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G1を勝つときは、実力だけでなくさまざまな要因が絡むもの
2013.5.30
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松岡正海騎手…以下[松]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]よくウチの親父が、「逃げ馬は追い込み馬になる、追い込み馬は逃げ馬になる」とか言っていたなぁ。

[松]逃げ馬は追い込み馬になるけど、追い込み馬は逃げ馬にはならないよ。行こうと思っても行けない。

[西]なるほどね。よくファンだけでなく、我々のなかにも「もっと前に行ってりゃ良いのに」という声があるよね。ひょっとしたら、松岡自身も騎手になるまでは、「もっと行けよ」とか思っていたかもしれないけど、実際乗ってみて、行けない馬は行けないものなの?

[松]行けない、行けないよ。行こうと思っても、進んでいかない。

[西](笑)

[松]たとえ行けたとしても、最後バタバタになってしまったり、味がなくなってしまったりする。体型的なことで言うと、やはり行けない馬の体型がある。

[西]あっ、そう。具体的には?

[松]そういう馬の多くは、背中、キ甲の終わりから腰角にかけてが短かったりする。背中を上手に使うことができず、四輪駆動で走ることができない。逆に、行ける馬というのは背中が長いよ。

[西]そうなんだ。やはり、体が使えるか、どうかということなんだろうね。

[松]それを運動神経の良さが補ってしまうということもあるんだけど、体型を見るとだいたいは把握できる。

[西]また、行かせると味がない馬というのはいるよね。また、G1となると違うんだろうしね。

[松]G1はペース云々とかではなく、競馬そのもののがキツイ。ファンファーレなど雰囲気も違ったりするし、馬自身もキツくなる。

[西]フェブラリーSでエスポワールシチーに騎乗したときにもそんなこと言っていたね。

[松]ペース云々とかでなくて、いかに自分の競馬ができるかということが大切。ペースが遅いからといって、前で競馬をしたところで通用しないんですよ。

[西]なるほどね。

[松]ノリさんも同じことを言っていた。その日に少し前が残るとか、ペースが遅いからと前へ行ったり、逆に速いから後ろから、というのでは勝てないんだよね。それは本当にそう思う。

[西]ここまでG1は2つ勝っているよね。コイウタ(07年ヴィクトリアマイル)とマイネルキッツ(09年天皇賞・春)なんだけど、それぞれどうだったの?

[松]コイウタのときには、3回チャンスがあった。2回でどんな馬なのかを掴んで、低迷していたこともあって、新たな一面というか、切っかけみたいなものが欲しいと思っていたんですよ。それで東風S(13着)のときは前で競馬をして駄目で、ダービー卿のときには控えて違う競馬をしたことで2着に来て、「あっ、これだ」と思った。競馬が上手過ぎる。良い位置で収まって競馬ができるんだけど、そこで馬がやめてしまうようなところがあった。


[西]そういう部分は、簡単じゃなかったりするよね。

[松]攻め馬も変えてもらいました。山(坂路)を1本上がってから、ウッドで64くらいのところを2週続けてやったんだよ。そうしたら、馬がガラリと変わってきた。

[西]あっ、そういうことがあったんだ。ちなみに、なぜそこで速いところをやりたいと思ったの?

[松]踏ん張りが足りないという感覚があった。東風Sで前に行って競馬をしたときに伸びて走っていて、踏ん張りが足りないと思ったんだよね。気持ちの問題もあったけど、坂路だけでは足りない感じで、むしろフラットで少し行きたがるくらいでちょうど良いんじゃないかと思ったんですよ。

[西]レースではこういう競馬をしよう、と思っていたの?

