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これからも馬たちを信じて頑張っていこうと思います
2012.4.19

モンストールと挑んだ皐月賞が終わりました。いやぁ、競馬でこれほどまでの緊張感を覚えたのは初めてかもしれません。

どんなに人気になっても、緊張感を感じたことがなかったのですが、今回は緊張していたのでしょう、前日に眠れませんでした。ひょっとしたら、違うことが要因なのかもしれませんが、いままでにこんな経験はありませんでした。

携わった馬がG1に出走することは、西塚厩舎時代に障害で、そして先日の高松宮記念(サクラゴスペル)で経験していましたが、クラシックだからなのか、また違った感覚があったように思います。

よく3歳クラシックのレースを「馬たちにとって一生に一度」と言いますが、僕自身にとっても最初で最後のクラシックレースという可能性がないわけではないと思っています。

夢がないと言われるかもしれませんが、この世界にいると、そんな可能性もあることを教えられるものです。もちろん、何度でも出たいですし、勝ちたいものですが。

装鞍所に馬が来て、そこから競馬に向かうまではそれほど緊張感を感じなかったのですが、鞍を付けるまでの待っている時間が落ち着きませんでした。控え室でタバコを何本も吸ってみたり、競馬を見ていてもあまり記憶になかったり。知り合いの方々から「緊張していたみたい」とレース後に言われたのですが、その通りでした。

皐月賞に向かうにあたって、モンストールならやれる、勝てると信じ切って挑もうと決めていました。僕の少ない競馬経験であっても、競馬がそんな簡単じゃないこと、まして3歳クラシックという大舞台ですから厳しい戦いであることは百も承知していました。

でも、添田場長の「誰かが馬を信じてあげなくてどうするの」という言葉です。モンストールのことを信じてあげること、もっと言えばそう思うことが何よりも大切なんじゃないかと思うのです。

ですから、馬場の悪くなっている内枠ということも気にしていませんでしたし、何が起ころうと勝つ馬は勝つ。モンストールはすべてを克服してくれるという気持ちで、接していました。

西塚厩舎時代、いろいろな経験をさせていただきましたが、当時はこのような大きな舞台は無縁だと思っていました。だからこそ、一層大きく感じてしまったのかもしれません。

もちろん、それではいけないことも重々承知しています。平常心で挑むことが大切だということも頭では理解していました。でも、せっかくのチャンスだからこそ、高揚する思い、馬を信じる思いを抑えずにやってみたかったのです。

気合いを出し始めたので、パドックは厩務員さんと一緒に引いたのですが、正直、それほど人が多いとは感じませんでした。人の多さということでは、ミンナノアイドルの時の方が多いと感じましたね。

馬場入りの際、馬を放す時はどんな馬でも気を遣うものです。いろいろなことが起こりうる瞬間で、もし放し方を間違えれば、馬がリズムを崩してしまったりしますからね。

これは次郎さん(小野調教師)から教わったことですが、馬を放すタイミングや、その際にどうしてほしいかということは、騎手の方々それぞれで違うものです。もちろん、馬の状況によっても違ってきますし、早い段階で放してほしい人もいれば、持っていてほしい人もいます。

今回、(柴田)善臣さんに確認したところ、早く放してもらって良いということでした。そして、放した瞬間、すべての力が抜けていくのを感じました。レースは残っていましたが、やるべきことをやったという充実感があったのです。

本当は、毎回、どの馬に対しても、同じような感覚にならなければいけないのでしょう。もちろん、そういう思いで仕事をしているのですが、今回ばかりは独特の緊張感がありました。

馬体重については、自分自身が飼い葉の管理をしていることもあって、とても気にしています。モンストールは牡馬としてはそれほど食が太いタイプではないので、食べるように、少しでもエネルギーを蓄えられるようにと、試行錯誤をしてきました。

追い切り後の体重からプラス2キロくらいかなと思っていたのですが、実際はマイナス2キロ(460キロ)でした。

それぞれの馬の特徴を考えると、木曜日時点の体重からどう変化するか、だいたい想像ができるものです。この馬は輸送があるからこのくらい減る、あるいは競馬までに減ってもすぐに戻る、というような感覚があります。ただ、今回のモンストールはマイナス2キロで、僕自身は考えなければなりません。

結果は9着でしたが、善臣さんも、現在のこの馬の力を十二分に引き出してくれましたし、本当に僕にとっては言葉にできないくらいの経験をさせていただきました。

今回、モンストールには皐月賞という目標がありましたが、馬たちにはそれぞれに目標があり、それを達成するために頑張っています。携わっている我々は、その目標を成し遂げられると信じて、一緒にできることをやっていっています。

馬もこちらの思いを理解して応えてくれる。そう信じるからこそ、熱くなれるんだと思いますし、そういったことがこの仕事の醍醐味であると思います。

いま振り返れば、モンストールに対しても、まだ何かできたことがあったんじゃないかと考えますよ。やるべきことをやった思いがありましたけれど、終わったいまとなれば、もっと、もっと、という思いもあります。決して満足することはありませんし、これからも馬たちを信じて頑張っていこうと思います。今後も応援のほど、よろしくお願いいたします。

来週からは黛騎手との対談をお送りしたいと思っています。どうぞお楽しみに。

ということで、最後はいつも通り「あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞよろしくお願いいたします」。