西田さんに震災後の思いを話していただきました
2011.6.2
我が尾関厩舎は、月曜日に盛岡の交流レースに2頭出走していたため、土、日と合わせて10頭が出走したのですが、勝つことができませんでした。
バンダムクレスト、スウェージー、ノボジュピターなど、人気的にも勝ち負け圏内と言いますか、ブッチゃけ良い勝負ができるという馬たちが揃っていたのですが、いやぁ本当にひとつ勝つというのは難しい。
疲れ方も違うんですよね。以前の下剋上日記でも話をしたかもしれませんが、負けた時の帰りほど疲れるものはありません。今回のようにイケるという思いで向かって負けると、もう言いようのない疲れを感じるんですよ。
僕だけではないと思いますが、おそらく多くの厩舎関係者たちは週末の競馬に向けてテンションが上がるはずです。競馬に行くとなればなおさらで、土曜日に臨場したのですが、もうテンションが上がっていました。
それで負けてしまったので、帰りは言いようのない疲れを感じさせられました。車を運転していても眠気を感じますし、土曜日はもう耐えきれず府中のサウナで昼寝をしてから帰りました。
以前、この対談に出た鈴木一成(調教助手)が所属する上原厩舎が2勝していて、アイツは競馬場のスタッフ専用の風呂でシャワーを浴びて気持ち良く帰ったらしく、いやぁ、いつも以上に疲れた週末でした。
でも、めげてはいられません。何とか良い結果を出せるように、頑張ります。
さて、今週は、西田さんとの対談の2回目をお送りいたします。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、信)ケガをされたのは、大震災の後の小倉でしたよね?
西田雄一郎騎手(以下、雄)そうです。東日本大震災の時は小倉にいました。
[信]いろいろな人に聞いているとは思いますが、あの揺れは半端じゃありませんでした。
[雄]そうらしいですよね。嫁さんの実家が宮城で、あの時ちょうど帰省していたんです。
[信]えっ!? そうだったんですか。すみません、知りませんでした。
[雄]ちょうど小倉に来る予定だったんですよね。それで飼っている猫2匹を実家に預けるために、車で帰省していたんです。そこから嫁さんは小倉に来て、木曜日に宮城に帰ったばかりだったんですよ。
[信]そうだったんですか。
[雄]小倉にいた時に、一度、大きい地震があったんですよね。それで、特に意識をしたとかではないのですが、宮城に帰ったら念のために注意した方がいい、という話をしていたんですよ。そうしたら、次の日でしたから…。
[信]ご無事だったんですか。
[雄]無事でした。ただ、実家は山元トレセンがある山元町で、海に近くて、車は津波に呑み込まれてしまって完全に水没してしまい、家は2階まで浸水して全壊状態です。
[信]そうですか…。
[雄]嫁さんのお祖母さんが1階にいて、助け出されたんですけど、その後に亡くなってしまったんですよね。
[信]えっ、そうだったんですか。ご愁傷様です…。
[雄]嫁さんは、大震災が発生した直後の津波によって、一時屋根の上に避難をしていて、津波が引いた後、高台に避難していたのですが、孤立状態でしたので、次の日に自衛隊のヘリコプターで避難所に運んでもらったんですよ。
[信]……。
[雄]そこから親戚の家に避難させてもらって、2日後に実家に戻ってみると、そのまま置き去りだった猫が2匹とも生き残っていたのですよ。
[信]そうですか……。
[雄]そうしたら、(競馬が)再開された週に落馬をして、翌週に骨折が判明したので、小倉を引き上げました。とりあえずの救援物資は先に小倉から送っていたんですが、それ以外の物資などを積んで宮城に向かいました。
[信]そんな大変なことになっていたとは……すみません、まったく知らずに。
[雄]いえいえ。不謹慎な言い方かもしれないですが、骨折してしまい、(競馬に)乗れなかったために、いろいろな対応ができたという面もありますよ。でも、言葉にできないくらい凄まじい光景でした。仙台、そして山元町と、各地区がまったく別世界になってしまっていました。
[信]同じ絵を見ても、実際とテレビでは全然違うでしょうからね。でも、本当に申し訳ないんですが、そこまで大変だったとは、夢にも思いませんでした。
[雄]トレセンでは結構有名な話かもしれないよ。
[信]あっ、ひょっとして、花見に被災された方々をトレセンに招いて挨拶されたのは、そういうことも関係していたのですか?
[雄]そうですね。
[信]ファンサービス担当だからとばかりに思っていました。
[雄]サービス委員ということもあるんですけど、福島原発から避難されている方々を招かせていただいて、その席で挨拶をさせてもらったんですよね。ただ、家族の状況が状況だったということもあるけど、競馬は当分できないかもしれない、と個人的には思っていました。それが1週間中止になっただけで開催できましたからね。また、本当に有難いことに、たくさんのお客さんが競馬場に来てくださって、募金にも積極的に参加していただき、凄いと思いましたし、ただただ感謝でした。二ヵ所に分かれて募金をお願いしたのですが、本当にたくさんの方々が並んでくださって、ありがたいと思いました。競馬を求めていてくれる方々もいるんだという思いを抱きました。
[信]すべてが自粛ムードでしたからね。
[雄]そういう空気になるのは当然なのでしょう。ただ、そういうなかでも競馬をと思ってくださる方々がいることが嬉しかったですし、そういう人たちに支えられているんだと改めて痛感しました。
[信]それにしても、騎手の方々は素早く募金活動をされて、対応されていましたよね。
[雄]誰が先頭に立つでもなく、みんなから自然とそういう話が出ましたよね。正直に言えば、あの状況のなかで、競馬をやらせてもらえただけで凄いことだと思いますよ。ブッチャけてしまえば、騎手で言えば騎乗料を全額寄付してでも、競馬をやらせてもらいたいという思いはありました。まあ、そういう部分では個々の温度差はありましたが、僕自身は騎乗料が半額になるくらいは当然でしょうと思っていました。
今週はここまでとさせていただきます。
実はまだバンド活動をやらせていただいております。今回はノビーズではなく、松岡君がボーカルとギターを担当するバンドと、僕が参加しているまた別のバンドのライヴとなります。
詳細につきましては、『サラブレモバイル』のニュース欄に掲載させていただきましたので、ぜひ、ぜひ来ていただけるように、お願いいたします。
当日、僕自身は出番が少なく、みなさんと一緒に盛り上がれると思いますので、お酒を飲みましょう。
ということで、最後はいつも通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。