先週はステラウインドが強いレースを見せてくれました
2012.10.4
先週、我が尾関厩舎は、お陰様でファンアットコートとステラウインドが勝ち、2勝を加算することができました。
ファンアットコートに騎乗していたのは松岡(騎手)で、松岡にとっては尾関厩舎で4勝目だったということで、「俺にとってのリーディング」と言っていました(笑)。
松岡だからという意識ではないのですが、ブッチャけさせていただきますと、毎週バンドの練習で顔を合わせますので、『あそこをもう少しこうした方が良い』というように、注文が他の方々よりもつくんですよ。ダメ出しもハッキリとされますので、そういう部分は影響しているのかもしれませんね。
あと、ステラウインドですが、強かったですね。青葉賞で3着になった馬で、ここ(500万下)ではと内心期待していましたが、予想以上のレースぶりをみせてくれたと思います。
頭数の関係で未確定ではありますが、今後は菊花賞を目指して調整していくことになり、出走できれば、我が尾関厩舎にとっては、3歳牡馬クラシック全レース出走になります。
春と秋で違う馬で出走するということになれば、その意味も大きいと個人的には思っているんですよね。ステラウインドは距離延長も問題ないはずですし、何とか出走できればと思います。
さて、今週は嶋田騎手との対談3回目になります。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)嶋田にとって、競馬との出会いはなんだったの?
嶋田純次騎手(以下、嶋)中学校ではサッカーをやっていたので、土日も家にほとんどいませんでした。それが雨か何かで家にいた時にテレビでたまたま競馬を観て、『あぁ、面白いなぁ』と思ったのが出会いです。
[西]その頃の活躍馬は何がいたの?
[嶋]ディープインパクトですかね。
[西]それは最近だね(笑)。
[嶋]僕が観たのは普通のレースだったと思います。何が勝ったのかとか、どの競馬場だったのかはまったく記憶にないのですが、『面白そうだなぁ』と思ったんですよね。
[西]なるほどね。
[嶋]それと、祖母の家が船橋で、そこへ行く時に競馬学校の前を通っていたんです。よく父親に『そのまま身長が小さい時には、ここへ入るか』と言われていたら、そうなったんですよね(笑)。
[西]すごく競馬が好きで、ということではなかったんだね。
[嶋]夢中になっていたわけではありませんでしたね。
[西]試験は1回で合格したの?
[嶋]そうです。抜群の手応えでした(笑)。
[西]試験の段階で馬に乗った経験はあったの?
[嶋]ないです。二次試験の前に5日間程度乗馬クラブに通っただけですね。根拠はありませんでしたが、すごく自信があったんですよね。
[西]二次試験は馬に乗るよね?
[嶋]はい。ただ、僕たちの時には、経験者と未経験者という感じで分けられました。
[西]経験者のなかには(横山)和生がいたんだよね。上手かった?
[嶋]上手かったですよ。あと、森一馬は馬術で全国8位とか記録を持っていたらしくて、凄いなぁと思いました。
[西]ハイレベルな人間たちと一緒に競っていかなければならないのだから、入学してから大変だったんじゃないのかと思うよ。
[嶋]大変でしたよ。観ているのとは大違いで難しいですし、思い通りになんてまったくいきません。正直、自信があったんですよ。やっていれば乗れるようになるし、上手くなれると思っていました。
[西]そうしたら?
[嶋]いやぁ、難しかった(苦笑)。
[西]じゃあ、入学前は憧れている騎手とかもいなかったの?
[嶋]入学するまでは、正直、いませんでした。ただ、二次試験の時に、簑田先生から松岡先輩と作家の吉川さんとの手紙のやり取りが掲載された記事を渡されたんです。
[西]それは嶋田だけ?
[嶋]いえ、違います。結局、藤懸や杉原ももらっていますので、ひょっとすると、未経験者のなかで合格候補者という感じで目にとまった人間に渡していたのかもしれません。
[西]どんなことが書いてあったの?
[嶋]未経験で入った松岡先輩が、『今度の試験では不甲斐ない結果となり、努力が足りないと痛感しました』というようなことを書いた手紙を吉川さんに送って、そのやり取りが書いてあったんですよ。『松岡先輩、格好良いなぁ』と思いました。
[西]そうしたら、手塚厩舎で松岡の弟弟子のような関係になったわけだよね。
[嶋]はい、松岡先輩にはとてもお世話になっています。
[西]そうしておこうね(笑)。杉原も藤懸君も未経験者なんだね。
[嶋]杉原は競馬は大好きだったらしいですけど、乗った経験はなかったみたいです。
[西]そう考えると、未経験者でも経験者を超えることができるとも言えるよね。
[嶋]松岡先輩の記事を読んで、『未経験者であっても、ここまでやれるんだ』と頑張れる気持ちになりました。
[西]松岡も役に立っているんだね(笑)。
[嶋]いえ、本当にお世話になっているんですから。
[西]その上の騎手の人たちとはあまり交流はないのかな。ノリさん(横山典騎手)は同期のお父さんになるわけだけど?
