畠山重厩舎が重賞勝ち馬を輩出する要因を伺いました
2011.9.22
先週、「楽しみ」という話をしたドリームコメットは2着に敗れ、話をしなかったフリーダムマーチが新馬戦を快勝しました。
これはどういうことか?と言われそうですが、ブッチャけさせていただきますと、両馬とも素質があると感じていましたし、期待をしているのですが、新馬戦ということで言えば、ドリームコメットの方により確実さを感じさせられていたのですよね。
尾関厩舎でお世話になるようになってから、いわゆる良血馬たちに携わる機会が圧倒的に多くなりました。そして、もう一度ブッチャけさせていただきますと、動きなどから「まだ先」という感覚を覚えた馬が走るケースが増えています。
馬は、いろいろ調教を重ねていくと、結局、最初の印象の動きに戻るタイプが目立つのですが、血統の良い馬というのは、それに当てはまらないことが多いように感じます。極端な言い方をすれば、第一印象の良い・悪いが関係ないということなのですよ。
祖父の代から「馬は血統じゃない」と言われて育ってきましたが、いやぁ、血統かもしれないと思うようになりました。
例えば、トビが大きくて綺麗な馬がいたとします。その印象からは短い距離よりも長い距離の方が良さそうに思われるのですが、血統が短距離向きだったりすると、短距離に適性を示すことが大いにあり得るという感覚なのですよ。
実際、乗って感じたフットワークや身のこなしから受ける印象と、競馬の結果が一致しないということが往々にしてあるのです。前の厩舎の時の方がそういう面では一致していましたが、最近は、血という部分が持つ不思議さを感じさせられることが多くあります。
フリーダムマーチはさらに上を目指して、そしてドリームコメットは次走に改めて、それぞれに期待したいと思います。
さて、今週は畠山雅之さんとの対談の2回目になります。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)(畠山)雅之さんは、初めから畠山重則厩舎所属でしたか?
畠山雅之調教助手(以下、畠)いえ、大久保勝之厩舎にお世話になりました。
[西]そこから畠山厩舎となったのですか。
[畠]そうですね。
[西]アイルトンシンボリがいた頃ですか?
[畠]いえ、アイルトンが現役当時は大学生でした。マイヨジョンヌが引退する間際に入った感じですね。マイヨジョンヌが重賞レースを勝った時にはまだいませんでした。
[西]実はこの機会にぜひ伺いたいことがありまして、畠山厩舎も我が西塚厩舎同様に低迷していた時期がありましたよね。
[畠]いえ、いまも低迷してしまっていますよ。
[西]いや、このまま行けば終わってしまうんじゃないかというくらいの時期があった印象があるのですよ。
[畠]ありましたよ。
[西]マイヨジョンヌが引退した後あたりが、そんな時期ではありませんでしたか?
[畠]マイヨジョンヌの晩年には、なりかけていましたね。
[西]預託頭数も少なくて大変という時期もありましたか? 西塚厩舎はありましたが…。
[畠]同じですよ。ブッチゃけてしまいますけど、在厩日数が足りずに抹消できないので、規定に足りるまで預託してほしい、ということで、お預かりしたこともありました。
[西]やはり、そうなんだ。そんな状況を救ってくれたのがマイネルさんですか?
