高松宮記念挑戦のサクラゴスペルについて、尾関厩舎の助手3人が語ります
2013.3.21
西塚信人(以下西) 今日は、サクラゴスペルのオーシャンS制覇&高松宮記念出走祝賀対談ということで、二口勲調教助手、矢原洋一調教助手のお二人に来ていただきました。よろしくお願いいたします。
二口勲調教助手(以下二)・
矢原洋一調教助手(以下矢)よろしくお願いいたします。
↑右手前が二口調教助手、右奥が矢原調教助手。[西]毎日、顔をあわせているのに、いやぁ本当にやりづらい。尾関先生の次にいやかも(笑)。
[矢]先生は出演したの?
[西]まだです、まだです。二口さんには、『下克上日記』のときに西塚厩舎解散特集で出ていただきました。
[二]西塚先生の思い出話で盛り上がったときだよね。
[西]そう、そう。そう考えると早いですね。さっそくサクラゴスペルの話に移りますが、最初は、正直そこまで走りそうな感覚を覚えませんでした。
[矢]普通キャンターまでは、特別何か感じさせられるということはなかったね。
[西]一番最初の追い切りのことを覚えていますよ。そこまで僕が乗っていて、矢原さんに「恐らくまだ動けないはずですよ」と言ったんですよね。そうしたら、動いたんですよ。
[矢]動いたね。確か、ある程度行くように言われていて、半信半疑だったんだけど、楽に動いたんだよ。
[西]あっ、そうでしたね。あのとき、重賞を勝つと思いましたか。
[矢]走るとは思ったし、新馬戦は楽しみだと思ったけど、そこまでは想像しなかったというのが正直なところだね。
[西]新馬戦は行っていたのでよく覚えています。あのあとからですよね、他の厩舎にお邪魔するようになったのは。
[二]そうだね。
[西]読者の方々にご説明しますと、サクラゴスペルは厩務員さんや我々助手の制止を振り切って、他の厩舎に“お邪魔”することがあるんですよ。僕のときは佐藤全弘厩舎から動かなくなってしまいました。そういえば、あれから上がり運動は助手が乗って、厩務員が引くというスタイルになったんですよ。
[矢]そうだったね。あのとき、突然他の厩舎に入っていったんだよ。本当に突然だったからすごく驚いた。
[西]僕はゲート試験のとき気配はあったんですよ。だから、断念したんです。
[矢]あれ、二口さんが担当したんですよね。
[二]試験までは俺が乗っていて、試験は宏司(北村騎手)だったかな。
[西]それなのに、なぜか競馬では一度も騎乗する機会がないんですよね。
[二]新馬のときは宏司に他の厩舎の馬がいて、乗れなかったんだよ。
[西]そうでしたね。デビュー戦でノリさん(横山典騎手)が乗って勝って、2戦目が全く駄目だったんです。
[二]1600mで全く良いところがなかったんだよ。
[矢]突っ張ってしまって、進んでいかなかった感じだったよね。
[西]そのあと4着が2回続いたんですよ。
[矢]あれ、こんなはずじゃないのになぁという思いはありましたが、あの頃は半信半疑でしたね。
[二]個人的には、まだまだ上を目指せるはずだという思いだった。
[矢]そういう思いもありましたけど、レースぶりに不安を感じた部分も正直ありました。
[西]なるほど。突っ張って進んでいかないようなところがあって。
[矢]ここを乗り越えないと、上は目指せないな、と感じていました。
[二]そういう意味では、馬自身もあの頃が一番苦しかったのかもしれない。その後、北海道で滞在して調整したときに、精神的に大人になっていったんだよ。
[西]函館の後に放牧に行って、帰ってきてから随分と大人びた感じはありました。
[二]いや、函館だよ。あそこで本当に大人びた印象を受けた。よほど水が合ったのかな。何の問題もなく、順調に調教することができていた。
[矢]函館のときに、大人びたと二口さんが言っていたよね。
[西]一緒に滞在していた二口さんが言うんだから、そうなんですけど。僕たちとしては知らない函館ということで、なおさら他の厩舎にお邪魔したりするんじゃないかと心配していたんですよ。
[二]あの北海道での滞在調整は、ゴスペルにとって良かったと思いますよ。
[西]帰ってきてから新潟で勝ったんですよね。
[矢]マユちゃん(黛騎手)が乗って勝ったんだ。確か、馬場があまり良くなかったんだよ(重馬場)。
[二]この馬、意外な印象もあるけど、馬場が悪いのは上手。
[西]マユちゃん、ワンチャンスを見事に掴んだんだ。勝っても負けても、この1回だったんですよね。
[二]しっかりと決めてくれたよね。
[西]そのあと1000万円になって三浦で負けて、次でノリさんで勝っているんですよ。このあたりはどうでしたか。
[二]ノリさんで勝ったレースは強かったよね。個人的には印象に残っている。
[矢]ちょうど充実していっていたよね。
[西]休養から帰ってきて、跨がった感じも落ち着いて、どっしりとした感じで、大人になっている印象がありましたよ。最近は二口さんが付きっきりですけど、追い切り以外は結構僕も跨っているんですよね。
[二]その後のレースも強かったよね。
[西]岩田さんで勝ったときだ(昨年の雲雀S)。
[矢]ピッタリ差し切ったときだよ。
[二]ノリさんが他に頼まれていて、岩田騎手になったときだ。あのとき、間に合わないと思ったよね。
