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「馬を信じる」、その気持ちを持って本番に向かいたいと思います
2012.4.12

先週、中山で行われた障害OPレースで、メジロアマギが落馬、競走を中止しました。このアクシデントで靖典(蓑島騎手)が骨折をしてしまったのです。

レース後、「すみませんでした」と電話があったのですが、こちらこそ「すみません」という気持ちになります。今週にはバシケーンとのコンビで中山グランドジャンプという舞台が待っていましたので、なおさら申し訳ない気持ちになりました。

メジロアマギは落馬した馬を避けきれず、落馬してしまったということで、仕方がないことなのですが、無事が確認できるまで、本当に生きた心地がしませんでした。

靖典は骨折をしてしまいましたが、先に落馬した(横山)義行さんは無事で、2人とも命には別状がなかったのでホッとしました。靖典の1日も早い回復を祈りたいと思います。

さて、今週は、添田場長との対談が最終回を迎えます。それでは、どうぞ。

西塚信人調教助手(以下、西)この対談のテーマとして、みなさんに「5年後の競馬」ということをお聞きしているのですが、場長はどのように感じていらっしゃいますか。先が見えづらいと思うのですが…。

添田昌一氏(以下、添)まったく見えませんよね。

[西]もの凄い危機感を感じています。

[添]危機感はとてもあります。ただ、競馬が潰れてしまうとまでは思わないのですよね。競争というステージにいることは重々承知していますし、そのなかで生きていくのが生き甲斐と思ってきました。侍と一緒で、技術が悪くて落ちていくのならば、それは仕方がないと思っています。

[西]でも、競馬は潰れないと思うわけですね。

[添]それはね、第二次世界大戦で競馬をやらなくなった時に、生き残った人が僕の師匠だったのです。黒瀬さんという方で、戦前に騎手だったのですが、トレセンに入った時に「おい、教えてやれや」と先輩たちに声をかけてくださったのです。その人が「競馬はなくなっても、馬は生き残ったんだ」と言っていたんですよ。形は変わってしまうかもしれません。それこそ、東京競馬場だけになってしまうかもしれませんが、競馬はなくならないと思っています。馬というのは、それくらい魅力のある、価値のある動物ですよ。そして、何より一緒にいて楽しいのです。

[西]楽しいという言葉は、重みがあります。

[添]触れていたら、ホッとするし、パートナーなんですよ。でも、ペットとは違うんです。ペットは癒してくれるけど、高めてくれない。でも、馬は高めてくれるんですよ。


[西]確かにそうかもしれません。僕自身の人間形成においても影響を受けています。馬に教えてもらうことって、本当にいろいろありますからね。それこそ、僕が場長と出会って、お世話になったのも馬がいればこそですから。

[添]西塚君がトレセンに入ってからも、サーストン牧場に放牧に出してくれていたことは覚えていますよ。こちらこそお世話になってます。

[西]なにをおっしゃるんですか。でも、競馬が復活する道ってありますか?


[添]ありますよ。俺は馬というものを信じていますし、馬にはもの凄い力があるんですよ。人を引き付けて、離さない魅力があります。のめり込んでいってしまう感覚もそうですよ。俺にとってはタイキフォーチュンという馬もそうでした。新馬を勝って、そしてG1を勝ったのですが、僕は接していて性格なども知っていたから余計になのかもしれませんが、もう魅せられましたよ。そういう力が馬にはあります。

[西]それが大きなうねりとなったのがオグリキャップだったりしたんでしょうね。

[添]そういうことでしょう。馬にはそういう魅力があるのだと思いますよ。

[西]競輪や競艇は人間ですけど、競馬は馬なんですよね。

[添]そうなの。でも、競馬は博打という側面だけじゃないんですよ。

[西]西塚厩舎にビジネスサイクルという馬がいて、何もできない僕がいろいろ教わりました。それなのに、結局、オープンまで勝ったのですよね。

[添]それですよ、それ。馬は人間の思いに応えてくれるんです。僕自身、そう思うことができるのは、たくさんの馬に乗ってきたからなのかもしれないですけどね。

[西]エフテーストライクという馬は、ウチの親父が死んだ週に勝ってくれたんです。

[添]そうだったんだ。そういう話というのは、本当によくあります。馬は人の思いに応えてくれるんですよ。

[西]そうなんですよね。

[添]馬をやった人が馬から離れられない、と言われますが、そういうことを感じるからではないですかね。馬に携わって、飯を食べたことがある人たちは、一度離れても再び戻ってくることが多いです。

[西]それが自分自身のモチベーションになったりしますからね。弱いけど、何とか競馬を走れるように頑張って、そうなった時というのは、勝敗は後回しで本当に嬉しいものです。

[添]それがこの仕事を続けていく力になるし、それを大事にしなければいかんのですよ。というか、厩務員さんが馬を信じてあげられなかったら、馬は何を頼りにあの苦しい競馬を走り抜くことができるのかと思う。馬たちは苦しいのを頑張り抜いているんですよ。せめて、一緒に過ごしている厩務員さんが馬を信じてあげるべき、いや、してあげてほしいなぁ。

[西]良い言葉ですね。

[添]でも、実際、経営していて苦しくなると、それが後回しになってしまいかけるのですが、馬が持つ力は本当に大きいんですよね。

[西]いやぁ、今回、場長と話をさせていただいて良かったです。忘れかけてしまいそうになっていた部分を思い出させていただきました。

[添]いや、こちらこそ、久しぶりにいろいろと話をできて良かったですよ。

[西]またぜひよろしくお願いいたします。

[添]こちらこそ、ぜひよろしくお願いします。



いかがでしたでしょうか。

今回、添田場長と対談をさせていただき、もう少し自信を持って仕事をするべきだと感じました。上手、下手、あるいはできる、できないということよりも、この馬を何とかしたい、どうにかしたい、という気持ちの方が大切であり、もっとそういう思いを強くするべきなんだと思ったのです。

添田場長がおっしゃっていたように、馬は人を感動させたり、人と人をつないだり、不思議な力を持っている生き物です。馬に携わることを職業としていると、意外と忘れてしまいがちになる部分ではあるのですが、例えば、今週の皐月賞に出走する18頭には、それぞれに生まれた時から多くの人たちが携わってきていて、それぞれにドラマがあるのです。もっと言えば、未勝利戦に出走する18頭たちにもドラマがあるのですよね。

それぞれに携わってきた人たちの想い、応援してくれるファンの方々の想いがあり、それぞれの馬たちが背負っているものがあるはずなのです。

「馬を信じる」。とても良い言葉ですが、そうできるのも馬だからこそという気もします。添田場長の言葉通り、今週のモンストールについても、もちろん信じて本番に向かいたいと思います。

モンストールについては、速いところをやるようになってから、だいぶ良くなっている手応えを感じています。本番の日曜日までしっかりケアをして送り出したいと思います。

馬の仕事をする心構えとして、もっとも大切と言える話を添田場長にしていただきまして、本当に感謝しています。

ということで、最後はいつも通り「あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞ、よろしくお願いいたします」。