今年も残り3ヶ月、どこまでもどん欲になりたいと思います
2010.10.11
我が尾関厩舎は、今年に入って好調が続いて、現在関東5位。ブッチャけさせていただくと、これまでは『この好調はいつ止まるのだろうか』、『そのうち止まってしまうだろう』という意識がどこかにありました。でも、ここまでくると『上を狙うぞ』という意識が強くなってくるものです。
どこまでもどん欲になりますし、勝ちたい。全レース勝ちたいと強く思うんですよ。
それと、上にいる4つの厩舎の動向が気になってきました。いままでは、『あの厩舎は凄いな』、『あの厩舎はよく勝つな』という感覚だったりしたのですが、『うわわ、また勝たれた』という気持ちになるんですよ。
最後まで諦めずにどん欲にいきたいと思っています。今週、出走を予定しているヴェルデホ、サクラゴスペルも具合は良さそうですし、頑張っていきます。どうぞ応援をよろしくお願いいたします。
嶋田騎手との対談は、今週で最終回を迎えます。それではどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)この秋は、福島、新潟で騎乗する予定なのかな?
嶋田純次騎手(以下、嶋)その予定です。先生とも相談をして、あくまで勝ち星にこだわって頑張ります。
[西]そうすると、初めて腰を落ち着けて三場で騎乗することになるんだね。
[嶋]そうですね。
[西]本場と三場では、競馬も違うと言うよね。
[嶋]そもそも競馬場の大きさが違うということもありますが、本場の方がレースが綺麗ですよね。
[西]いまは減量というアドバンテージもあるし、2年目の秋に勝ち星を量産したいという考えもあるのかな?
[嶋]減量の効果は大きいですし、大切だと考えています。その特典があるうちにたくさん勝ち星を挙げたいですし、自分自身で100勝をして、減量の特典を外したいという思いもあります。
[西]そういう思いがあるんだね。いま何勝?
[嶋]30勝です(平成24年9月13日時点)。あと1勝で白三角(△)になります。
[西]でも、3年で100勝するって、実際は大変なことだよね。
[嶋]先輩たちを見ても、簡単ではないことはわかります。
[西]確か、関東では松岡まで間隔が空いていたはず。三浦、あと元気(丸山騎手)と、最近は達成する人が増えたけど。
[嶋]丸山先輩は2年目で91勝ですからね。1年目も札幌で初勝利を挙げてから8勝を挙げて、勝ち星で先行していた(国分)優作先輩、小野寺先輩を抜いて、僕がいただいたのと同じ新人賞に輝いたんですよね。
[西]100勝することは、馬の力も大きいのだろうけれど、自分の努力も大切だと思うよ。
[嶋]そうでしょうね。デビューする時に、1年目の目標として30勝と新人賞を掲げたのですが、やってみるとその難しさを実感しました。
[西]これまで対談した先輩たちとの話を思い出すと、競馬をよく観るようになって成績が上がったと聞いたよ。マユちゃん(黛騎手)は、丸田が競馬をよく観ていて、馬をよく知っているという話をしていたよ。
[嶋]丸田先輩は、もの凄く馬を知っています。自分が乗ったことはない馬でも、僕が乗っている馬について、いろいろ情報を持っているんですよね。
[西]そのもの凄い探究心が好成績を生んでいるんだろうね。
[嶋]丸田先輩も、松岡先輩もそうですが、乗れている人はよく知っています。松岡先輩も、実際には乗っていないのに『その馬、こういうところがあるだろ』というように知っているんですよ。
[西]松岡もよく知っているよね。嶋田は観ているの?
