トルークマクトと挑んだ小倉2歳Sを、嘉藤騎手とともに振り返ります
2012.9.6
先週お話をさせていただいた通り、対談が最終回を迎えた嘉藤貴行騎手を迎えて、トルークマクトと挑んだ小倉2歳S(15着)を振り返ります。
それでは早速いきましょう。
[西塚信人調教助手(以下、西)]対談に引き続きということになりますが、よろしくお願いいたします。
[嘉藤貴行騎手(以下、嘉)]こちらこそよろしくお願いいたします。
[西]早速ですが、一緒にレースを見ましょう。
(スタートから映像が再生される)
[嘉]いままでの3戦よりもスタートは出していきました。
[西]あっ、そう。函館2歳Sの方が出しているようにみえるよ。行っていないからそう見えないのかな(笑)。
[嘉]周りの馬たちが速かったんですよ。競馬が速いとか、ゲートが速いとかではなく、単純に脚が速い感じなんですよね。
[西]前に行った2頭は馬なりでこのスピードだもんね。そう言われて見てみると、最初は手を動かしているけど、途中からそのままの位置で流れに乗っているように見える。
[嘉]一応、行けなかったときのことも考えてはいました。元々、馬添えが悪いというようなところもありませんでしたし、実際あの位置でも大丈夫でした。
[西]むしろ、良い位置だよね。
[嘉]ペース的にも良かったと思ったんですけどね。
[西]これで付いて行ってしまっていたら、潰れてしまっていたよ。ブッチャけてしまうけど、付いて行かずにあの位置であったにも関わらず、その後があのような結果だったわけですよ。
[嘉]なさすぎますよね。2着馬(クラウンレガーロ)が外から来たときに、一瞬『随分早く来るな』と思ったのですが、内にいた勝ち馬も全く手が動いていない状態でしたからね。2着馬に早めに来られたことで、より苦しくなってしまったということはあると思います。しかも擦られ気味に来られていてプレッシャーはありましたから。ただ、それにしてもなさすぎではありますよね。
[西]勝ち馬(マイネルエテルネル)は強いよね。
[嘉]強いと思います。一度マクリ切られているのに、そこから差し返しているわけですからね。
[西]他にも、前に行っている馬たちも強そうな印象があるんだけど。
[嘉]いや、走ると思います。実際、あのペースを馬なりでつくり出すんですから。
[西]それにしても速いペースだったよね。
[嘉]それに戸惑った面というのは、少なからずあると思います。よく関東と関西では競馬が違うと言われますが、今回のようにテンからスピードに任せていく、いわゆる関西の競馬を初めて経験したわけですよ。
[西]中京などでも、そういう競馬の違いというか、展開の違いに戸惑うケースをよくみかけるよね。福島、新潟で500万下ダート1200メートルとかで良い競馬をしていた馬が、中京で全く行くことができずに、力を発揮できなかったりする。
[嘉]小倉も冬は関東馬が結構いたりするので、そこまで強い印象はありませんが、夏の小倉や暮れの中京は『速いなぁ』と感じさせられるレースが多いです。ダート1800メートルなんかでも、そうなんですよ。しかも、中団にいて速いと感じさせられるのに、それでも前が残ってしまうというようなケースも少なくありません。
[西]このレースはまた特に速い印象を受けるけど、2歳戦ということもあるのかな。
[嘉]2歳戦というのは、その多くがどうしても競馬に慣れていない馬たちの競馬となりますので、なるべき揉まれたくありませんし、できることならばスムーズな競馬を、という心理もあります。そういうことから、良い位置を取りに行く傾向が強くなりやすいことはあると思います。
[西]トルークマクトに関しては、4コーナーで勝ち馬と2着馬に来られたときに、手応えがないよね。
[嘉]確かに擦られ気味ではあるのですが、もし手応えがあったならば、全く影響はなかったはずです。自分が元々いたスペースなのですから、例え同じように入られてきたとしても、余力があればそのまま負けずに対抗できているはずなんです。
[西]内心、メンバーも強いし、条件も厳しいけど、それでももう少し頑張れるかなと思っていたんですよ。
[嘉]僕もそう思っていました。また、返し馬も落ち着いていて、本当に良い雰囲気だったんですよ。『これならばやれる』と思いました。
[西]函館2歳Sと比べて、どうでしたか。
[嘉]僅かな期間かもしれませんが、随分と大人になってきていますよ。馬に余裕が感じられて、成長しています。
[西]体はプラス8キロだったよね。
[嘉]全く問題ありませんでした。ゲートに向かうまでも歩いて移動できたりして、本当に良い仕上がりでしたよ。
[西]栗東を経由したとはいえ、輸送を経験しているなかで、プラス8キロというのは個人的には良いと思ったし、肉体的にもドッシリとしてたくましさが出た印象を受けた。
