何もかもが初体験だった、フランス遠征秘話
2013.4.11
西塚信人調教助手…以下
[西]田中博康騎手…以下
[田][西]そういえば、フランス語は話せるの?
[田]だいぶ話せていたんですけど、いまは厳しいですね。
[西]英語ならば多少聞いたことがあったりするけど、フランス語はあまりなかったんじゃないの? それこそ、オレンジジュースを飲むことさえままならない感じだったりしたのかな。
[田]本当にそうでした。
[西]「オランジーナって言うんですか」的なノリでしょう。
[二人](笑)
[田]オランジーナですね。
[西]勉強して行ったわけではないでしょう?
[田]もう、現地で聞きながらでしたね。
[西]ベルギー以外で行った国は?
[田]イギリスですね。グランプリボスが遠征したときに、ロイヤルアスコット開催を観戦してきたんですよ。ニューマーケットで調教だけ乗せてもらいました。
[西]他は?
[田]あと、このサラブレモバイルにも掲載されているアイルランドの児玉先生から、一度依頼をいただいたんですが、ビザか保険が間に合わなくて、乗ることができなかったんですよ。
[西]あー、児玉さん、児玉さん(笑)。いやぁ、乗れたら良かったのにね。
[田]折角、声をかけていただいたんですが、乗りたかったです。
[西]最初に勝って、そこから結構乗っていたイメージがあるけど。
[田]前半は乗せてもらえませんでした。最初に勝てて、その馬でたくさんチャンスをいただけましたし、そのお陰で他の馬にも乗せていただくことができました。ただ、お世話になっていた厩舎の馬に乗せてもらえなかったので、次の厩舎は自分で紹介文を書いて、営業をかけて決めたんですよね。そこでは結構乗せてもらえました。
[西]2番目の厩舎はどういう厩舎だったの。
[田]セドリック・ブータンという厩舎で、スミヨンの師匠にあたる人です。
[西]凄いじゃないの。
[田]あの厩舎にお世話になって、カルチャーショックを受けましたし、馬、競馬に対する考え方が変わりました。
[西]どういうこと?
[田]中3日で競馬が当たり前という感じで、出走させるんですよ。
[西]えっ、中3日。
[田]そうなんですよ。馬の扱いなんかも違います。
[西]どう違うの?
[田]うーん、どう言葉で説明すれば良いかなぁ。使い方は激しいですが、馬には優しいという感じですかね。それでいて、馬の食べ物は質素なんですよ。
[西]えっ、そうなの。
[田]燕麦しか食べていない感じですよ。
[西]飼い葉とかも自分で博康がやっていたの?
[田]あちらは全部自分でやりますね。ただ、担当制ではなくて、厩舎のみんなで一緒にやる感じです。リヤカーを引きながら、こいつはこのくらいというように。競馬学校みたいな感じですかね。
[西]なるほどね。手入れもして。
[田]はい。
[西]所属騎手はみんなそうなの?
[田]日本にも来たことがあるマキシム・ギュイヨンは、アンドレ・ファーブル厩舎の所属なんですが、毎日調教に乗って、厩舎作業をして、そこから競馬に行っていましたよ。
[西]それは凄いね。
[田]素直に凄いと思いました。マキシム・ギュイヨンはリーディングトップスリーの1人。日本で言えば、ノリさんとかが毎朝調教に乗って、厩舎作業をして、そこから競馬に行くようなものですよね。それが自然で、当たり前だったりするんです。
[西]日本とはシステムが違うし、環境も違うんだ。いま日本でフリーとして頑張っているわけだけど、フランスでの環境が恋しくなったりしない?
[田]そういう感覚はあるかもしれません。競馬はありませんが競馬学校ではやっていたわけですからね。
[西]レースに移動するときはどうしていたの。自分の車?
[田]セールとかでも有名なドーヴィルあたりは自分の車で行っていました。2、3時間なので。
[西]道とかわかった?
[田]必死に覚えましたよ。ナビもあるんですけどね。
[西]標識はもちろんだけど、ナビの案内はフランス語?
[田]もちろんですよ。
[二人](笑)
[田]ただ、パリの町は迷路みたいで苦労しました。サンクルー競馬場は苦戦しましたね。
[西]サンクルー競馬場はパリの市街にあるの?
[田]サンクルーとロンシャンは、パリの町から20分くらいなんで、すぐに行けるはずなんですが、苦労しましたね(笑)。
[西]ところで話は変わるけど、博康のことは随分前から知っているし、ずっと見てきたわけだけど、フランスから帰ってきて変わったなぁと感じるんだよね。
[田]えっ、そうですか。何も変わっていませんよ。
[西]いや、たくましくなったというか…。なんて言えば良いのかわからないけど、以前は吹っ切れていないというか、内に秘めて考えているような雰囲気があったんだよ。
[田]そうですかね。
[西]小倉で悩んでいたのを覚えてる。
[田]あっ。そんな勝っていないときではなく、わりと勝てていたときですよね。
[西]そう。
[田]乗り鞍も乗せていただいていて、流れも悪くなかったと思います。
[西]そうなんだけど、それを田辺がまた構うわけですよ。
[田]そうでした。
[二人](笑)
[西]そういう雰囲気がないんだよ。
[田]言われてみればそうかもしれません。
[西]厩舎スタッフに対する接し方も、よりフランクになったと思う。
[田]そうですかね。
[西]競馬を見て、これはフランス仕込みだとかそういうのは感じないけど、人として良い意味で変わったと感じるんだよね。
[田]あまり自分では感じていないかもしれません。でも、行って帰ってきてからの半年間ぐらいは、結構行き詰まっていました。
[西]えっ。勝てなかったとか。
[田]競馬も勝てませんでしたし、乗り鞍も多くありませんでしたので、焦りがあったんですよ。それと、海外へ行ったからといって状況が変わるとは思っていませんでしたが、海外へ行ったのに結果が出せませんでしたからね。夏ぐらいかな、かなり酷かったです。
[西]確かに勝っていなかったよね。
[田]3月に勝たせてもらって、5月にも勝たせてもらったんですが、その頃は精神的に苦しかったです。
(来週に続く)
※西塚助手への「指令」も募集中。田中博騎手との対談の後は、西塚助手が皆さんからの質問に答える回を予定しています。上部リンクからお送り下さい!