[松]決めているわけではなかった。とにかくデキが良かったので、悔いのない競馬をしようと思っていたね。

[西]内が開いていたよね。

[松]その前までのレースで内を通っていて、どこが良いとか悪いとか分かっていたんですよ。良いところ2頭分くらいのところが開いていたんで、迷わずそこを進んでいった。馬場にも、展開にも助けられたという面はあったけど、勝てて良かったと思ったことを覚えてる。

[西]マイネルキッツもインコースが開いたよね。

[松]その前に日経賞で2着だったんだけど、よく掴むことができた。それまで2000mを中心に出走していて、踏み遅れるようなところがあって。端から見れば流れに乗れているようにみえるんだけど、こちらとしては乗れていないという感覚だった。ロスの少ない走りをするし、距離を延ばすことに関しては問題ないし、むしろ良いはずだと思っていたんですよ。まあ、500mなら、人間に置き換えればそこまで違いはないですから。

[西]馬にとってはそこまで変わりはない、ということだよね。

[松]人間でも、100mと200mではボルトみたいな選手(注:北京、ロンドン五輪で100m、200mを連覇)もいるけど、普通はそれぞれ勝つ人間が違ってくる。もっと言えば、400mとなると、それこそ走る選手さえ違ってくるでしょう。

[西]100mと200mは2冠とかあるよね。

[松]そこは2000mと3000mの違い、という感じだろうね。

[西]話を戻すと、マイネルキッツは自信あったの?

[松]やれるとは思っていた。ただ、それこそテンが行けないので、どこかペースが落ちたところで上がっていかなければならないと思っていたんです。そうしたらちょうど13-13くらいのペースになったときに内が開いた。

[西]道中で動いて行っていた印象がある。

[松]ただ、あくまでペースが落ちたのに対して、こちらは一定のペースで走っているだけで、脚を使ったということではないんだよね。

[西]G1を勝つときというのは、上手くいくという部分もあるのかな?

[松]そういう部分もあるよね。レースが終わってみると、自分も良いところにいる。

[西]なるほど、なるほど。逆に、あと少しで負けてしまったサンツェッペリン(07年皐月賞②着)やマイネルチャールズ(08年皐月賞③着)はどんな感じだった?


[松]サンツェッペリンのときは、もう必死に乗っていただけという感じだった。

[西]先程、いかに自分の競馬をするかという話をしていたけど、そういう点ではできていたと思う?

[松]レースだけというのではなく、いま出会っていたら、こういう風になっていくように接していた、というように思いますね。

[西]点ではなく線でみるということなんだよね。逆に言えば、そのときは2着だったけど、いまはもっと良い結果となるばかりでなく、むしろそれよりも悪い結果となる可能性だったあるわけだよね。どこまでいっても結果論でしかないんだけど。実際、人間は経験することで成長するとされるんだけど、若いからこそできて、経験とかが足を引っ張るということもあったりする。

[松]そうあってはならないとは思っています。いまならば、もう少し上手く乗れたとは思う。皐月賞もダービーも、みての通り途中からハナを奪われる形となっている。掠め取られる形となったことで、あの馬自身のやる気をなくさせたんだと、その後思ったりするんです。今だったら、絶対にハナを譲ることなく、主張していくよね。

[西]競馬に向かうことでたくさん経験をして、より良い技術だったり、対応方法を学んでいるわけだけど、ことレースにおいては一瞬の判断が求められるわけだよね。マイネルチャールズはどうだったの?

[松]あのレースだけを考えれば、そりゃ前に行きたかった。ただ、次にダービーが待っているし、さらに将来もあるわけだし、パドックで陣営とそういう作戦で、ということになりました。

[西]そう考えると、G1は強いから勝てるということではないんだよね。

[松]間違いなくそうだね。ただ、それは競馬のすべてがそう。もちろん強い馬が強いレース内容で勝つこともあるけど、実力だけではなく、様々な要因が絡みあっているのが競馬でしょうね。

[西]いまの厩舎にきて、何度かG1を経験させてもらってみて、初めてわかったこともあるし、勉強させていただいています。

[松]日本のG1は頭数も多いし、ヨーロッパのようにペースメーカーがいるということもないので、より勝つのが難しいよね。

(来週に続く)

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