薬については、我々は日頃から非常に神経を遣っています
2011.9.1
ご存じの方も多いでしょうが、以前に対談に出ていただいた菅原隆一騎手が、先週日曜日に札幌で初勝利を挙げられました。
対談でも話が出ましたが、菅原騎手のお父さんは、西塚十勝厩舎の所属騎手だったということで、幼い頃からお世話になってきていますので、今回も身内のことのように嬉しく思います。
角馬場でお父さんにお会いして、お祝いを言わせていただいたのですが、本当に嬉しそうでした。
インタビューで涙を見せていましたが、長く時間がかかった分だけ、相当なプレッシャーがあったはず。でも、逆にだからこそ嬉しさも大きかったのかもしれませんよね。
1年目や2年目にそれほど良い成績を残せていなくても、そこから登っていく騎手の方々もいらっしゃいますので、菅原騎手にはこれをきっかけにぜひ頑張ってもらいたいです。
さて、今回は、薬、特に禁止薬物についてお話しさせていただきたいと思います。
JRAでは現在、すべてのレースにおいて1着から3着の馬に対して尿検査が行われます。検査が行われて薬に入っている薬品が検出されたりすると、我々は打ち間違えの可能性を思い浮かべます。というのも、筋肉痛などに対して投与される消炎剤などの中には、競馬の5日前まで使用が許されている薬品もあったりするからです。
詳しく話しますと、ステロイド系と非ステロイドという種類に分類されたりするのですが、より効果が得られると言われるステロイド系の中には、投与が許されるのが5日前までとなっている薬があり、もしそれらの成分が検出されたら、1日打ち間違えた可能性を考えたりするということです。
消炎剤の使用については賛否両論ありますが、現実としてそういう薬が投与されているということです。また、現在は「5日前まで」と規制されている薬も、1年前までは2日前まで許可されていたりするものもあります。
ごくまれにカフェインが検出されたというニュースが出ますが、正直な感想としては非常に驚きます。というのも、関係者が能力を高める目的でカフェインを投与することはまずあり得ないからです。
薬品の中にカフェインが含まれるものは存在しないそうです。また、実際にトレセンで往診している獣医さんたちが、禁止薬物に指定されている薬を持ってトレセンで診察をすることはないと言います。
昔、祖父の時代の厩務員さんたちなどからは、お茶の葉を飼い葉桶に混ぜたという話を聞いたこともありました。でも、当時から禁止薬物に指定されていましたので、検出されないように競馬の直前にはやっていなかったと言います。
ただ、これだけ科学が進歩して、カフェインを入れても馬の能力を高められる可能性はほとんど見込めないと分かっているなかで、カフェインを投与する意味はありません。
誤ってお茶やコーヒーが入ってしまう可能性についても話が出ますが、厩舎で働く人間たちは普段から気を付けています。馬房の前でコーヒーやお茶、あるいはコーラなどを飲まないようにすることは、馬を扱う人間として基本中の基本ですから。
実際、たばこを吸った手でカイバを掻き混ぜたら、ニコンチンが検出されると言われているのです。それくらい検査の精度が高いのですから、細心の注意を払わなければならないのです。お茶の葉を触った手でカイバを混ぜれば検出されるレベルということでしょう。
僕自身、厩務員をやっていた時には、万が一のことを想像したりしていました。入着すると尿検査が行われるわけですが、自分自身、お茶もコーヒーも飲みますので、きちんと手を洗ったか、あるいは近くで飲んでいなかったかなど、何度も再確認をしていました。
先ほどお話しした消炎剤以外では、鎮痛剤や気管支の薬、あとは目薬もステロイドが入っていたりするので、特に気を付けています。また、新しいサプリメントを使用しようとする時なども、真っ先に理化学研究所で、禁止薬物など成分検査に合格しているかを確認します。
それだけ神経を遣っているのが現実なのですよね。
薬(禁止薬物)については、以前からメールをいただいていましたが、さらに何か聞きたいことがあれば、ぜひ質問を送っていただけると嬉しいです。できる限りお答えしたいと思います。
さて、今週の新潟2歳ステークスには、2頭(ヴュルデバンダム、モンストール)が出走を予定しています。2頭ともとても順調にきていますので、我が尾関厩舎の重賞初制覇となるように頑張りたいと思います。
来週からは、畠山重厩舎の畠山雅之調教助手さんを迎えての対談となります。同じジュニアとして頑張っていて、しかも結果を出し続けているその秘密を聞き出したいと思います。
ということで、最後はいつもの通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。