谷中さんに騎手の現状について聞いてみました
2012.2.23
日曜日の京都最終レースに出走したミヤビヘレネが、競走中止ということになってしまいました。
騎乗していた中舘さんは骨折をしてしまったということで、本当に心配しています。1日も早い回復と、復帰を待ち望んでやみません。
馬の方は、レース中に心不全を発症してしまったということで、そのまま息を引き取りました。元々、体質が弱いほうだったのですが、ここまで3着以下がないように能力は相当という存在だったのです。
入厩初日から跨っていたのですが、僕の少ない経験のなかとはいえ「一番良い」と感じさせられたことが記憶に残っています。モンストールやプボワールベールも良いと感じさせられましたが、その2頭に負けない良い感触がありました。
乗って良い馬と走る馬というのは、必ずしもイコールではないのですが、ミヤビヘレネは結果も出してくれた存在でした。とにかく残念です。
オープンや準オープンで勝ち負けする馬というものも、それほど多くありませんが、そのなかでもトップクラスの素質を持っている馬となると、世代に1頭いるかいないか、いやそれ以上に出会える確率は低いかもしれません。人間もそうですが、馬との出会いも、本当に尊いことであると痛感させられます。
さて、今週は谷中さんとの対談の2回目です。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)谷中さんにお聞きしたかったのは、騎手の現状についてなんですよね。かなり減ってきてしまっていますよね?
谷中公一調教助手(以下、谷)そうですね。厳しい状況ですけれど、一時期よりはチャンスが出てきているとも思ってます。エージェントの存在や、オーナーに理解してもらえば乗せてもらえる風潮になったことで、結びつきが強くなってきていると思ってます。
[西]確かに言われてみれば、そうですね。
[谷]俺が晩年の頃は、よしみで乗せてくれることもあったけど、乗れる人は乗れて、俺みたいにあぶれてしまった騎手にはまったくチャンスがないという状況でしたから。でも、そうして騎手の数が減ったら、今度は突出した若手の台頭があったり、復活を遂げる騎手が出てきた。減ったことでチャンスも生まれたのだと思います。
[西]ただ、規則的な面では、まだ不備な部分が多いようにも思えるのですが…。
[谷]でもそれは全体に言えることでしょう。調教師さんに比べれば騎手はまだいいと思いますよ。騎手も確かに大変ですけど、頑張ればチャンスがある時代ではあります。
[西]競馬学校では、騎手課程で入学金や授業料が発生していますよね。
[谷]それについては、個人的には良いと思っています。お金がかかるということで、それだけ強い意志、目的意識を持って入学してくる生徒が多くなるはずですから。
[西]親もお金を出していますから、「しっかりしなさい」ということにもなるんでしょうね。
[谷]俺たちの頃は無料で、運動神経で判断されていました。それで崖っぷちですからね(笑)。それが最近は、毎年のように新人から見どころのある騎手が出てきています。この流れは、個人的には良いと思っています。
[西]昔の馬事公苑時代の短期とか、無理なんですかね?
[谷]絶対に育たないと思う。競馬学校から来た、礼儀正しさと前向きさは素晴らしいですよ。騎手になるための心構えが全然違います(笑)。
[西]そうですか。
[谷]特に短期とかは、20歳以上の人たちも多くて、酒を飲んでいた人たちもたくさんいたんですよ。これから騎手を目指すのに、もうベテランという感じでした。
[西]そういう時代があったんですね。
[谷]いまの生徒たちの心構えというか、意識は素晴らしいですよ。
[西]話はちょっと変わりますが、騎手に限らず、ブログやツイッターをしている関係者って多いですよね。でも、それを閉鎖せざるを得なくなることも目立っていて……そのことについてはどう思われますか?
[谷]批判だけでなく、誹謗中傷があったりして、それに反応して収拾がつかなくなってしまうケースがあるみたいですね。でも、個人的には、そういうことを気にするなら、最初からやるべきではないと思っています。やる以上は自分に批判的、あるいは誹謗中傷ということも予め覚悟しておくべきだと思います。
[西]なるほど。
[谷]もちろん、誹謗中傷は絶対に良くないですよ。それがきっかけでブログやツイッターを閉鎖することもあるわけで、楽しみにしているたくさんのファンが悲しむことになってしまうのですから。
[西]確かに読むのに堪えない誹謗中傷もありますよね。
[谷]でも、そういう現実がある以上、それはそれとして、やっていくしかないとも思っています。関係者である以上、何かあれば取り上げられるし、注目される存在なのですから、その意識も強く持っておくべきでしょう。本当は、競馬学校でメディアに対する対応なども教えるべきだと思いますけどね。
[西]プロ野球などでは、マスコミへの対応についても講義があるようですからね。
[谷]個人個人で自覚を持たなければならないのですが、新人に対しては講習も行ってあげるべきでしょうね。
[西]実は、僕は、ある日を境に、日常のことなどについて積極的にツイッターで更新しないようになったんですよね。
[谷]あっ、そうだったんだ。何か、きっかけがあったの?
[西]ウチの厩舎で、立ち上がったりする馬というのは、僕が乗ることが多いのです。ある時、『今日もどこか行っちゃうのか。うるさい馬に乗るのは嫌だなぁ』と呟いたんですよ。そうしたら、他の厩舎の人がうちの先輩に「そんなうるさい馬がいるのか」と言ったらしく、呟やくんじゃないと言われたんですよね。
[谷]そんなことがあったんだ。
[西]サークル内の人間からすればそうかもしれません。ただ、調教助手の人間たちは、飛んでいってしまったり、立ち上がったりする馬にも乗るし、決してすべての馬に対して楽しいと思って乗っているわけじゃないんだということが一般の方々にも伝わってくれればという思いがあったのですけどね。
[谷]なるほどね。ただ、ひと言だけ言わせてもらうと、仕事とかに対して否定的な言葉を使ったりすると、突っ込んでこられることが多いかもしれないよね。言葉の使い方だよね。
[西]そう思います。このコーナーにも読者の方々からメッセージを送ってもらっていて、それをすべて転送してもらって見させていただいているんですけど、僕自身はそれがもの凄く楽しみだったりするんですよね。
[谷]それを自分自身のなかで、消化できれば良いんですよ。関係者は少なからず注目されているわけで、ブログやツイッターは知識を得てから始めるべきだと思うし、やっている途中でも書き方に注意してやっていくようにすることだと思います。
今週はここまでとさせていただきます。
先週から松岡が復帰しました。水曜日にスタジオでバンドの練習を行ったのですが、久々に馬に乗ると筋肉を使っていないことがわかると笑っていました。もちろん競馬はベストコンディションで向かったのでしょうが、1~2日は筋肉痛があったみたいです(笑)。
騎手と助手では多少違いますが、最低でも4~5時間の間にわたって馬に乗っているわけで、特殊といえば特殊ですよね。馬に乗る時に使う筋肉は、日常の生活であまり使うことがない部分だったりするんですよ。
何はともあれ、無事に松岡が復帰して良かったです。これから調子を上げていくと思いますし、頑張ってくれることでしょう。バンドもそうですが、近いうちにこの対談にもゲストとして登場してもらおうと思っていますので、どうぞお楽しみに。
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