今週から谷中公一調教助手をお迎えしての対談です!
2012.2.16
先週は、サクラゴスペルが雲雀ステークスを勝ちました。
実は、我が尾関厩舎にとって、準オープンと言われる1600万円下を勝つのは初めてのことでした。しかも、サクラゴスペルは新馬からお預かりして、そこから勝ち上がってきた、いわゆる“生え抜き”なんですよね。
入厩当初、ゲート練習などでは僕が騎乗していたのですが、馬場の行き帰りには厩務員さんが付き添っていないとどこかへ飛んで行ってしまいそうになっていたり、激しい気性の持ち主として知られていました。
入厩して数日でその兆しを見せて、ゲートでも危険な雰囲気を醸し出していたのですが、聞くところによると、その母・サクラブルースも同じような性格の持ち主だったようです。担当をしていた厩舎の方々から、「元気が良いだろう?」と声をかけられたことがありました。
そういうことを思い出すと、いまは本当に大人になったなぁと実感できます。そんなゴスペルが準OPまで勝ち上がってくることができて、また違った嬉しさがありますね。
でも、実は、肉体面ではまだ緩さを感じさせられるんですよね。逆に言えば、それでいながらこれだけのレースをして準OPを勝てるのですから、本当に先々が楽しみです。
さて、今週からは阿部厩舎所属の谷中公一調教助手をお迎えして、対談を行います。いろいろな話をしていただきましたので、ぜひ楽しんでいただければと思います。それでは、どうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)今回は谷中公一調教助手をお迎えしての対談となります。よろしくお願いします。
谷中公一調教助手(以下、谷)こちらこそ、よろしくお願いいたします。俺で大丈夫なの?(笑)
[西]何をおっしゃいますか。年末にイベントもやらせていただきまして、ありがとうございました。
[谷]いや、こちらこそありがとうございました。普段、調教で会ったりもして中途半端に気が合うから。これが困るんだよね(笑)。
[西]うははは。もし僕が騎手で、谷中さんと一緒に競馬で騎乗したら、絶対に同じコース取りをしますよ。
[谷]そうだろうね。その姿がイメージできてしまう。でも、ひょっとすると中舘英二タイプかもしれない。
[西]どういうことですか?
[谷]4コーナーを向いた時に、手が動いていて、手応えないように見せておいて、実は残ってます、という感じですよ。ズルイ感じですかな(笑)。
[西]そうですかね。どちらかという大庭タイプかと思っているんですけど。セコく、セコく、という感じじゃないですか? まあ、それはいいとして、谷中さんと言えば、現役騎手時代に出した『崖っぷちジョッキー』が有名ですけど、あれを出したのはいつ頃でしたか?
[谷]辞める前年でしたね。
[西]これだけは吐き出して辞めよう、という思いだったのですか?
[谷](騎手を)辞める気なんかサラサラなかったのですよね。それが書いた後に、体調を崩してしまったり、腰が痛くなってしまったりということが重なったのです。
[西]本にも「腰が…」とは書いてありました。
[谷]「人生の最後に勝ったと思えれば良い」と書きながら、もっと騎手を続けるつもりでいた、というのが本当のところ。でも、最後の年は8ヶ月でしたが、本当に乗れませんでした。
[西]腰が痛くてですか?
[谷]そうではなくて、本当の崖っぷちでした。確か、8ヶ月で1~2鞍しか騎乗できていません。肉体的にも、生活も苦しいですし、潮時かなと思わせられましたね。
[西]そうだったんですね。書くきっかけみたいなものはあったのですか?
[谷]某競馬雑誌にコラムを書き始めたのですよ。そのコラムの連載が意外にも長期に及ぶこととなり、書くことが楽しくなっていた時に編集の方から本を書いてみないか?というお話をいただいたのです。そこで、トップジョッキーたちもいれば、苦しんでいる騎手もいるということを、ありのままに伝えることがテーマとなったのです。
[西]それで大ヒットとなったわけですね。
[谷]競馬の本という括りの中では、お陰さまでたくさんのご購買をいただきました。
[西]僕も購入しましたし、競馬学校にも置いてありましたよ。競馬の世界を目指す人間にとっても、ひとつのバイブル的な存在ですよ。
[谷]こうなってはいけないってね。教官もそうやって言うらしいよ(笑)。
[西]うははは。谷中さんの現役時代を知らない新人とかにも「読みましたよ」とか言われるのですか?
[谷]そう、言ってくれる。本当に嬉しいことだし、こうなってはダメだよって言うよ。でも、ありのままを書いたから、そういう意味では本当に参考にはなるはず。
[西]そのあたりから騎手という立場でメディアとの関わりも頻繁になっていったのですか?
[谷]ひとつのきっかけにはなったと思います。
[西]『日刊スポーツ』でもコラムを書かれていましたよね。あれも好きで読ませていただいていました。
[谷]あれは、正直、新聞ということで、難しかった部分もありました。
[西]そういうものですか?
[谷]提言という意識で書いていたのですが、JRAからすると批判と感じられてしまうらしく、実は何度もやり取りがあった。
[西]あっ、そうですか。ツイッターやブログとは違った感覚なのですかね?
[谷]書いて紙として残るということもあるのでしょう。
[西]例えばどういうことですか? 今年は有馬記念が開催最終日ではないですけれど、やはり最後にするべきということを書くと、注意されてしまうんですか?
[谷]それはかわいい方でしょう。例えば、投票システムについてとかですよ。内部に関する話が多かった。外に発信する(書く)必要はないんじゃないかということです。でも、そうじゃないでしょ、って。
[西]なるほど。
[谷]そういう意識が閉鎖的な印象を与えて、ファン離れを助長してしまうんだという話をしてきました。もちろん、間違っていないから、訂正も、謝罪もしなかったですけど。
[西]いやぁ、そうですよね。
[谷]嫌われるかもしれないし、反感も買うかもしれないけど、言う人がいないといけないと思うんですよね。『日刊スポーツ』さんも戦々恐々だったんじゃないかと思いますけど、しっかりと対応していただきました。
[西]反響もあったんじゃないですか?
[谷]ありましたよ。調教師の方々からも『何かあった時には応援する』という言葉もかけていただきましたし、励ましていただきました。
[西]ただ、ブッチャけさせていただきますけど、コラムを読んでいて、正直、センセーショナルな話題と感じることはありませんでしたよ。普段、こうしてトレセンの人たちと話をしている話題程度でしたよね。
[谷]それを、表に向かって発信されることに抵抗感があるようです。だから、なんでそんなことを隠したがるのかわからないということが多かったんですよね。
[西]個人的には、本当に普通というか、当たり前の話をしているコーナーという印象でした。もっと言えば、普通の人が普通に感じている話なわけですよね
[谷]でも、それが表に知られたくないわけですよ。
[西]いやあ、それについては、もの凄く違和感を感じますね。
今週はここまでとさせていただきます。
読んでいただければお分かりだと思いますが、厩舎の人間とメディアの付き合いというか、現状についてが話題の中心となっています。個人的には、厩舎とマスコミについて話ができるのは、この人しかないと思ってお願いしたのですよね。
来週以降もお楽しみいただければと思います。
ということで、最後はいつも通り、「あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞ、よろしくお願いいたします」。