[嶋]そうですね。とてもやさしくしていただいてます。
[西]話をしたりするの?
[嶋]します。返し馬で僕が騒いでいたら、『うるさいぞ』と笑いながら言われたことがありましたけど、いろいろ聞くと丁寧に教えてくれます。
[西]そうなんだ。この前、ある年上の騎手と話をしていた時、嶋田の話題になったんだけど、『本当に騎手人生を楽しんでいるよ。俺たちの若い頃とは違う感じがする。俺たちの頃はもっと悲壮感があった』と言っていたよ(笑)。
[嶋]そうなんですかね。
[西]検量室とかでも、関係者やバレットの人たちと仲良く話をしていて、そこからレースに向かって勝つわけだよ。でも、その人たちの頃は『競馬の前にはピリピリしていた』と言っていたね。
[嶋]そうなんですね。
[西]話が戻るけど、簡単だと思って入学したはずなのに、実際やってみたら馬乗りが本当に難しく、その後に実戦で騎乗するわけだけど、その時はどのような感覚だった?
[嶋]模擬レースは楽しかったです。模擬レースに騎乗できるのが楽しみでした。
[西]模擬レースは同期だけだし、数頭でのレースだけど、実戦は18頭のこともあって、先輩たちと戦うわけだよね。
[嶋]本当に驚くくらい、圧迫感がまったく違いました。別次元の感覚でした。あっ、あと、お客さんの違いも感じましたね。
[西]どういうこと?
[嶋]模擬レースはあくまで観ていただくだけですが、実戦はお金がかかっていますから。
[西]『嶋田、馬鹿野郎!』とか言われた?
[嶋]『馬鹿野郎』は言われましたね。それ以上は言われていません。
[西]そう言えば、嶋田はデビュー戦で勝ったんだよね。
[嶋]そうなんですよ。
[西]初騎乗・初勝利というのは凄いよ。
[嶋]松山先輩(松山騎手)もそうだったんですよね。チャンスのある馬に乗せていただけたからですので、手塚先生のお陰ですし、本当に感謝しています。
[西]騎手になって『うわぁ、観ているのと違う!』と痛感したことってどんなところ?
[嶋]それこそ、乗れば普通に勝てると思っていたんですよね。それが、ひとつ勝つことがどれほど難しいことか。簡単に前に行けると思っていたのですが、何をやっても行くことができないんですよ。
[西]うははは(笑)。行こうと思ってやっているのに、進んで行かないんだ?
[嶋]そうなんですよ。押しても、叩いても、行けない馬は行けないんです。
[西]そうなんだね。じゃあ、逆にやっぱり簡単だったと思うことってあったりする?
[嶋]それはないですね。簡単だと思ったことはないです。やはり、全部が難しいですよ。
[西]誰か目標としている騎手というか、その人のどういう面を見習いたいと思うのか、聞かせて。
[嶋]みなさん、いろいろ見習いたいところがありますが、厩舎実習中から思っていたことは、松岡先輩の馬をよく知っている、その知識の豊富さを見習いたいと思っています。でも、これがなかなかできないんですよ。あの厩舎のこの馬、と思えていても、その特徴がパッと出てこなかったりするんです。それと、松岡先輩は後輩の面倒をよくみてくれて、その人間性も見習わなければいけないと思っています。
[西]でも、自分もよく後輩を面倒をみているじゃない。最近は誰と一緒にいるの?
[嶋]ザキヤマ(山崎騎手)、長岡(騎手)ですね。
[西]一緒に寝ているという噂を聞いたんだけど?(笑)
[嶋]ザキヤマとは毎日一緒に寝ています。
[西]うははは(笑)。それはどういうことなのかな?
[嶋]ザキヤマは、寮の僕の部屋で寝ているんですよ。今朝も調教が終わって戻ると、先に帰ってきていて、ドアが開いた音で起きたらしく、『お疲れさまでした』と言って、また寝ていました。
[西]寮はひとり部屋だよね? それはザキヤマが嶋田先輩を好きだから、ということなの?
[嶋]好きだからでしょうね。
[西]うははは(笑)。嶋田、彼女はいるの?
[嶋]いません。
[西]じゃあ、募集中ということで。
[嶋]お願いします(笑)。
今週はここまでとさせていただきます。
調教師試験を受けたことについて、何人かの方からメッセージをいただきました。
僕自身、今回は初めての受験だったのですが、とにかく勉強不足のひと言です。認識が甘かったと痛感させられましたし、来年に向けてこの試験のことしか頭にないくらいの勢いで勉強しなければならない、との思いを強くしました。
もちろん、このコーナーは続けさせていただきたいと思っておりますが、すでに来年に向けて、勉強を始めています。機会があれば、どんな勉強をしているのか、お話をさせていただこうかとも思っております。
ということで、最後はいつも通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞよろしくお願いいたします』。