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田辺騎手に重賞初制覇やローカルでの話を聞きました
2012.1.19

この開催は、何となく感覚がおかしくなっています。金杯をやって、2日開いて日曜、月曜と競馬が行われたこともあり、慣れない部分が様々なところに出てしまっているのです。

今回のスケジュールについて、疑問を感じたことがふたつありました。「難しい」と言われる調教については、個人的にはそこまでの影響は感じません。

それより、3日間の開催ながら間に2日の空白期間があって、それぞれが単独の開催になっていて、さらには第3場が小倉開催であり、除外馬が多くなってしまったことです。

もし3日間開催にしてくれれば、3日分一斉に投票となりますので、最初から小倉に行こうということにもなりますし、馬が停滞する可能性は少なくなるのです。小倉だと、やはり、追い切りをかけて除外になったから小倉とは、なかなかいかないのが現実です。他の馬たちとのローテーションの兼ね合いもあるのです。

同じ3日間でも、3日間連続開催にしてもらいたかった、という思いがあります。

それと、これは気を付ければ良いことではあるのですが、開催日について、土曜日は奇数、日曜日は偶数という感覚があるのです。

例えば4週目となる今週なら、土曜日が中山7日目、日曜日が中山8日目というのが通例です。ところが、今週は、土曜日が6日目で、日曜日が7日目と、ズレているのですよね。

これは、投票用紙に記入する時に気を付つけなければなりません。慣れというのは恐ろしいもので、そんなところにもいろいろと気を遣わされるのです。

さて、今週は田辺騎手との対談の2回目をお送りします。それではどうぞ。

西塚信人調教助手(以下、西)去年は重賞初制覇(アンタレスS、ゴルトブリッツ)もしたよね。見ていてスッと上がっていく姿は格好良かったよ。田辺じゃないみたいだった(笑)。

田辺裕信騎手(以下、田)あの時、風邪をひいてて、熱が出ていたんだよ。でも、これは乗っておくべきだろうと思って、朝、救護室に行って薬をもらって乗ったんですよ。

[西]熱はどのくらいあったの?

[田]計ったらテンションが下がると思ったから、計りませんでした。

[西]なるほど。あと、エイシンアポロンで富士Sを勝ったよね。

[田]乗せてもらえて、ラッキーでした。

[西]そして、アンラッキーで騎乗停止。あれは落ち込んだ?

[田]良い流れで騎乗停止になって……仕方ないって思いましたよ。

[西]それにしても数も乗っているよね。西塚厩舎の頃、うちが4頭とか頼むと、合計で8頭とかになってしまって「多いっす」とか言ってた頃が懐かしいよ。

[田]マジで走らない馬に乗ると疲れるんですから。西塚厩舎の4頭は、他の厩舎の15頭分に匹敵する。


[西]うははは(笑)。

[田]しかも、走らないのに、元気が良くてうるさいんだから。本当に疲れた。

[西]そうだったよね。去年は騎乗停止はあの1回だけだっけ?

[田]そうです。2年ぶりでした。

[西]忘れもしない札幌のキーンランドCでのモルトグランデ以来でしょう。

[田]あれ、それでしたか。

[西]たぶんそうだよ。あれがなかったら、フェアプレー賞だったんだ。


[田]いや、全然、無理。あれは過怠点数が10点とか、そういうレベル。10点なんて無理、無理。再教育ですよ。

[西]うははは(笑)、再教育だったんだ。そういえば、再教育ってどんなことやらされるの?

[田]競馬法規を勉強するんですよ。

[西]座禅を組まされたという話も聞いたことがあるけど。

[田]それは何年とか、何回も連続という人だと思いますよ。

[西]座禅は辛いらしいね。

[田]それ以外に、競馬学校で生徒と同じような仕事をする課題が出されることもあるようです。

[西]騎手は大変だね。そういえば、数を勝つようになって、小西先生との関係が変わったということも特にないんでしょう?

