今週から嘉藤騎手との対談がスタートします!
2012.8.9
先週、我が尾関厩舎は3勝を挙げることができました。ここのところ勝ち星を挙げてはいましたが、いくぶんペースダウンしている感覚もありましたので、良かったです。
3勝もすると周囲から「調子良いな」、「何を食べさせているんだ?」というように、声をかけられるんですよ。ただ、もちろん、何かを変えたわけではないですし、特別なことはしていません。
以前にもお話をした通り、勝ち負けは大事なのですが、そのために自分たちができることをしっかりやるという意識が大切だと思っています。とにかく、それぞれの馬たちの状態を把握して、やれることをやっていくことに尽きると思います。
さて、今週からは、嘉藤貴行騎手を迎えての対談がスタートします。先週の新馬戦で記録に残る波乱を演出したばかりで、このコーナーにとってタイムリーという感じでしょうか。
先週、新馬勝ちした騎乗馬(ミナレット)は、最近よく騎乗しているミルファームさんの所有馬で、その辺りのことも対談では出てきます。いままさに騎手としてきっかけを掴み、階段を登っていっているジョッキーですので、その生の声を楽しんでいただければと思います。
あっ、友達の方々にも、ぜひ嘉藤貴行騎手が登場していると伝えていただければと思います。それでは、第一回目をどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)今回のゲストは嘉藤貴行騎手です。よろしくお願いいたします。
嘉藤貴行騎手(以下、嘉)こちらこそ、よろしくお願いいたします。
[西]貴行とは、元々、壮(二本柳騎手)とか田辺と一緒にいて、話をするようになったんだよね。
[嘉]そんな感じですね。信さんは、愛想が良いですし、誰とも仲が良いですよね。
[西]いえ、そんなことはありません。話をしない人もいますよ。貴行とは攻め馬の時間が近いこともあって、よく話をさせてもらってて、僕のうるさい話にもお付き合いただき、ありがとうございます。
[嘉]こちらこそ、お世話になってます。
[西]さっそくですが、トルークマクトの函館2歳ステークス、ありがとうございました。結局、どのくらいの確率の抽選となったんでしたっけ?
[嘉]最後は1/6の除外となりました。
[西]6頭のなかの1頭だけが除外ということだよね。
[嘉]そうです。出走できて良かったですよ。
[西]洋芝は問題なかった?
[嘉]はい。対応してくれていましたし、馬は頑張ってくれました。人間が至らなかったです。
[西]そんなことはないよ。レース前に、貴行が所属していた田中清隆厩舎の厩務員さんたちから「貴行、2歳ステークスに乗りに行くんだってね」と声をかけられましたよ。いままで話をしたことのない方々とも盛り上がることができました。
[嘉]あ、そうですか。除外にならないで良かったぁ。本当にウチの厩務員さんたちには感謝しているんですよ。
[西]レースでは、果敢に行きましたよね?
[嘉]あの日に行われた2つの芝のレースで、ひとつは外からの差しが決まって、もうひとつは逃げ切りだったんですよね。朝に芝コースを歩いて、その2つのレースも観て、僕自身、心が決まったということもありました。先生(尾関調教師)からも「もし楽に行けるようなら、行った方が良い」という話をしていただいていましたしね。
[西]ウチの先生からも話があったんだ?
[嘉]そうですね。枠(2枠4番)のこともありましたし、囲まれてしまうよりはいままで通りの競馬をした方が良いという思いがありました。
[西]なるほどね。観ていて、思った以上に主張するなと思っていたんだけど?
[嘉]馬自身は出てはいたのですが、他の馬も速いですし、簡単には行かせてくれません。
[西]そこで引かなかったよね。
[嘉]あそこでは引けないですよね。もし、あれ以上速くなったら引いていました。
[西]結果的には、体勢的に落ち着くところもできていたし、貴行自身も冷静に乗ることができていたんじゃないの?
[嘉]周囲は見えていましたし、落ち着いて対応はできました。
[西]直線では、一瞬、先頭に立ったよね。
[嘉]4コーナーで早め来られてしまう形になったので、厳しい形ではあったのですが、突き放しかけたんですよ。
[西]行ったことに対して批判を受けることはないし、結果論でしかないんだけど、乗っている本人としては、「あそこでもう少し」というように考えるものなのかな?
[嘉]このレースに限らず、「もう少しこうしておいた方が良かったんじゃないか」と考えますよ。それは絶対にあります。
[西]着差が着差だっただけに(0秒3差)、悔しさも残ったんじゃないの?
[嘉]いや、本当に悔しいですよ。
[西]でも、いろいろ言ったところで、すべては結果論でしかないからね。
[嘉]ただ、今回は、心に決めて逃げたので、後悔はしていません。
[西]心に決めていたんだ。
[嘉]もちろん、速くなる時には控えようと思ってはいましたよ。ただ、あくまで馬のリズムで行っていましたので、決して逃げなければ良かったということではありません。
[西]ここまでの騎手人生のなかで、チャンスということで言えばかなり上位にランクされるレースだったんじゃない?
[嘉]マイネルアムンゼンに乗せていただいた時もチャンスでした。
[西]あっ、そうだね。
[嘉]あの時はまだ減量の身で、緊張してしまっていました。セントライト記念で乗せていただいて権利を取って(③着)、菊花賞でも乗せていただいたんですよ。初めてのG1レースでの騎乗でした。
[西]あっ、そうだったんだ。それは失礼しました。
[嘉]あの頃は減量もあって、たくさん乗せていただいていたのですが、緊張していましたし、振り返ると若かったと思います。
今週はここまでとさせていただきます。
ウチの厩舎が先週に挙げた3勝はすべて未勝利戦でしたが、この時期の未勝利を3つ勝てたのはとても大きいことです。
もちろん、どのレースも勝ちたいのですが、この時期の未勝利はタイムリミットがすぐそこに迫っていますので、馬にとっても、我々にとっても、非常に大きな意味を持っているのです。
3頭のなかでもコスモバルバラは、普段から攻め馬に騎乗する機会が多く、今回もデキが良いことは手に取るように感じていました。また、普段から一緒に過ごす時間が多い松岡(騎手)でもあり、デキが良いことは伝えてありました。
勝てて良かったという思いとともに、やはり特別な思いがありました。実は、自分自身、力が入っているのが分かっていました。乗る騎手によって、より力が入るということはあってはならないのかもしれませんが、いろいろ話をしますし、時間を共有していることもあって、どうしても余計に力が入ってしまうんですよね。
今週も、我が尾関厩舎のサクラディソールという素質を感じさせられる存在に騎乗する予定なので、良い結果を出せるように、僕たちはできることをやって松岡に委ねたいと思います。
ということで、最後はいつも通り「あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞ、よろしくお願いいたします」。