[西]思いました。
[二]鞍上にそう言ったら、「余裕ありましたよ」と言われたんだよ。だから、まだ伸びしろがあるというか、もっと上へいけると思ったんだよね。
[西]調教では追い出されると沈んで、弾けるというような感覚はあまり感じないんですよね。
[矢]攻め馬では抜け出すと、フワッとしたりするところがあるけど、競馬では全くないし、本当によく伸びてくる。競馬に行って良いタイプということなんだろうね。
[西]そして昨年の高松宮記念(9着)ということになるんですが、あの時点では善戦と言って良いでしょう。
[二]確かに馬は頑張ったけど、入れ込んでしまっていたからね。
[西]まだ成長途上ということだったかもしれませんよね。そこから春、京王杯スプリングSに出走して、秋になって戻ってきたときには、また一段と良くなっている印象がありましたよね。復帰戦はアンラッキーな面があっての12着(白秋S)でした。
[二]ノリさんも「ハナへ行っていれば」というような話をしていたんだよね。
[矢]次のレースはハナに行って楽勝でした。
[西]そこから1200mのOPラピスラズリSということになるんですけど、あまりイメージがなかったということはありませんか。1番人気とは言え、4.8倍と押し出された人気という感じもありましたが、僕自身はそれなりに対応してはくれるだろうと。
[矢]1200mでも走るとは思ったけど、やはり一番は東京の1400mという印象はあるよね。
[二]1200mは函館で経験して、2着だったんだよね。
[矢]中山の1200mはどうなのかなという思いはあったかな。右回りだしね。
[二]ただ、函館のときには展開が向かなかったし、やれると思っていたよ。まあ、確かに中山というと、3歳時に黄梅賞(10着)で惨敗したときのイメージは残っているんだよね。
[西]結局は何事もなく勝って、再び同じ中山1200mのオーシャンSとなりました。正直、どのくらい自信ありました?
[矢]自信というよりは、相手はダッシャーゴーゴーだと思っていたよ。前走(シルクロードS)で59キロを背負って2着でしたし、向こうは軽くなって同じ56キロでの戦いだけに、どこまでやれるのかと。
[西]そういう感じですよね。デキに関しては、順調に来ていて、何も心配するところがなかったので、僕はどこまでやれるのか楽しみでした。
[二]ノリさんにも言われたけど、最近は競馬に行って本当に落ち着いているんだよ。
[西]でも、オーシャンSの日は風が強かったんで、心配しましたよ(笑)。
[二]それが、落ち着いていたからね。大人になったんだよ。
[西]読者の方々にお話をしておくと、以前は風が強いと気にしてしまってね。
[矢]調教では今でも気にするね。
[西]あれは、風というより、風によって坂路の壁から聞こえてくる音が駄目なんだと思いますよ。それ以外は気にしていない感じがしませんか。
[矢]そういうところはあるかもしれないね。
[西]そんなことを言っていたら、ダッシャーゴーゴーに勝っちゃいました。ちなみに、僕は次のレースに出走するコスモシャンハイを引いていて、勝ったかどうかわからなかったんです。結局、確定した払い戻しを見てわかったんですよ。
[矢]中山だと電光掲示板にレース映像が映し出されるわけでもないし、実況もいまひとつ聞き難いよね。
[西]そうなんですよね。これで、いよいよ高松宮記念ですよ。僕はブッチャけ、チャンスだと思っています。
[矢]ここはまさに勝負だよね。
[二]関東で言えばサンカルロもいるし、他にも強い馬たちが揃うし、ロードカナロアもいるし、さすがはG1。それでも、ゴスペルも勢いに乗ってきている。
[西]そしてモンストールもいます。
[矢]一番の相手はモンストールだね。
[西]そうですよ(笑)。ところで、ロードカナロアは去年の方が強かったとか思いませんか。
[二]いや、今でも強いよ。
[矢]あの馬は確かに強い。
[二]香港のスプリントを勝っているのは凄いよ。あのレースは、日本馬がなかなか勝てなかったわけだし、毎年レベルが高い。そこで勝っているんだから、やはり伊達ではないよ。
[西]それでもダッシャゴーゴーを物差しとするならば、挑戦者として楽しみはありますよね。
[二]もちろんそうだよ。楽しみだよね。
[矢]色気は十分でしょう。
[西]我々3人、それぞれ役割分担があります。厩務員さんも含めて、それぞれがしっかりとやることをやって送り出すことだけを考えて頑張りましょう。
[二][矢]そうだね。
[西]あの馬、矢原さんのことをわかっていますよね。今日、やるんだろ的な雰囲気を感じさせますよね。
[矢]それはある。「今日は追い切りだろ」って感じがする。やはりあの追い出してからの加速は凄い。一気にトップギアに入る、あの感覚はレベルが違う。
[二]モンストールも走るけど、ちょっと違うよね。
[西]いやぁ、本番が楽しみになってきました。去年とは明らかに違いますよね。
[二]それは間違いないね。
[西]G1勝ってみたいです。
[二][矢]そりゃ、勝ちたいよ!
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