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復興支援を目指して開催される競馬です。今週以降も頑張って臨んでいきます
2011.3.24

先週は、東北関東大震災被災地支援競馬が、阪神と小倉で行われました。

我が尾関厩舎は、もともと小倉に4頭が滞在していたのですが、今回は阪神へ7頭が出走することとなり、一緒に馬運車に乗り込み、行ってきました。

通常の関西への遠征においては、関東馬が使用できる阪神競馬場の馬房は決まっています。もし、溢れた時には、栗東トレーニングセンターの出張馬房に一旦入厩して、その後に競馬に向かうことになっているのですが、今回はそれでも収まりきらないほどで、特別に京都競馬場へも入厩できる措置が執られました。

一旦どこかに入厩してから競馬に向かうというのは、それはそれで大変だと実感したと同時に、自分自身としては、いろいろと勉強になることもあって収穫もありました。

トレセンと比べると、人手も足りませんし、何かと忙しいという状況になりますので、それだけミスが起きやすくなります。厩舎として、このような状況に対しての対応策を考えていくべきなんだろうと思いましたね。

3日間の出走馬たちはすべて、金曜日に京都競馬場に入ったのですが、月曜日に走る馬たちについては、今回の移動は良かったようにも思えました。

金曜日に到着、土曜日に1日に休ませ、日曜日に調教をして、月曜日に競馬というスケジュールで、今回は出走馬が2頭とも牝馬だったのですが、カイバ食いの面でも、時間的な余裕がありました。少なくても1回、できる馬は土・日と2回、調教できるのも良いと思います。

金曜日に行って、土曜日に競馬を走って、日曜日に帰るという流れよりも、ダメージが少ない感覚を覚えました。普段の遠征でも、そういう輸送スケジュールがあっても良いようにも思えましたね。

京都競馬場のダートコースを調教で乗ることができたのですが、クッションの効きが素晴らしく、コーナーの角度も緩やかで、トレセンとは違うんだと実感しましたね。あと、白鳥は競馬を開催していなくてもいるんだということも分かりました。当たり前の話かもしれませんけど(笑)。

美浦から京都への行程は、行きは約8時間で済んだのですが、帰りは夕方4時に出て、到着したのが日付けが変わった明け方2時過ぎでしたので、10時間を超えていました。

また、今回は関東馬がたくさん出走していたことで、宿泊施設も足らない状態に陥り、休憩所で寝泊まりをしていた人たちがいたり、あるいは暖房設備がなかったりと、やはり混乱の影響を受ける形となっていました。

それでも、非常事態の中、復興支援を目指して開催されている競馬ですので、今週以降も頑張って臨んでいきます。

前置きが長くなってしまいましたが、今週は、小林久晃調教助手との対談の2回目になります。それではどうぞ。

西塚信人調教助手(以下、西)久晃さんは去年いっぱいで騎手を引退されたわけですが、辞めようと考えるようになったのはいつ頃だったんですか。

小林久晃調教助手(以下、小)30歳になった頃かな。そこから5年やらせてもらったんだけど、気持ちが行ったりきたりというか、『あっ、面白い、いや面白くない』というように、揺れ動くんだよ。

[西]そういう気持ちになることってありますよね。

[小]ただ、面白くないと感じたりすることがある奴が競馬に乗っていては悪いと思ったんだ。馬券を買ってくれているお客さんに対しても、乗せてくれている関係者の方にも失礼だから。5年間はいつもそんなことを考えていたよ。


[西]30歳ぐらいからですか。

[小]そうだね。乗鞍が減ってきて、良い競馬ができなくなっていた。だけど、どんなに走らない馬でも競馬に乗っていたら楽しいんだよね。そこでの葛藤があって、本当にずっと悩んでいた。

[西]正直、攻め馬に乗っていて楽しいと思ったことがないので、僕には分からない感覚なのですが、「競馬が楽しい」ということは、騎手の人たちはみなさん言いますよね。

[小]えっ、追い切りに乗っていて「楽しい」と感じたりしないの? 終いで物凄く良い反応で伸びた時とか、気持ち良いじゃない。

[西]僕はあまりないですかねぇ。

[小]競馬に乗っていてそういう手応えを感じられたら、言葉にできないくらいの快感だよ。「ビンビン来てるよぉ」と叫びたい感じかな(笑)。

[西]快感指数というか、気持ち良さが違うんでしょうね。

[小]騎手はあの感覚を忘れられないとよく言うけど、あれ、本当だから。勝った瞬間の爽快感というか快感さは、何事にも代えがたいんだよ。

[西]騎手の人たちは、「勝った瞬間の気持ち良さに勝るものはない」って言いますよね。「あれがあるから頑張れる」と。


[小]そう、そうなんだよ。デビューした時から俺の中では、「1勝もできない、つまり0勝の年があったら辞めよう」ということは決めていたんだ。最後の1年は結局0勝だったから、踏ん切りをつけられたというか、それで辞めようと決めたんだよ。掲示板に載ったのも1回だけだったから。

[西]そうだったんですか。

[小]年齢的にも35歳になり、後の人生を考えたら潮時だと思えた。辞めて良かったと、半分は思っている。でも、半分は、ハッキリ言えば、やっぱり競馬に乗りたいという思いがあるね。

[西]そうですか。

[小]辞めてすぐの頃は、競馬場へ行きたくなかったからね。

[西]この前、競馬場から一緒に帰った時、その話を聞いて、何とも言えない気持ちになりました。

[小]だって、乗り役(騎手)が格好良いんだもん。掛け値なしに格好良いし、その面白さも知っているわけだよ。乗り役の、競馬を終えて引き上げてくる時の顔って、凛々しいんだ。パドックで跨る時も格好良いと思うけど、泥まみれになった顔で引き上げてくるのを見ると、格好良いなぁと思うし、あそこにいたんだと思えば、そりゃ乗りたいと思うよ。

[西]格好良さは僕たちでも分かります。でも、乗りたいと思うのは、騎手をやった、競馬に乗ったことがある人にしか分からないんでしょうね。

[小]改めて、騎手の偉大さを知ることができたのは良かったと思う。

[西]ひとつ聞きたいことがあるんですよ。仲良くさせてもらってると思っているので、聞けることなのですけど…。

[小]なんでも聞いてよ。

[西]騎手として、すごく輝いていた時期がありましたよね?

