今週からは西田騎手との2度目の対談になります
2011.5.26
今週はいよいよダービーですね。
G1レースとなると、マスコミの方々など、トレセン全体に人が多いと感じるものなのですが、今週は人がいないどころか、寂しく寒々しい空気でした。これがダービーの週なのか…という感じで、まったくと言っていいほど盛り上がりを感じることができません。
実際に現場で働いていると、自分が関係を持たない馬について意外と知らなかったりすることがあり、クラシックやG1に出走させていないからそう感じるのかもしれませんが、それにしても、例年とは違う感覚があります。
クラシックに出走する馬に携わるようになれば、また違った感覚になるのでしょうか。この世界に入ってまだそのような経験がないので、ぜひそうなって緊張感を味わってみたいものです。
さて、今週からは西田雄一郎騎手との対談をお送りさせていただきます。対談には2度目の登場になりますが、前回時に続き、ブッチゃけモード全開ですので、どうぞお読みください。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、信) 今回の対談相手は、2回目の登場となる西田雄一郎騎手です。改めまして、再びのご登場、ありがとうございます。
西田雄一郎騎手(以下、雄) こちらこそ、よろしくお願いします。前回の対談は大丈夫だったのかなと、少し心配していたんですよね。
[信]いえいえ、いい感じのブッチャけっぷりを見せていただいたので、読者の方々からの評判も良かったようです。
[雄]それならいいんだけど。
[信]でも、実はさっき知ったことなんですけど、前回の対談は、もう2年近くも前になるんですよ。
[雄]そうなんだよね。最近のような気がする。
[信]読者の方々からいくつかメールが届いているのですが、まずはケガを心配する声が届いています。大丈夫ですか?
[雄]もう大丈夫ですよ。
[信]正確には、何という病名になるんですか?
[雄]診断書を読んでいないので、正確には分からないんだけど、右の肋骨を2本ほど骨折しました。
[信]肋骨2本ですか!? あれは小倉でしたよね。
[雄]そう。馬が潰れてしまう形になって、そのまま抱きかかえる形になってしまったんですよね。行儀の悪いところがあって、返し馬ができないから、馬場入りして騎乗しようということだったのですが、乗ってしばらくしたらバックし始めて、立つことなくそのまま後ろに崩れてしまいました。馬の首がちょうど肋骨周辺に被る形になったのですよね。
[信]馬場入りしてからだから、アブミを履いていますしね。
[雄]普段ならアブミは履かないところなのですが、もう放してもらおうと思っていた直前だったので、履いてしまっていた。だから、脱出できませんでした。
[信]直撃してしまったわけですね。
[雄]瞬間は、凄い痛みと鈍い音がしたんですよ。もしかしたら、内臓まで損傷してしまっているんじゃないか、という思いを持ちましたよ。救急車で小倉競馬場の「人診」に運ばれたんですが、とにかく痛くて痛くて仕方がなかったのですよ。ここでレントゲンを撮るなら、すぐに大きい病院に運んでほしい、と思ったから、「早く病院に運んでください」と言っていました。
[信]あっ、ちょっと待ってください。読者の方に説明させていただくと、人間の診療所を「人診」と呼ぶのです。すみません、続けてください。
[雄]係の人に「どこが痛いんですか?」と聞かれたんだけど、「内臓です」と言ってしまったんですよね。それで病院に運ばれたら、「骨は大丈夫です」って言われたんですよ。
[信]内臓はどうだったんですか?
[雄]「内臓は大丈夫」って言われて、痛いけど歩けるからそのまま帰ってください、ということになったんですよ。
[信]えっ!? それで普通に戻ったんですか。
[雄]そう。それで、帰りに救護所に寄って、「お騒がせしましたが、(骨は)折れていませんでした」と言ったら、ポツリと「本当に内臓を損傷していたら、『内臓が、内臓が』とは言えないよ」って言われてしまいました。
[信]あ、そういうものなんですね。でも、結局、骨折はしていたわけですよね。
[雄]痛みからは骨折はしていると思いました。「目立った骨折はありません」と言われたけど、とてもじゃないけど次の日の競馬には乗れないほどだったし、翌週の攻め馬も厳しいかなと思ったくらいだったんですよ。
[信]そこからすぐに改めて医者に行ったんですか?
[雄]違いますよ。ほんのわずかですが、日曜日よりも月曜日に痛みが引いてきたので、痛み止めを飲めば競馬は乗れると思っていました。木曜日に出馬表が出て、金曜日は攻め馬に乗らなかったのですが、土曜日の朝、日曜日に騎乗予定の馬に乗ろうとして着替えた時、物凄い痛みが走ったんですよ。
[信]乗ろうとしていたんですね。
[雄]もちろん。でも、その痛みの後は腕を挙げようとするだけで、激痛が走るし、馬に乗ろうとして足を挙げてもらって、乗ることはできたけど、馬が歩くたびに激痛が走って、角馬場で馬を停止することができなかったんですよ。これでは無理だと思って、「人診」へ行ってレントゲンを撮ったら、「西田さん、2本折れてます」って言われて分かったんですよね。
[信]というか、手が挙がらなくても乗ろうとするんですね…。骨折は、綺麗な線でしたか?(笑)
[雄]誰が見ても、折れていると分かるレベルでした。これは個人的な想像ですけど、最初はヒビが入っていたような感じだったところが、何かのタイミングで折れてしまったんじゃないかと思うのです。
[信]こんな言い方をしたら失礼ですが、まだ軽くて良かったですよね。
[雄]そうですし、競馬の時じゃなくて良かったですよ。もし、レース中に衝撃で折れてしまっていたら、コントロールができなかったわけですからね。角馬場で止まれないのに、競馬で止められるわけがありません。
今週はここまでとさせていただきます。
今週末はダービーが行われますが、その一方で、早くも2歳馬たちが続々と入厩してきています。
今回の西田さんとの話ではケガの話題に終始しましたけれど、2歳馬たちについて言えば、やはり危険が高くなるという面があります。
ある程度時間を共有すれば、行動や癖などについて把握することができますが、それぞれの馬についての情報が圧倒的に少ないため、対応しきれない可能性が高くなるのも事実です。それだけに危険性も高くなるのですよね。
もちろん、育成牧場からの申し送りもあります。でも、おとなしいと言われていた馬がトレセンに入ってきた瞬間、うるさくなってみたり、またその逆であることも珍しくありません。
性格そのものを把握するのにも、ある程度時間が必要で、どこまで叱って良いのか、ということについても、手探りで対応していかなければなりません。
そのような面があるので、2歳馬と接する時には緊張します。でも、一方では、どんな走りをしてくれるのかと楽しみがあるので、独特の感覚を覚えますよね。
皆さんも、ぜひ2歳馬たちの戦いに注目していただければと思います。
ということで、最後はいつもの通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。