今週からは、開業2年目の小野次郎調教師との対談です!
2012.10.25
今週からは、2回目のゲストとなる小野次郎先生が対談相手なのですが、前回は騎手という立場で、現在は調教師です。調教師になられて、普段に会話をしていても、変わられたなぁと感じることがあります。
僕自身、そのあたりのことを聞いてみたいと思っていましたし、読者の皆さんにも、まったく別という意識で読んでいただければと思います。
それと調教師となって時間が過ぎたいま、騎手についても本音で話をしてくれるんじゃないかという思いで、お招きしました。
いろいろな話をしてくださいましたので、ぜひ皆さんにも最後までお付き合いしていただきたいと思います。それではさっそくどうぞ。
西塚信人調教助手(以下、西)今回は調教師となった小野次郎先生をお迎えいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
小野次郎調教師(以下、小)よろしくお願いいたします。
[西]厩舎を開業されてから2年が過ぎようとしていますが、騎手時代と比べて、大きく変わったのはどんなことですか?
[小]騎手はあくまで自分自身だけであって、すべて自分自身。極端な言い方をすれば家族だけでした。でも、調教師になると従業員たちに対しての責任を問われることになりますよね。さらにその家族もいるわけですから、重いですよ。
[西]次郎さんが調教師となられて、実はふとした時に、少し変わったかなと感じさせられることがあるんですよね。従業員に対する責任があるという言葉は重いです。
[小]重いですよ。調教師になって、守らなければならないものが増えるのは間違いありません。騎手も、家族をはじめ守らなければならないものはあるのですが、自分自身が勝てなければ食べられないという面がより強い。確かに、馬主さんや厩舎の協力はありますが、最終的にはすべては自分自身の責任なのです。調教師も勝たなければ食べていけないですし、自分自身の責任ではあるのですが、そこに従業員に対しての責任が加わってくるわけですよ。責任の重さはまるっきり違います。
[西]騎手は選手ですが、調教師は経営者という部分が大きくなりますよね。
[小]調教師は舞台でいえば黒子だと思うんです。主役は馬であり、騎手ですよ。ですから、あまり目立たなくて良いと思っています。走ってくれるのは馬ですから。
[西]マスコミ対策ということでいえば、何か変わったことはありますか? 騎手時代から、あまり話をしている光景を目にしたことがありませんでしたけれど…。
[小]こちらが言っていることをそのまま伝えてくれないことがとても多くありましたし、取材自体、されることもあまりありませんでした。最近で言えば、調教師の対応が悪い、あるいはサービス精神がないというような指摘がJRA全体で言われていますが、マスコミ側ももう少し考えていただきたいと思っています。
[西]でも、いまは調教師でいらっしゃいますので、担当記者の方々が来ますよね?
[小]出走馬に関してはお話をしますよ。
[西]以前にこのコーナーに出ていただいた『日刊競馬』の黒津さんも行かれますよね?
[小]黒津さんとは腐れ縁ですから(笑)。
[西]騎手時代からのお付き合いですからね。実は、私事で恐縮なのですが、今年初めて調教師試験を受験しました。
[小]おっ、そうですか。どうでした?
[西]勉強不足でした。
[小]初めて受験した時は、(自分自身も)書けなかったなぁ。馬術とか、頭では分かっているのに、活字にできないんですよ。もどかしかったなあ。「やれるから、俺にやらせてみて」と思いましたよ(笑)。
[西]うははは(笑)。「ゲートに入らない馬に対して、どう対処するか」という問題も出ますが、それこそ「かしてみろ」っていう話ですよね。
[小]まさに、そうです。脚を使って云々…という言葉が出てこなかったんですよ。
[西]「俺にかしてみろ」とは書かなかったんですか。
[小]書きたかったですけどね(笑)。
[西]実技ならば間違いなく合格ですよ(笑)。
[小]でも、試験、頑張ってね。
[西]来年は何とか合格できるように頑張ります。次郎さんは、なりたいと思ってなった調教師業ですが、どうですか? スタッフの方々ではなく、自分で乗ってしまうということもあるのですか?
[小]ありますね。自分がイメージした通りに乗ることができないという時には、自分で乗ってしまった方が良いのかと格闘したことがあります。馬に対する感覚というのは、どうしても人それぞれ違いますからね。こちらは騎手として、馬にここまで接してきているのに対して、スタッフは牧場から入ってきていますので、根本的に違っていますし、同じにすることはほぼ不可能です。
[西]でも、あまりというか、ほとんど、自分自身では乗っていませんよね?
[小]乗るのは簡単ですし、そうした方が早いですし、上手くいくと思います。でも、厩舎を考えた時に、土台づくりという意味において、自分がしゃしゃり出て行っては、レベルアップしていくことはできません。自分が乗って、仕上げて、しっかりと馬をつくっていきたいのですが、それをやってしまっては、厩舎はいつまでもそのままのレベルでしかないんですよ。うちのスタッフたちができるようになってもらわなければダメだからこそ、我慢して乗らないのです。
[西]攻め馬に乗っているスタッフの方々に、いろいろ指示している姿も目にしませんけれど…?
[小]指示はしていますよ。ただ、言われたことだけをやっている間はダメで、自分で考え始めた時に力になっていくもの。ですから、極力、口を出さないようにしています。指摘するにしても、スタッフも大人ですし、考えながら話はします。
[西]深い話ですね。一緒に仕事をさせていただいた頃、いろいろと教えてもらったことをよく覚えています。
[小]あなたには怒れても、うちのスタッフには怒れません(笑)。
[西]いろいろ教えていただきましたが、いまでも「あっ、やばい」とドキッとすることがありますし、気を付けていることは多いです。感謝しています。
[小]何でもそうですが、自分で考えないと意味がないと思いますよね。
今週はここまでとさせていただきます。
田辺(騎手)が騎乗して初出走初勝利を飾ったラストウィッシュが、最終週を迎える今週の新潟で、黛騎手とのコンビで出走を予定しています。
普段、調教でも乗っているのですが、ブッチャけ、まあこれが良い馬なんですよ。乗っていて、「これは」と思わせられます。
もちろん、調教で素質を感じさせられたとしても、実戦に行ったら、能力のすべてを発揮することができない、という馬がいます。
僕自身も含めて、調教で騎乗している人間たちは、車で言えばサスペンションや足回りという部分に意識がいきがちな面があるように思います。エンジンである心肺機能についても意識はするものの、不確定要素が大きい印象があり、あまり口にしないようにと思うんですよね。
最近では、心肺機能を把握するためにハートモニターで計測している厩舎もありますし、血液検査も有効な手段のひとつされています。しかし、獣医師の判断も含めて、絶対的な基準というか計測方法ではないのです。それだからこそ、難しいわけですよ。
ラストウィッシュについては、乗って良いですし、追い切りでの動きもしっかりとしているので、良い状態でレースに送り出せそうです。ぜひ応援をよろしくお願いいたします。
ということで、最後はいつも通り「あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうぞよろしくお願いいたします」。