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“内を突く”ことへのこだわり
2013.1.31
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西塚信人助手(以下西) ところで、レースでよく「開かず届かず」というけど、そういうところにいて勝負しないとまた勝つことはできなかったりするわけだよね。
田辺裕信騎手(以下田) そこで開く、あるいは自分に有利になるというように、勝つには運も必要なんですよ。

[西]勝つ馬はヘグっても、あるいは不利があっても勝つと、よく言われるよね。

[田]有馬記念のゴールドシップやルーラーシップは、出遅れるアクシデントがあったけど、結局強かったですよね、ということですよ。

[西]いま、それ言おうと思った。

[田]あんな勝ち方されたら、手も足も出ませんって。隣の枠でしたので、おぉ1番人気出遅れちゃったよと思いました。よし、これは着拾えると思ったのに、あんな勝ち方をされたらどうしようもないですよ。

[西]ルーラーシップが凄かったから印象が薄いけど、ゴールドシップもかなり出遅れたよね。でも、聞くところによると、普段から元気が良いらしい。引っ掛かったりはしないけど、馬場に飛び込んでいくみたい。レースのときに、内田さんは苦労しているしね。でも、勝つときはどんな状況でも勝つということだね。

[田]そういうことですよ。同じ負けるとしたら、外を回って負けた方がイメージが良いけど、個人的にはつまらない。

[西]そういうものか。

[田]外を回して負けた方が負け面が良いと言えば良いのかな。イメージが良いみたいです。

[西]力が足りませんでした、ということにはなるわね。

[田]でも、もし内を狙っていたら、何とかなったんじゃないかと思うんですよ、正直。もう少し上の着順に来ていたんじゃないかという思いは残ります。

[西]セコ乗りということで言えば、去年の函館記念で大野が内を突いて勝ったよね(トランスワープ)。それを評価する声は多い。


[田]あっ、ヤバイと思ったって、言ってました。前が開かないかもしれませんでしたからね。

[西]でも、あれで外を回したら間に合わないよね。

[田]間に合わなわなかったでしょうね。それこそ一か八かの勝負だったということですよ。

[西]函館は直線が短いということもあるのかな。

[田]あの馬、みていると内にモタれる癖があるように感じるんですよ。なので、恐らく外に出そうとすると逆に反発して、ブレーキとなるようなところもあるように思います。

[西]あっ、そういうところを感じるんだね。

[田]もし内にモタれるとしたら、わざわざ外へは持っていかないでしょうね。

[西]内に拘るということは、そこで勝負ということだよね。

[田]そこが勝負ですからね。詰まったときには仕方がないと腹くくりますよ。

[西]開けば好騎乗となるわけだからね。

[田]詰まって負けた馬がいて、次のレースで外を回して勝ったんですけど、個人的には内を突いていきたいと思うんですよ。内で詰まってしまったときに、外を回してほしかったと言われたときには、なるべく外を通るようにしようと思います。ですが、状況にもよりますし、詰まる可能性も高くなりますが、できるのならば内を通ることで勝ったり、少しでも上の着順に来る可能性も高くなるわけですから。

[西]4コーナーのコース取りというのは、それぞれの騎手によっての特色って出ない?

[田]上手い人たちはいろいろなバリエーションがあるから、わかりづらいんですよ。

[西]あっ、そうだね。

[田]大庭氏のように迷ったら内というように、絶対に内、あるいは外という癖が出る人がいます。そういう人がいてくれると、後ろにいて読みやすくなるわけですよ。

[西]そういうことだよね。

[田]大庭氏の内は絶対に開かないわけですよ。

[西]逆を言えば、大庭氏の外は開くわけだよね。

[田]そういうことですよ。

[西]この人に付いていけば、前が開くというような意識ってあったりするの。

[田]上手く捌く人と、強い馬は意識しますよね。

[西]捌くのが上手い人というのは、具体的にどういうことなの。

[田]4コーナーから直線に向かうときに、ベスポジにいるんですよ。


[西]ベストコースということなのかな。

[田]俺たちは人気馬に比べて少し脚がない馬に乗っていることが多かったりするので、直線を向いて前が開いたらラッキー、という感じなんですよ。それに対して、上手い人たちは強い馬に乗っていることが多いので、その時点で邪魔されることがないポジションにいるんです。全能力を発揮できて、これで負けたら仕方がないというところにいるんです。1コーナーから4コーナーまでの運び方が上手いんですよ。

[西]なるほどね。前、外国人騎手が○○さんはペース配分が正確だから付いていくというようなことを言っていたことがあるけど、そういう意識もあったりするの。

[田]そういうことはあるかもしれません。データを分析して逃げる人もいたりしますので、「この人が逃げるからこうしよう」というような意識はあるかもしれません。

[西]それをまた分析して、レースを運んでいくわけだよね。

[田]ローカル開催だと、何も考えずに逃げてくれたりするので、そこを狙ったりしていくわけですよ。

[西]なるほど。

[田]逆に、逃げない人もいますからね。

[西]あっ、そうか。

[田]逃げるのをあまり見たことがない人っていますよ。

[西]指示があれば行くのだろうけど、自分から逃げないという人はいるわ。

[田]それも特徴というか、個性ですからね。

[西]でも、騎乗のバリエーションの多さというのは大事だよね。

[田]とても大切です。わかりやすく説明しますと、ババ抜きをするときに、常にジョーカーを右隅に持っている人、どこにあるかわからない人との違いですかね。

[西]なるほどね。それが本場開催では、どこに持っているかわからない人たちのなかでババ抜きをしているということだ。

[田]自分の馬に脚があるときに、真横から前しか見ていない人って多いように思います。でも、実は敵は後ろにいたりするわけですよ。勝てる脚が残っているのに、早めに前を捕まえに行ってしまい、後ろに差されてしまうということになるわけですよね。

[西]後ろって、どうやって見ているの。

[田]見ないですけど、後ろにいると感じるんですよ。そのときは、まだ早いと思って、我慢するんです。

[西]田辺は見ていると、幾分遅く動くような感覚を覚えるんですけど。

[田]それでも勝つときは勝ちますからね。

[西]それはそうだよね。

[田]もちろん、いま入らなければ閉まってしまう、あるいはここで入らないとポジションが後ろになってしまうというところでは入っていきますよ。ただ、ペースによっては待っても間に合うときには待ちますよ。ましてローカルではなく、本場開催ですから、坂もありますし、直線も長いですからね。

[西]ローカルではそうはいかないわね。

[田]ローカルだったら、4コーナー先頭でも良いくらいですよね。

※以下次回に続く。今年から募集している西塚助手への「指令」は、まだまだ募集中です。上部リンクからお送り下さい!