[畠]本当に助けていただきました。
[西]マイネルさんとは、最初にお預かりした馬が走ったのですか。
[畠]マイネディーバという馬でした。稲葉先生のところで新馬を勝っていたのですが、さすがは新馬を勝つくらいの馬でしたので、良い馬でした。500万円下を勝って、1000万円下でも着に入ったりしていました。
[西]そこから関西馬とかも転厩してくるようになったのですか。
[畠]そうですね。でも、タイミングも良かったです。関西で7~8着に来ているような馬たちが多かったのです。何か(原因が)あれば、それを治すなり、休ませることで解消すると、走りますから。
[西]上手くすれば勝ちますからね。でも、歩様に関しては、雅之さんはかなりストライクゾーンが広いと聞きましたよ(笑)。
[畠]そうかなぁ。正直、転厩してきた馬で、例えば『肩の出が気になる』と言われていた馬が、乗ったら何でもないということはあった。調教を積んでいくなかで、追い切りをしたりして、危険だけど維持できるのであれば大丈夫だと思う。
[西]ダグではハ行しているのに、速いところへ行ったら何でもない馬っていますよね。
[畠]それより、歩様が良い時には走らず、違和感を覚えるくらいの時の方が走る馬がいますからね。
[西]昔の厩務員さんには、『馬はゴツゴツしていたくらいの方が走る』とか言う人もいるくらいですからね。話は戻りますけど、畠山厩舎は馬を集めながら頑張って復活して、ヤマタケゴールデンとかが出てくるわけですよね。ちょうど西塚厩舎ではシルクヒーローが出てきたりして、自分自身、オーバーラップする部分があるのですよ。あと、アルコセニョーラとエフテーストライクも同じ時期だったと記憶しています。
[畠]そうだね。
[西]アルコセニョーラとエフテーストライクは走る距離が違っていったので、対戦する機会はなくなりましたけどね。ただ、大きな違いは、畠山厩舎は重賞を勝つということですよ。
[畠]そんなことはないよ。
[西]こういう言い方をしたら失礼ですが、勝ち星から言えば、その重賞勝ち数はやはり凄いですよ。ヤマタケゴールデンなどは走ると思っていたんじゃないですか? 個人的には、姿、形が良かったので、走ると思っていました。
[畠]素質は感じさせられました。ただ、お腹が出てコロンと見せるタイプで、決して綺麗な姿をしている印象ではありませんでしたし、2歳から3歳にかけてはまだ良化途上という感じでした。でも、速いところへ行くと、良さを感じさせられたのですよね。
[西]鉄平ちゃん(池田鉄平元騎手)が被っていたのですよね。読者の方に説明しますと、調教や競馬で騎乗を依頼する騎手が被る厩舎とは、仲良くなることが多いのです。
[畠]どうしても『明日は何時ですか?』とか、『あの馬、今度はいつ使うの?』というような会話を交わす機会が増えますからね。
[西]田辺だと浅野厩舎の助手さん、(横山)義行さんなら松山厩舎の助手さんと仲良くなる感じで、あの頃、鉄平ちゃんは西塚厩舎と畠山重厩舎だったのですよね。またお互い、それぞれの騎手に思い入れがあるので、(他厩舎の馬でも)競馬を見るようになるわけですよ。
[畠]でも、最近は乗り役さんに思い入れを持つのはやめようという気持ちになります。
[西]なるほど。
[畠]いまの時代、どうにもしてあげられなかったりする現実があるから。
[西]オーナーサイドのリクエストもありますからね。
[畠]実際に、一生懸命頑張っているからといって、乗ってもらうことができなくなってきていますから。鉄平が『辞める』と言ってきた時に、『辞めるな』とは言えなかった。
[西]それって、現実ですよね。
[畠]もちろん辞めてほしくはないのですよ。結果的には、重賞を勝てずに終わってしまいましたからね。いまの時代、そうやって応援したり、一緒に頑張ろうというようなことがなかなかできなくなってしまっていますので、『辞めるな』とは言えませんでした。
[西]古き良き時代と言ったら違うかもしれませんが、厩舎と騎手の結び付きというのがあったのは、鉄平ちゃんたちが最後かもしれませんよね。
[畠]もちろん、チャンスを掴めるかどうかというのも大切だと思いますよ。
[西]確かに、最近ブレイク中の田辺は、松田博厩舎の馬でキッチリと掴んだから、いまがあるわけですからね。
[畠]本当に紙一重ですよ。でも、そこで勝つことができたから、次以降に繋がっていったのです。
[西]大庭も、一度、安藤さんからの乗り替わりで、ジャミールに騎乗するチャンスがありました。2着という結果だったのですが、もしあそこで勝っていたら、人生変わっていたかもしれません。そういうものなのでしょうが、大きな分岐点ですよね。騎手って、そういうものなのかもしれませんよね。
[畠]本当に紙一重だなぁと痛感させられますよ。
今週はここまでとさせていただきます。
先週骨折から復帰した松岡騎手が、騎乗を取りやめました。痛みがあったということなのですが、今週は調教にも参加していて、競馬にも騎乗できるようです。まずはひと安心です。
今週はミヤビヘレネという馬が出走します(日曜日中山12R)。この馬に対しては、冒頭でお話をした第一印象が最高に良かった1頭なのですよ。
僕の少ない騎乗経験ではありますが、凄く魅力を感じさせられる存在なのです。入厩した日に3~4勝は確実にできるという手応えを感じさせられたことを覚えています。
今回は骨折、休養明けの初戦ということになりますが、どのような競馬をしてくれるのか楽しみです。
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