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小林久晃さんに現役騎手時代の『ザ・師弟関係』について話してもらいました
2011.4.7

先週、黛騎手が復帰しました。馬も揃っていたようですし、人気のない馬を着に持ってくるなど頑張っている姿を見て、ホッと胸を撫で下ろしました。

とにかく、頑張り続けていくしかない。そのことは黛騎手がいちばん分かっているはずです。

騎乗停止直後にメジロ牧場さんへ謝罪のために飛び、騎乗停止の間も小倉で毎日攻め馬をし続けていたからこそ、メジロさん、大久保洋吉先生の馬にも騎乗させていただけたのだと思います。とにかく、これからも頑張り続けるはずです。

さて、今週は小林久晃さんとの対談の最終回になります。それではどうぞ。

西塚信人調教助手(以下、西)生意気な言い方と言われるかもしれませんが、調教に乗っていると、「騎手の人たちは本当に上手い」と思わせられるんですよね。

小林久晃調教助手(以下、小)俺は、自分で自分のことを上手いと思ったことはない。「あぁ、ダメだなぁ」と思うことの方が多くて、それをいかに隠すかだよ(笑)。


[西]そうですか。

[小]だから、今度は助手となって、見せなきゃいけない立場になったわけだから、イヤだよね。

[西]何を言っているんですか。そんなことを言ったら、僕なんかどうすればいいんですか。

[小]騎手あがりの助手は上手いと思っている人もいるから、とりあえず見せないと、と思っているんだ。

[西]ひとつ聞きたいんですけど、もし久晃さんが調教師だったら、追い切りでどのように指示を出しますか?


[小]テンの1ハロンだけは15-15で入るように、と言うね。15-15ができなければ調教はできないでしょ。せめて、最低でも1ハロン15-15をしっかり乗れないとダメ、ということが言いたい。

[西]15-15がしっかりできるというのは大切ですよね。追い切りの時計というのは、5ハロンからの場合、最初の2ハロンで決まりますよね。

[小]良いこと言うねぇ。入りね、入り。

[西]3ハロンというのは馬の能力もあるし、どれだけ動くかというのはその時になってみないと分からない部分がありますよね。だから、「3ハロン38」とかという指示は難しいわけですよ。

[小]いちばん良いのは、「70の40」だろうね。「68の38」というのでも良いけど、そういう指示が良いよ。

[西]「68の38」というのは、テンは15-15ですからね。

[小]そうだよ。個人的な意見を言わせてもらうと、テンを15-15で入れない馬はステップアップできないレベルということ。だから、テンは15-15で入らなければならない。でも、そこから、つまり残りの3ハロンで控えるのか・速くするのかは、騎乗者の感覚に任せてもいいと思う。

[西]あとは、終いをやってほしいとか、やらないでほしいというのは、ありでしょうね。

[小]そう。直線に向いて反応を見て、例えば残り1ハロンで肩ムチを入れて反応を見ろという指示とかね。良い手応えで来ていても、性格を考えて、あえて伸ばしてやれというような指示もありだよ。

[西]そこで、引っ掛かって15-15ができなかった時には、プロとして怒られても仕方がないと思うんですよ。

[小]その通り。俺は一度、15-15と言われたのに、12-12で入っちゃったことがあった。

[西]それは罰金でしょう。

[小]12-12、12-12、さらに11-11という感じになっちゃったんだけど、その時の指示がふた回りだったんだ。さすがに、このままやり続けたら馬がおかしくなると思って、1周で止めたよ。

[西]怒られましたか?

[小]「1周でよく止めた」と言われた。でも、あの状態でも、怒られると思って2周行ってしまう人もいるかもしれないからね。よく、競馬では「ゲートが開いたら乗り役の責任」と言われるけど、攻め馬もそうだと思う。

[西]だからこそ、テンの15-15は大事ですよね。

[小]本当に大事だよ。

[西]厩舎に入って、いちばん最初に教わったのが、それでしたからね。

[小]良い先輩に教わっているね。

[西]そうなんですかね。

[小]でも、俺も、良い師匠に恵まれたと思う。

[西](高橋)祥泰先生は優しかったんでしょうね。

[小]何を言っているの。メチャクチャ怖かったから。

[西]えっ、マジですか!?