[嘉]1週前の追い切りの感触も良かったですし、コンディションとしては良い感じだったんですよ。落ち着きという部分でも、さらなる成長も感じさせられました。そう考えると、もう少しやれて良いと思ってしまうんですよね。
[西]競馬としても、許容範囲内というか、想定していたなかに入っていたわけだからね。こうして、もう1度レースを見ていると本当に速い馬たちが多い。でも、トルークマクトもゲートの出そのものは速いんだね。
[嘉]速いんですよ。ただ、そこから速い馬たちは馬なりでグングン行っているんですよね。
[西]競馬としては、良い競馬だったと個人的には思います。
[嘉]結果的に行くことができなかったのでこの位置取りになりましたが、あまり外は回りたくないと思っていたんです。ですから、例え行けなくても、出して行ければ、3頭目あたりに付けて、そこから内に入っていくイメージがありました。
[西]出して、内に潜り込むというやつですね。
[嘉]そうです。そういう競馬をするのが一番良いのだろうと思っていたのですが、結果的に行くことができませんでした。
[西]どのくらいのところで、行くのをやめたの。
[嘉]わかりやすく説明させてもらうと、手の動きが止まったところですかね。そんなに長くというか、粘ってはいません。でも、スタートが決まったときには一瞬行けると思いました。そうしたら、周囲は馬なりですからね。
[西]それと、わかり難いのですが、外枠ですので、真っ直ぐ走っているわけではないんですよね。徐々に内に入って行っています。その分のロスもあるわけですよ。
[嘉]ただ、それにしても、他の馬たちが速いですよ。前に行った2頭は本当に速かったぁ。
[西]重賞とはいえ、このレースはまだ新馬を勝ったばかりの馬たちを中心に、多くても2、3戦という感じだからね。
[嘉]新馬戦というのは、ハナを切る、あるいは2、3番手から抜け出して勝つという光景が多いはずで、馬群から抜け出して差し切る馬は少ないと思います。新馬たちは調教しか経験していないわけですから、多くの馬は競馬をしながら戸惑ったりするわけですよ。もちろん、馬群に入っても戸惑うことなく、直線で突き抜けることができるセンスを持っている馬もいますが、多くの馬たちは経験することでできるようになっていくのです。
[西]勝ち馬は、早い段階でそれができたということだよね。
[嘉]そういうことです。
[西]ただ、函館2歳Sのときも話をしたけど、2歳Sは逃げ切りというのがほとんどないんだよね。
[嘉]そうなんですよね。恐らく、1回経験することで理解できてしまう馬たちがいるんだと思います。
[西]馬場も、いまの小倉は速い時計が出る状態だったみたいだよね。
[嘉]聞いたら、多少掘れているところもあるけど、3頭目くらいから外は良いということだったんですが、乗っていても良いなぁと感じさせられました。
[西]話は逸れるけど、土曜日に新潟で乗ってそこからどうやって小倉に行ったの。
[嘉]新潟から福岡行きの飛行機があるんですよ。
[西]あっ、そう。大阪あたりまで出るか、東京に戻って飛行機なのかと思った。
[嘉]新潟空港から出ているんですよ。
[西]貴行もタフだと思うけど、トルークマクトも本当にタフだわ。
[嘉]本当に頭が下がります。結果は出ていませんが、そのなかで成長しているのですから、凄いですよ。馬自身が持っている底力を感じさせられます。
[西]ブッチャけ、今回は速い時計が厳しかったかなと思う。
[嘉]うんん。というか、経験したことがないということが大きいと思います。
[西]逆に、函館の洋芝というのは良かったのかなと思うんだよね。
[嘉]そうかもしれません。ただ、馬場もそうですし、テンからガンガン行く展開の競馬そのものも初めての経験でしたので、そういう部分に戸惑ったという部分もあったのかもしれませんよね。まだ4戦しただけの段階ですし、ここからどんな成長をしてくれるかわかりませんので、対応できるようになるかもしれませんしね。
[西]それは誰にもわからないからね。
[嘉]本当にそうなんですよね。
[西]いやぁ、今日はありがとうございました。
[嘉]こちらこそ、ありがとうございました。
[西]今後の活躍を楽しみにしております。
結果的には、いまの段階では、速い馬場、テンから行く展開に戸惑ってしまったということも含めて、対応できなかったということのようです。
ただ、前回対談に出てもらった大野が騎乗して新潟記念を勝ったトランスワープのように、どんな競馬にも対応して勝ち上がっていくようになる馬もいるんです。
我々は、携わった馬たちに対して、良くなっていく、強くなっていく可能性を信じて、できる限りのことをやって頑張っているわけで、トルークマクトについても、今後良くなって、強くなっていくことを想いながら、頑張っていきたいと思います。
ということで最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。