は、あと何年で指導級を受けることができるようになるの?
[佐]あと6年ですね。
[西]長いねぇ。いやぁ、大変だよね。キツイし、目立たないし、厳しい世界だからね。収入が良いと言われるけど、大変さと比べるとどうかなと勝手に思ってしまうところもあるし。
[佐]経費もかなり掛かりますからね。
[西]ちなみに蹄鉄は1本でいくら? 1000円くらい?
[佐]鉄の種類にもよりますが、一頭分が4本で3600円程度です。
[西]装蹄師は非常に神経を使う仕事だし、屈腱炎になろうものなら、装蹄師が悪いと言われたりするじゃない。他の原因も大いにあったりすると思うんだけど、とにかく大変だなという思いが強いんだよね。
[佐]以前、ある獣医さんがおっしゃった言葉は忘れられません。『この1頭のことを思ったら、誰のせいにもできないものだ。装蹄師は俺の鉄が悪かったのかと考え、獣医はこうしておけば良かったのではないかと考え、そして調教師は自らの調教について振り返り、もっとこうしておくべきだったんじゃないかと考える。それぞれが考え、思っていかないと、その1頭は成功しない』と言われたんですよね。まったくその通りだと思いました。
[西]良い言葉だなあ。まったくその通り。そういう意味で、この仕事は、遣り甲斐という部分が大きかったりすると思う。
[佐]もう無限だと思っています。個人的には、技術を信用していただけるようにより精進して頑張っていって、真剣に1頭、あるいは様々なことについて話ができるようでなければいけないと思っているのですよね。
[西]雅人はいつ頃から装蹄師になろうと思っていたの?
[佐]同窓会で女の子から「作文通りだね」と言われたことがあったのですが、自分でそのように書いたことは忘れていたんですよね。他の職業に憧れた時期もありましたが、子供の頃から親父が鉄を打っている姿を見てきましたし、物心ついた時には装蹄師と思っていたのでしょうね。
[西]将来はどんな装蹄師を目指したい?
[佐]それだけは聞かれるだろうと思って、準備しておきました(笑)。
[西]あっ、そう(笑)。
[佐]獣医学的にも、いろいろな発見や発明がされたりして、日々、もの凄い進歩を遂げています。その中でも、伝統技術的な我々の職業ですが、先人達が残りしてきた技術、技法の良い部分を継承しながら、新しい知識を得て、より発展させていけるように頑張りたいです。古いモノを否定するのではなく、すべてを知った上で、さらに新しい知識、技術を得ていくことができれば、柔軟に対応していくことができると思うのです。
[西]最後に良い話を聞かせてもらいました。が、カットで(笑)。
[佐]お願いいたしますよ~(笑)
[西]今回はどうもありがとうございました。貴重な話を聞かせてもらえて、感謝しています。
[佐]こちらこそ、ありがとうございました。また何かお力になれることがあれば全力で頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。
今回は以上となります。いかがでしたでしょうか。
雅人とは毎日ように顔を合わせますし、仕事上の話はするのですが、今回のようにじっくりと話をしたのは久しぶりだったりします。
こうして話をしてみると、失礼な言い方かもしれませんが、随分と勉強しているなぁと感じると同時に、プロフェッショナルとしての意識が伝わってきました。
我々も確認する歩様以外にも、内が高いとか、前をどのくらい落とすなど、細かい部分まで要求されるのが装蹄師であり、本当に難しいと思います。
でも、頑張ってもらって、佐藤雅人装蹄所を開業できるように頑張ってもらいたいです。僕も刺激を受けながら、頑張りたいと思います。
あっ、あと最後に、ライヴについてなのですが、ブッチャけ、チケットの売れ行きがあまり良くないらしいのです。どうかお願いです、時間のある方はぜひ足を運んでください。
ということで、最後はいつもの通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。