[田]ない、ない。あっ、でも、先生がよく喋るようになった。

[西]あっ、そう。

[田]ひょっとすると、慶太(鈴木騎手)が所属になったからかもしれません。アイツ、先生と仲良しなんだよね。

[西]うははは(笑)。それ、面白い。慶太は同期だよね?

[田]そうです。

[西]ひとつ上が簑島たちで、ひとつ下が松岡たちで。ちょうど志願者が多かった頃だ。

[田]競馬がいちばん盛り上がっていた時期でしょう。

[西]ナリタブライアンの頃?

[田]いや、タイキシャトルやシーキングザパールという頃でした。

[西]タイキシャトルとか知ってたの?

[田]そのあたりの馬は知ってましたよ。父親に連れられて競馬場に行っていたんですよ。

[西]そりゃ、そうだろうけど、タイキシャトルが福島競馬場を走っていたわけじゃないじゃん。

[田]そうだけど、タイキシャトル、タイキシャトルって、ポスターとかも貼ってあるわけですよ。福島競馬場には、中舘さんがいましたよ。

[西]そういえば、前回の対談で「あの人(中舘騎手)を倒さないと」と言っていたんだけど、倒したと言えるよね。

[田]そんなこと言った? よくわかんないけど、去年はそうなったと言えるのかな。

[西]田辺から見て、中舘さんの強さって、どこにあるの?

[田]渋太いかな。……う~ん、よくわからないけど、欲の塊ということかな。

[西]そうなんだ。でも、聞いてみたかったんだけど、中舘さんが逃げるというのはわかっているのに、なんで潰れないの?

[田]行っても引かない。結果的に、潰されちゃう。向こうは潰れてもいいからと覚悟して行っているんですよ。でも、そういう覚悟が大事。捨て身で競り掛けてくる。自分のも潰れるけど、相手も潰すということだから、みんな競り合いになって潰れるのが嫌だから、行かなくなるんですよ

[西]リスクを背負って、やり続けているわけだ。

[田]そういうこと。ハナに行って、後ろから来る馬に「まだ速い」と言う人もいるけど、中舘さんはそういうのはない。あくまで、ハナにこだわって勝負していますよ。

[西]あと、3コーナーとかで手応えが怪しく見える時がある。でも、結局、逃げ切ってしまうことがあるよね。あれは作戦なの?

[田]どうなんだろうね。ただ、確かに手応えが怪しくなっているように見えていて、「ないのか、ないのか」と思っていると、最後までもってしまう。逆に、手応えは怪しいんだけど、「本当はあるはずだ」と思って付いていくと、本当にない時がある。あっという間に垂れいってしまって、「何だよ、本当にねぇのかよ」ということがあります。

[西]うははは(笑)。でも、中央場所だと馬も違うのだろうけど、周囲も潰しに行くし、潰れるんだよね。

[田]中央場所の時には、行く馬に乗っているのに対して、3場(ローカル)だと勝つ馬に乗っていますよね。

[西]関西馬も多いよね。田辺も関西馬に乗る機会が多くなったよね?

[田]増えたかな。でも、関西馬は楽です。

[西]走るからね。

[田]いえ、勝負服を厩舎に取りに行かなくて済むから。

[西]まだ勝負服取りに回っているの!?

[田]行ってますよ。

[西]もういいだろう。デビューしたばかりのアンチャンじゃないんだから。

[田]この前、木曜日が忙しくて行けなかった時、金曜日に「勝負服あるぞ」って電話をもらいました(笑)。

[西]厩舎としては楽だけど、本当は厩舎の仕事なんだから。厩舎が責任を持って自分たちで競馬場に持っていけば、勝負服を忘れてしまうということもなくなるわけですよ。田辺には「取りに来なくていいから」と言っているよね。

[田]自分の分は仕方がないとは思いますよ。他の人の分とかまで預かると、結構な荷物になるんですよ。しかも、いくつかの厩舎から頼まれたりすると、本当に大変。車じゃなかったら、泣いちゃう。

[西]あと装鞍ね。田辺は(鞍を)自分で置きたいという方ですか?