[小]『ザ・師弟関係』という感じで、本当に厳しかったから。

[西](田中)博康(騎手)とは違うわけですね。

[小]先生が食べた食器を洗ったり、靴を磨いたりとか…。そういう昔の話をすると、いろいろ言う人がいるけど、俺はそうあるべきだと思うし、そういう師匠の元でそういう時間を過ごせたことを俺は感謝している。

[西]そこから学ぶことがあるんでしょうね。

[小]いまの子たちは、一流になればいいんでしょ的な感覚があるように感じるんだ。恐れないのはいいことなんだろうけど、でもやはり師匠と弟子、先輩・後輩という関係があって良いと思う。

[西]いまでも、師匠という感じですか。

[小]そうだよ。つい最近まで、目の前でたばこを吸えなかったから(笑)。

[西]マジですか。

[小]この前、喫煙ルームで一服していたら目が合ってさ。一瞬ドキッとしちゃったもん。(たばこを吸っていたことを)知っていただろうけど、先生の前では絶対に吸わなかった。『スポーツ選手たるもの、たばこは吸うな。酒は日曜日の夜だけにしろ』という感じだったから。

[西]そうなんだぁ。全然、そうは見えないけどなぁ。

[小]でも、本当に感謝しています。空きがあったら、先生のところで助手になろうと思っていたんだよ。

[西]前にそう言ってましたよね。

[小]辞める時にも、相談に行ったしね。

[西]なんかいいですね。そういう話を聞くと、大事だなぁと思いますよ。

[小]一番弟子の俺に厳しく接したけど、中途半端になっちゃったから、博康には違う接し方をしたのかもしれないよね。いろいろな厩舎の馬に乗ってきたけど、それぞれに勉強になったし、財産だと思っている。ただ、ベースは高橋祥泰厩舎なんだよ。本当に感謝していますよ。

[西]良い話ですね。

[小]もうひとつ言うと、いろいろな厩舎でいろいろな馬に乗せてもらってきて、「馬はあまりいじくらない方が良い」と思っているよ。

[西]ああ、なるほど。これも名言ですね。

[小]考えるのは人間だけで、馬は考えていないからね。あとは、馬の持っている能力も含めた力という面がある。いろいろな考え方があって、それぞれの良さも分かる。ただ、馬が良くなっていく時というのは、馬の内から発するエネルギーの漲りみたいなものを感じるし、そうなると走ってくるんだよ。そこを見極められるかどうかだと思う。

[西]いい話をありがとうございます。

[小]なんか馬の話ばかりしちゃった感じだね。

[西]いや、それでいいです。というか、今回は、いままででいちばん馬の話をしたかもしれません。それだけ馬や競馬のことを考えているということで、その点は読者の方々も理解してくれると思います。本当にありがとうございました。

[小]こちらこそ、ありがとうございました。


小林久晃さんとの対談は以上になりますが、いかがだったでしょうか。

個人的によくお付き合いをさせていただいているのですが、今回こうして対談をさせていただいて、改めて感じることもありました。

すぐに3Dの映像が浮かぶ、あるいは夢が馬の上からの映像だったという話が出ましたが、やはり見るのとやるのとでは大きな違いがあるということですよね。競馬に乗ったことがない人間には、決して分からない部分があるということです。

個人的な意見を言わせていただければ、ファンの方々は『なんで、そこで突っ込んでいかないんだよ』とか『もっと早く動けよ』とか言いながら観戦していただいていいと思うんですよ。それも含めて馬券を購入していただいているはずですから。

ただ、それをプロは口にしてはいけないといいますか、言えないですよね。一緒に馬に乗っていて、本当に騎手の人は上手。

あと、もうひとつ印象に残ったのは、騎手について『だって、格好良いんだもん』という言葉でした。

危険と隣り合わせの状況であるはずなのに、それを超越できるのはそういう部分であったり、勝った時の爽快感だったりが支えていることなのでしょうね。

辞めた後でも乗りたいという気持ちになるのは、それだけ魅力的だということでしょう。『だって、格好良いだもん』と思えるって、素敵なことだなぁと思うのですよね。

また機会があったら、ぜひ対談をさせていただきたいなぁと思います。

ということで、最後はいつもの通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。