1日も早い復興を願うことしかできないというのが偽りのない気持ちです
2011.3.16
ご存じのこととは思いますが、11日に東北関東大震災が発生いたしました。
ちょうど入厩してくる馬を検疫所に迎えに行った時だったのですが、時計塔が激しく揺れ、大きい地震であることはすぐに理解できました。
ただ、検疫所、あるいはその周辺の建物に異常がなく、ここまで被害が拡大する事態になるとは、その時点では想像できていませんでした。
馬を引っ張って厩舎に向かう途中で、午後として珍しく放馬した馬たちを見かけたのですが、この時点でも地震が大きかったからという感覚しか持っていませんでした。
そして厩舎に戻って、第二波がきたのですが、一回目よりも揺れなかった感覚もあったので、ただの大きな地震という意識でいました。
そうしたら、宮城県の震度が7であるというニュースが流れてきて、『これは大変なことになる』と思ったのです。
厩舎では、地震の直後から停電となりました。ただ、この時点では、水は普通に使用することができていました。
ところが、翌日の朝になって断水になり、一時騒ぎになりました。でも、断水はトレセンの中だけだったので、ウチの厩舎では近隣の育成牧場に水を譲ってもらいに行くことで、対応することができたのです。
給水車の前に列ができていた報道がされていましたが、給水が始まる前に列ができただけで、開始されるとスムーズに給水を受けることができました。電気についても、トレセンではほぼ通常通り使用することができていましたし、翌日曜日にはライフラインはほぼ通常通りに戻ることができていました。
一方、施設の方は、土曜日は坂路とダートDコースが使用することができず、ウッドとポリトラックのみという状況で、通常は12時までのところを午後2時まで使用時間を延長する形で、調教が行われました。
翌日の日曜日はDコースだけが閉鎖され、15日の火曜日からは、コースに関してはすべて使用可能となり、トレセンはほぼ日常通りの時間が流れています。
ただひとつ、困ってしまっているのはガソリンですね。日常、車が移動手段となっていますので、買い出しも行けません。いまは車に乗らず、自転車で移動するというか、できる範囲でしか行動していないのです。
なかには、食料がないという方々もいらっしゃって、一時はどうなるかと思いましたが、こちらに関しては、厩務員食堂が営業を再開したので、大丈夫になったようです。
さて、中山は3月いっぱいが中止となりましたが、阪神と小倉は開催されることがJRAから発表されました。
開催そのものは、正直なところ、やろうと思えばできるのでしょう。ただ、余震はまだ続いていますし、計画停電、さらには電車が制限され、僕たち関係者さえガソリンがなく、駅などの交通機関まで辿りつくことができるかどうかわからない状況を考慮しての中止なのだと思います。
個人的には、ジレンマを感じずにはいらない状況です。日常的に過ごせるのなら過ごした方が良いとは思う反面、馬のために良しと考えていることが、一方で被災者の方の救助や支援の足かせになってしまうかもしれないわけですから……。
カイバを運んでくるトラックは燃料を必要とします。その燃料が被災地に回っていたら、違う形で威力を発揮することができるかもしれない。その現実も感じています。
関係者のなかにも、家族や知人が被災している方々がたくさんいらっしゃいます。平気なわけはありません。でも、みんな一生懸命、黙々と仕事に励んでいます。
自分としても毎日できることを精一杯やりながら、1日も早い復興を願うことしかできないというのが偽りのない気持ちです。
↑松岡騎手と今日撮った写メです。できる限りの仕事に励んでいます。昨日2時間並んでガソリンを入れたそうです。※今週は、対談の掲載を中止いたしました。ご了承ください。