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すべてはこれから。伊藤工真騎手の未来に期待します!
2010.10.21

秋華賞をアパパネが勝ちましたが、いやぁ強かったですよね。まさに、横綱相撲というレースには、僕的には驚きさえ感じました。

史上3頭目となる三冠を達成したわけですが、古くはここでマックスビューティが負けてしまっていますし、あのエアグルーヴ、あるいはウオッカでさえ三冠を成し遂げていないのですから、やっぱり偉業ですよ。

それにしても、3月からここまで、夏休みがあったとはいえ、コンディションを高いレベルで維持するのは、本当に至難の業。

牝馬特有の難しさということが言われますが、やはり実際にそう感じさせられます。飼い葉は調教の強さが変わった瞬間、一気に食べなくなってしまい、体が細化してしまうことも珍しくないですから。

それ以外にも、発情という生理現象などもありますし、精神的にテンションが高くなる傾向が強いなど、コンディションを維持する難しさはいろいろあります。

アパパネに関しては、個人的に、前走で4着に敗れてしまっていた状況から、上昇カーブを描き、キッチリと調整して巻き返したところに強い興味を覚えます。

競馬を走ることでしか戻らない勝負勘というような部分がある馬もいますし、牝馬ならなおさら、続けて目一杯に仕上げられた極限の状態を維持することも、やはり難しいと思うのです。

一度走って、そこから確実に上昇カーブを描いていって、キッチリ勝つということが凄い。明らかに力差を見せつける強いレースぶりには、衝撃を受けました。

さて、今週は、銀シャリこと伊藤工真騎手との対談が最終回を迎えます。それではどうぞ。

西塚信人調教助手(以下、西)いまは何勝しているの?

伊藤工真騎手(以下、伊)今年は13勝です(取材時。10月17日終了時点では16勝)。

[西]30勝にいきたいね。

[伊]減量だからこそ、今年は30勝に到達したいです。なんとかしたいですね。

[西]NHKマイルCでG1にも騎乗したしね。どうだった?

[伊]気持ち良かったです。

[西]東京のG1だから、余計にそう感じるのかもしれないね。キングレオポルドだったよね。応援してました。

[伊]せっかくいただいたチャンスだったのですが、良い結果を出すことができませんでした(12着)。もっと僕が上手だったらと思います。

[西]G1はやはり雰囲気が違うよね。ダービーの日とかは、さらに違うけどね。

[伊]ダービー前日の調整ルームは雰囲気が違います。ピリピリ感というか、何とも言えない緊張感があります。普段はみんなで食堂とかにいるのですが、そういう風景もありません。

[西]そうなんだ。話は変わるけど、いまでも木馬とか乗っている?

[伊]乗っていますよ。毎日ではありませんが、時間があれば乗るように心掛けています。

[西]騎手の人たちって、その週の競馬を全レース見ると聞くけど、やっぱり見ているの?

[伊]全部見ています。


[西]遊びに行ったりしてない?

[伊]行った時でも、見ています。


[西]なるほどね(笑)。で、彼女はいるの?

[伊]いません。

[西]本当のことを言ってごらん(笑)。

[伊]本当です。いま、出会いを求めているのです。

[西]いまは独身寮だよね?

[伊]そうです。

[西]銀ちゃんは自炊しているとか言っていたよね?

[伊]はい。1年目はしていました。

[西]部屋で米を炊いてたんだ?

[伊]そうです。

[西]独身寮には食堂もあるでしょ。

[伊]ありますけど、十六穀米が食べたくて。

[西]やっぱり米なんだ(笑)。いまは炊いていないの?

[伊]していません。それ以外にやらなければならないことが増えて、時間がないのです。

[西]そりゃ、そうだよね。あれだけ乗っていれば、時間ないよな。真面目な話をすると、自分自身でもっとここをこうしたいとか、努力しなければ、と思っているところってある?

[伊]減量があるので、もっと積極的な競馬をしなければダメだという意識はあります。

[西]先輩とかにも言われたりするの?

[伊]そうですね。それ以外にもいろいろ言ってくれる先輩方がいます。松岡先輩は、減量が取れた時のことも考えなければダメだと教えてくれます。減量がなくなると競馬も変わりますので、早仕掛けにならず、しっかりと我慢できることも大切だということなのです。ノリさん(横山典騎手)は、その馬に合った乗り方をするのが大切だと言います。人間でもそうですが、先頭を走ることが気持ち良いと思う馬もいますし、逆に先頭に立つと不安を感じる馬もいますからね。本当に勉強になります。

[西]目標とする騎手はいるのですか?

[伊]ノリさんです。ノリさんはこうだという乗り方をしませんよね。前にも行くし、後ろからも行く。あくまで馬と流れの中でベストを求めていて、あのようになりたいと思います。

[西]田辺さんは?(笑)

[伊]田辺さんの追い方はすごく好きです。豪快な動きは好きですし、真似させていただいている部分はあります。(田辺騎手は)手が長いですし、身長もあるからできる部分もあるのでしょうが、見習いたいと思っています。

[西]そう言えば、いつもステッキを持ち歩いているよね。

[伊]いまでも持ち歩いています。

[西]クルクルと回したり、持ち替えたりしているけど、やはり感覚を磨いているの?

[伊]そうですね。上手く持ち替えられるようにとも思いますし、落とさないようにと思って持っています。

[西]勝負服を集めながら、バイクに乗っている時も持っているよね。

[伊]投票から終わった後、勝負服を取りに行く時は、AからFまでの厩舎では持ち歩いていません。自厩舎(古賀史厩舎)にステッキが置いてあるので、木曜日は投票所からAに向かって、そこからB、Cと行くので、ウチの厩舎までは持ち歩かないのです。

[西]Aから行く派なんだね。これは読者の方々には意味が分からないかもしれませんが、投票が終わった後、若い騎手たちはその週に乗る馬の勝負服を取りに回るのが慣例となっているのです。その際、投票所に近いAから行くのか、それとも奥のJの方から向かうのかで分かれるのです。銀シャリの場合、中間に自厩舎があるよね。

[伊]だから、ちょうどいいのですよ。ウチは3時過ぎくらいから次の日の調教の番組が決まるので、Aから勝負服をもらって行くと、確認しながら行けるのです。

[西]なるほどね。今年もあと3ヵ月ですが、30勝、そして初重賞制覇を目指して頑張ってください。

[伊]はい。積極的な騎乗を心掛け、できる限り頑張ります。

[西]今日はありがとうごしました。

[伊]こちらこそ、ありがとうございました。



いかがでしたでしょうか。まったく浸透していませんが、銀シャリという呼び名は、僕的にはしっくりくるんですよ(苦笑)。

銀シャリが競馬学校に入学した初日から知っていますので、いまだにそのイメージが強い。 何万人もの前で騎乗するなどの現在の活躍に、とても同一人物とは思えない感覚を覚えますし、それは歳を取るよなぁと実感してしまいました。

僕が言うのも失礼とは思いますが、銀シャリは、良い意味でも、悪い意味でもこれからのはず。より銀シャリらしい個性というものも、経験をしていく中で出てくると思います。

すべては、これから。天才と言われる同期に負けないように、これからの飛躍を期待しています。

ということで、最後はいつもの通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。