[小]すごくということではないよ。

[西]でも、輝いていた時期があって、当時、いまの投票システムだったら50勝はしていたと思うんですよ。こんな言い方をしたら失礼ですが、他の騎手の方々も以前にそういう輝く瞬間があったように思うのです。

[小]あったね。

[西]そういう時に、落ちていくというか、ターニングポイントってあったりするのでしょうか。

[小]あったね。デビューしてすぐの頃は、もちろん乗れないわけ。その中で数少ないチャンスをモノにしていかなければならないんだけど、減量があるから、馬も動くんだよ。でも、そこに技術はない。しかし、勝ち星を挙げ、結果が出ると、良い馬に乗せてもらえようになっていく。そして、さらに結果が出る。でも、そこでは技術が伴っていないんだ。そのことに気が付けるかどうかの差だね。俺は気が付けなかった(笑)。

[西]あっ、そうだったんですか。ということは、俺はできると思ったわけですね。

[小]もしかしたら上手いんじゃないの、と思ったね。でも、それは、おそらく、騎手の誰もが一度は思っているはずだよ。

[西]そうですか。

[小]本当に、自分中心に競馬が動いているような錯覚を覚える時があるんだよ。なんでもかんでも自分の思い通りになっちゃうんだ。

[西]そう思うんですね。

[小]24歳の時だったかな。当時は秋の福島が2開催連続で行われていたんだけど、夏場に腰を痛めていたのに、秋の福島で10何勝したんだよ。乗れば、上位に来る馬ばかりだし、また掲示板に来るんだ。

[西]へぇ、そうなんだぁ。

[小]乗り役って、25~26歳でターニングポイントが来るね。デビューして7年目くらいでしょう。そのあたりで必ず来る。

[西]そういうものですか。

[小](三浦)皇成のように最初からブレイクするのもいるけど、多くは徐々に乗り鞍が増えていく。

[西]2~3年目の減量が取れるかどうかという時にブレイクするパターンが多いですよね。

[小]豊(吉田豊騎手)にしても1年目は6勝しかしていない。それで2年目に20何勝かして、そこからだったからね。アイツは頭良い。

[西]そうなんですね。

[小]新人から中堅になっていく過程が大事だね。

[西]そういう意味では、最近、田辺とか凄いですよね?

[小]だって、アイツは上手いもん。良い馬に乗せたらG1を勝っちゃうよ。きっかけさえあれば、いつでも突き抜けてくる。

[西]西塚厩舎の頃は田辺にお願いすることが多かったのですが、生意気な言い方をすれば、当時から上手いなと思わせられていたのですよ。

[小]秋福(秋の福島開催)とかで一緒に乗った時、『コイツ、やばい』と思ったもんね。

[西]デビューして早い時期にですか?

[小]最初、田辺と五十嵐はヤバイと思った。『こいつら絶対に伸びてくるな』という感覚を持ったよ。こいつらを抑えないと、俺のポジションが危うくなってしまうと思ってね(笑)。

[西]うわぁぁぁ。そうか、彼らがデビューした頃、久晃さんは中堅になっていた感じですよね。

[小]こいつらを抑えておかなければと思ったら、食われてしまったよ(笑)。

[西]騎手の人たちは必ずと言っていいほど、「田辺は上手い」と言うんですよね。でも、あんまりいい表現じゃないですけど、田辺はとぼけていますよね?

[小]それよ、それ。競馬ではしれっとしているんだよ。でも、逃げてみたり、かと思えば、追いこんできてみたりする。良い意味で、何も考えていないんじゃないかな。

[西]そうかもしれません。

[小]乗り役って、考えれば考えるほど、ドツボにハマッていっちゃう面があるからね。

今週はここまでとさせていただきます。

さて、連日のニュースでも伝えられている福島原子力発電所の事故において、東京消防庁のハイパーレスキュー隊の方をはじめ、現場で放水にあたられた方々の活躍には、ただただ尊敬の念を抱くばかりです。

自分に置き換えた時に、果たしてできるのかと思いました。どうなんだろうと思うと同時に、もしその立場になれば、仕事と割り切っていかなければならないのだろうとも感じました。

例えが少しズレるかもしれませんが、我々も、歩様が悪い馬でもゲートを出せと言われれば、危険だと感じても出しますし、立ちあがって危険な馬にも乗ります。仕事ですから。

何が言いたいかというと、それぞれがぞれぞれの立場でできることを、精一杯やって頑張っていくことが大事ではないかということなのです。

それでも、あそこへ向かった隊員の方々の姿には感動を覚えましたし、その覚悟に感銘を受けました。自分自身も頑張っていかねばと思います。

他にもいろいろと話をしたいことがあるのですが、長くなってしまいますので、今回はこのあたりで締めさせていただきます。

ということで、最後はいつもの通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。