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これからやってくる夏本番…“夏負け”とどう付き合うか?
2013.6.20
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今週になって、ジメジメした梅雨らしい天気が続いていて、いよいよ夏が近くなってきたと感じます。

この時期といえば、夏負けが話題となります。今回は編集部より、「夏負けについて現場の印象、対処法などを教えてほしい」とリクエストが来ましたので、お答えしたいと思います。

実は、まだそれほど「夏負けの馬が増えた」という感覚はありません。ただ、蒸し暑い日が続くと、馬房のなかもジメジメとした空気になりますので、人間同様に馬も体力を奪われるなどの影響を受けるでしょうね。

夏負けの特徴として、目の周囲が黒ずむ、牡馬の睾丸が大きく腫れ上がるなどが知られています。

さらに、実際携わっている側としては、食欲や水の摂取での変化からも感じたりします。残さず飼い葉を食べる馬が僅かに残してみたり、食べるスピードが落ちたりするんですよ。

水はたくさん飲む馬もいますが、逆にバテでしまって飲めない馬もいます。

それ以外の兆候としては、いつもは素直に馬場に入っていく馬が突然嫌がってみたり、坂路に向かっていっていたはず馬が突然突っ張って嫌がってみたり、普段は何事もなく通っている道なのに、嫌がる素振りをみせはじめたりするんですよ。

食欲不振で、明らかな夏負けというのであればわかります。でも、その手前、兆候の段階だと、調教に跨がっただけで、その動きや走りなどからはなかなか把握できないものなんですよ。

確かに、人間でも息が上がるように、普通キャンターでの息使いが何となく良くないとか、鼓動が激しいということはあります。しかし、乗ったときの動き、あるいは体を見ただけで判断するのはとても難しいですよ。

あくまで、嫌がる素振りだったり、元気がなかったりというような反応から推測していくことが、夏負けを把握するきっかけとなる、というのが正直なところでしょう。

実際、各厩舎では、扇風機、換気扇を使用することで風通しの良い状態を保つようにしたり、ミストを散布したり、エアコンを使用したり、断熱材を屋根に敷き詰めることで温度上昇を抑えたりと、様々な対応策を取っています。

ちなみに、我が尾関厩舎では、ミストと屋根に断熱材を取り付けることで対応していて(下写真)、多少なりともひんやりとしています。


昔は、氷柱を立てて風を送ることでひんやりとさせるということもありました。僕の子供時代には、確かにありましたよ。でも、いまは氷柱が高価であるということもあって、ほとんど見かけません。

水浴びもやりますよ。ただ、やり過ぎると、皮膚が炎症を起こすというか、肌荒れを起こしてしまうことがあるので、暑いからといって水をかけ続けることはできなかったりするんです。

それ以外に、飼い葉に電解質のサプリメントを混ぜたり、塩を多めに入れたりして水分補給を促し、新陳代謝を促進するという対応もしています。

厩舎によっては人間のスポーツドリンクのように、サプリメントを水に混ぜて飲ませているところもあるようです。

それと、調教時間を短くしたり、涼しい時間に乗るようにするとか、あるいはレースとレースの間で余分に時間をかけるというような対応を馬によってしています。

とは言うものの、たとえば未勝利馬たちは、時間的な制約がありますし、適性のある番組を優先しなければいけない状況も生まれてしまいます。

それぞれの馬に対して、様々な対応策を取りながら、そうならないようにやってはいるのですが、それでも負ける馬は負けてしまうんですよね。

夏負けをしてしまうと、回復に時間を要してしまいます。我々としては、そうならないように、注意深く観察しながら様々な対応をしていくしかないのです。

もちろん、我々人間側の意識として、ここからの時期は気をつけますので、発見できる確率も高くはなります。

でも、ブッチャけさせていただきますと、ファンの方々がパドックで見極めるのはとても難しいと思います。

睾丸が腫れる、目の周囲が黒ずんでいるというのは、夏負けとしては相当なレベルだったりします。冗談かと言われるかもしれませんが、黒鹿毛の馬は目の周囲の黒ずみからは判断しづらいわけですよ。

ただ、夏負けによって能力発揮に影響を及ぼすケースは少なくありません。それをファンの方々が見て判断することは難しい。では、どうすれば良いのかということになります。

当たり前ですが、夏負けは気温の上昇以外にも、湿度の上昇、それぞれ馬の体質や体調などの因果関係もあります。

その中でひとつの例を挙げると、これから始まる夏の新潟開催があります。

ある先輩に“夏の新潟では、1回の競馬が普通の競馬を2回走ったくらいの疲労がある”と言われたことがあります。熱中症で倒れる馬がいるくらい、夏の新潟は暑いんです。

さらに、後がない未勝利馬たちはここまでも戦い続けてきているわけで、程度の差こそあれ、その疲労が蓄積していると想像できますよね。

実際、それまで2着、3着と力のあるところをみせながら、夏の新潟では凡走してしまうレースが多いように感じます。

ファンの皆さんの場合、馬券検討の上で夏負けはファクターのひとつになってくるのでしょう。1回の競馬が普通の2回の疲労に匹敵するという言葉を思い出して、連戦してきている馬は疲労が蓄積している可能性がある、というような意識でいてもらっても良いのではないでしょうか。

これからが夏本番ということで、馬の夏負けとともに、皆さんもどうか体調管理に気をつけてください。

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