[田]いや。

[西]結構、直す派?

[田]直さない派。

[西]うははは(笑)

[田]ギュっと締め直すことはしますけど、それだけです。

[西]こだわりがある人はいますよね。でも、そういう人たちのなかにも、自分で装鞍所に行かない人がいるんですよ。

[田]いる、いる(笑)。

[西]前に置くのが好きなんだと思って、前に置くと「前過ぎる」と言われちゃうんですよ、これが(笑)。

[田]加減が難しいのかもね。

[西]外部の人たちになかなか見えない部分で言えば、騎手から我々厩舎に送られるジュースですよ。あれはもうやっていないでしょうね?

[田]勝った時だけにしているかな。

[西]乗った厩舎すべてにジュースを送るような風習があるけど、あれはやめるべきでしょう。「ジュースを出すから乗せる」、「出さないから乗せない」というのはやめるべきだと思う。

[田]稼いでいない人ほど、出さなきゃならない、という流れにもなってしまうしね。

[西]そうなんだよ。騎乗手当がいま2万3000円でしょう。その3000円がなくなるわけですよ。騎手の人たちに何でも押しつけるのは良くないよ。

[田]そういえば、お陰さまで、競馬開催日の朝の調教は出なくなりました。

[西]あっ、そう。あれもキツイよ。1~2鞍のため、美浦から競馬場までタクシーも出さなければならないわけだから。確かに、騎手の人たちがいてくれると、(調教が)短く終わるので、助かりますよ。でも、馬場は開いているんだから、時間をかければ良いだけの話なんだよね。

[田]土曜日の朝、調教に跨って、そこから競馬場にいって、競馬に乗る。そして終わったらまた美浦に戻って、日曜日の朝に調教に跨って、また競馬場へ行って、競馬に乗る。そういうことをやっている人たちがいることは、あまり知られていないですよね。

[西]そうだよ。言うのは簡単だけど、大変だと思うよ。

[田]何が大変って、汗取りをして絞らなければならなかったりするから、時間がない。

[西]いつ頃から、自厩舎の攻め馬に乗らなくて良いということになったの?

[田]頭数を乗るようになってからですね。でも、常に「乗りたくない」とは言っていました。

[西]うははは(笑)。

[田]「ここ乗ってくれれば、前半1番と2番で終わるのになぁ。乗っていけよ」とか言われるけど、「無理」って言います。

[西]確かに、乗ってもらうと助かるんだけど、そのひと鞍のために、騎手の人たちに時間を犠牲にさせるわけだから。

[田]あー、ダメだ。競馬の話は硬い。競馬とは関係ない話をしましょうよ(笑)。

今週はここまでにしますが、対談の内容はいかがでしょうか? みなさんに誤解しないでほしいのですが、数を勝ってこのような人間性になったのではなく、田辺は僕に対しては以前からこういう態度だったのですよね(笑)。個人的には、むしろ謙虚になったと思うくらいです。

経験することで、それまで見えていなかったことが見えるようになったりもしているのでしょう。話をしていて、成長しているなぁと思う部分がすごくありました。良い方向に向かっているのだと思います。

素の田辺を引き出そうと思ったわけではありませんが、勝手に出ていますよね(笑)。他のインタビュー記事を読むと、僕自身が知る田辺とのギャップが大きく感じていました。でも、いろいろなイベントに参加させていただいていて、その人の本当の人間性を知ってもらえればという思いを抱いていて、そういう場がもっとあっても良いとも思っていたのです。

そういう意味では今回の対談は悪くないと思いますし、来週以降も、素の田辺を感じていただけるはずですので、どうぞお楽しみに。

ということで、最後はいつも通り「あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞよろしくお願いいたします」。