[嶋]自分が騎乗する馬はレース前に調整ルームとかでチェックします。それ以外のレースについては、パトロールフィルムとか調整ルームで観る感じです。
[西]そういう意味では、丸田は特殊なのかもしれないね。丸田は宗像厩舎だから、(田中)勝春さんがそばにいたわけだ。話は変わってしまうけど、一緒に馬に乗っていて勝春さんは天才だと思うんだよ。
[嶋]競馬で乗っていても、とても上手だと感じます。ただ、身近に感じることができないというか、雲の上という感じなんですよね。身近で言えば、津村先輩は上手だと思います。
[西]津村天才説は周辺でも唱える人は多いですよ。そろそろ時間なので、最後にアイムユアーズとアルフレードについても聞いておこう。自慢じゃないけど、俺は、ダービーの週の追い切りで、アルフレードと一緒にモンストールに乗ってハッキングしたんですよ。
[嶋]知ってますよ。あの時、(武)豊さんに『いつも武豊TV観ています』って声をかけていたじゃないですか(笑)。
[西]うははは(笑)。そうだよ。
[嶋]『どこで収録しているんですか?』と聞いてましたよね(笑)。
[西]聞いた、聞いた(笑)。
[嶋]僕が恥ずかしかったですよ。「またいつもの感じで聞いちゃっているよ」と思いました(笑)。
[西]だって、なかなかないチャンスだからね。ここだと思いましたよ。話を戻そう。アルフレードはどうなの?
[嶋]いまでも鮮明に覚えているのは、ウッドチップで追い切った時に、いままで感じていた感覚からは想像もできないくらい違う乗り味を感じさせられたんですよね。
[西]進んで行き方が違うの?
[嶋]言葉にするのは難しいのですが、とにかく速くなっているのに振動がない感じなんですよ。朝日杯の1週前に乗った時には、この馬に勝てる馬がいるのか?と思いました。
[西]なるほどね。アイムユアーズはどうだった?
[嶋]良かったです。ただ、あそこまで強くなるというイメージは、僕にはできませんでした。春のクラシックでも、一戦ごとに良くなっていくんですよね。厳しいレースをしているはずなのに、さらに良くなっていくのがわかりました。
[西]あの馬の良さってどこ?
[嶋]瞬発力でしょうね。ギアチェンジする時の感覚が何とも言えないんですよ。
[西]走る馬ってそうなんだよね。スイッチがあって、それを押すと突き抜けていくみたいな感覚だよね。
[嶋]一度、併せ馬で併走したまま4コーナーを回ってきてくれ、と言われたことがあったんです。でも、自信がなくて『並んだだけで突き抜けてしまいます』と言ったことがありました。ギアが上がっていく感覚が違うんですよ。
[西]わかる、わかる。中間がない感じで、一気にトップスピードになるんだよね。競馬も乗りたいね?
[嶋]乗りたいです。
[西]この前(クイーンS)も強かったよね。
[嶋]まだ乗っていないですけど、体重も増えて、さらに成長していますから、本当に楽しみだと思います。
[西]本番(秋華賞)は誰が乗るの?
[嶋]池添さんです。馬自身がさらに成長していますので、やってくれるんじゃないかと期待しています。
[西]楽しみだね。いやぁ、長い時間、ありがとうございました。来年までに100勝できるように応援していますので、頑張ってください。そして、またこのコーナーに出てくださいよ。
[嶋]ありがとうございます。とにかく頑張りますので、よろしくお願いいたします。
いかがでしたでしょうか。
嶋田騎手は、この対談を行った後も、波乱を演出するなど活躍をみせていますよね。
競馬に関しては、『思い切りが良い』などと言われますが、僕自身は『落ち着いている』というのが実感です。競馬に向かう前に話をしていても、とにかく新人とは思えないくらい普通なのです。珍しいタイプであることは確かでしょう。
ももクロが好きというように若い一面もあるのですが、仕事に関しては実にしっかりとしています。先輩に対する対応、仕事上の付き合い方など大人びていて、わかりやすく言いますと、相手を不快にさせない。でも、媚びるのではないという感覚なのです。
これもひとつの才能であると思いますし、デビュー2年目ということも考えると、騎乗技術ともども伸びしろを感じさせられます。将来のJRAを背負って立つひとりになるはずですし、ぜひ読者の方々にも応援していただければと思います。
ということで、最後はいつも通り『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞよろしくお願いいたします』。