人気復活のために、競馬を「モテるためのツール」にするべき!?
2013.8.1
大竹正博調教師…以下
[大]西塚信人調教助手…以下
[西][西]ひとつ質問なのですが、ファンサービスです。先生は、ホームページをはじめ、面白いファンサービスを行われています。
[大]ホームページはいま工事中なんですよ。
[西]あっ、それは失礼しました。読者の方々にもご覧になっていただきたいと思うのですが、例えばAKB48を競馬場に呼ぶというのもファンサービスのひとつだと思います。違うと言われるかもしれませんが、我々のノビーズの活動もファンサービスのひとつだという意識でもあるのです(笑)。先生はファンサービスの展望というか、可能性についてどう考えていらっしゃいますか?
[大]公正競馬を確保するためにということで、JRAとしてはファンサービスをやりたいと思いつつも、接点が生まれることは歓迎しないというか、ある程度の距離を保ってほしいと思っているような雰囲気を感じます。ただ、携わっている馬についてはいくらでも話をしてよくて、比較してはいけないということなのですが、我々がどう思っているのか話すこともファンサービスになるんじゃないでしょうか。
[西]公正確保という言葉が防波堤となっている印象はありますよね。それ以外では、ファンの方々が、馬に乗ったり、触ったりする機会が少ないと思うんですよ。
[大]底辺拡大を図るということでは、そういう機会を増やしていくことはとても大切ですよね。
[西]いま、競馬学校の厩務員課程だけでなく、騎手課程も志願者が減っているといいます。
[大]引退した騎手の復帰に関する規則について、報道がありましたよね。
[西]ありました。
[大]そういえば、話が変わるのですが、東京で
ホープフルジョッキーズ(5月26日東京5R)が行われましたが、落馬負傷してしまった杉原に替わって、ノビーズの一員である松岡が乗っていましたね。
[西]乗っていましたね(笑)。
[大]あれでもっと年配の騎手が乗っていたら、もっと笑えたのにね。
[二人]はははは。
[西]ただ、あれ確認したら、
「30歳未満でお願いします」と言われたらしいんですよ。
[大]そんなルールあったの?
[西]ヤングなんで、ということらしいですよ(笑)。
[大]ははは(笑)。
[西]あそこで、木幡さんとか善臣さんとか乗っても良かったんじゃないかと思いませんか。熟練の技術が発揮されるわけですから。
[大]敢えてそちらですか(笑)。
[西]保護者くらいの年齢差があるわけですからね。松岡も『こんな新人いない』と言われていました(笑)。さて、話を戻しますが、ファンサービスということで言えば、スターホースの存在は必要不可欠ですよね。
[大]ハイセイコー、
オグリキャップと、歴史を振り返ると、世間において競馬の存在感を増したのは、いわゆる反主流というか、アウトロー的なスターホースの存在なんですよね。
[西]そういう意味では、今年のダービーは盛り上がりましたが、勝った
キズナは震災の存在に加えて、以前とは違う状況となっている武豊騎手の存在は大きかったのではないでしょうか。
[大]国歌斉唱が西田敏行さんだったので、
キズナだって言っていた記者もいましたよね(笑)。
[西]あ、福島出身ですものね。
[大]今回のダービーを見て、勝ってほしいというか、勝ったあと「良かった」と思う人たちが多い馬が勝つのか、と思いました。そういう思いが馬に伝わって勝つのかなぁ、と思いながら見ていました。
[西]豊さんの存在は、日本競馬にとっては計り知れないくらい大きいということを再確認させられました。
[大]あの人が勝つと勝負の上をいくんだよね。
[西]競馬が好きな人と、全く知らない人への宣伝というのは当然違うわけですよね。例えば、競馬を全く知らない人たちというのは、
キズナの意味だったり、豊さんが以前とは違う環境に置かれているということはわからなかったりするわけですよ。でも、
ハイセイコーや
オグリキャップは名前を聞けばわかる人も多いと思うんです。そこにはメディアの力による戦略があったはずなのですが、もう少しそういうアピールをしても良いのではないでしょうか。
[大]メディアにおける競馬の位置というか、ランクが下がっているということは否めないと思います。
[西]それと若い人たちのなかで競馬をやる人口が減っているように思います。
[大]そもそもの話ですが、いまの若い人たちの間では、どういう男がモテるのかなぁ。
[西]そういう話になりますよね。
[大]博打を打つということもモテる要素だったはずですよね。
[西]飲む、打つ、買うという言葉がありますしね。
[大]打つというのは博打を意味するわけですけど、そこに男を感じた時代があったんですよ。その危なさというか、危険なところに惹かれたりしたわけですよね。
[西]凄い観点ですね。
[大]男の判断基準のなかで、モテるかモテないかという大きいはずですよ。昔バンドをやっていたのも、レコード回していたのも、いかにモテるかということを考えていましたよね。
[西]わかります。そうなると、「モテる」と「競馬」のリンクとなりますよね。
[大]だって、競馬やっていたらモテるとなったら、それだけで盛り上がるんじゃないのかな。
[二人](笑)
[西]でも、わかります。
[大]どうなのか。女性の方も価値観が変わってしまっているのですかね。
[西]保守的になっているのかもしれません。
[大]そういう意味では、社会全体の価値観が変化してしまったということはあるでしょうね。バブルと呼ばれる時期、学生だったんだけど、あの当時のギラつき感とか、欲望みたいなモノがなくなってしまっていますよね。
[西]あの当時でいえば、DCブランドが流行したと言われていますが、いまはユニクロが人気なわけですよね。
[大]懐かしいね(笑)。
[西]良いか、悪いかは別にして、見栄を張るということがなくなった気がします。
[大]モテようという意識が強かったように思います。いまの時代、それがなくなってしまったのかはわかりませんが、当時の男の行動原則はリビドー(欲求、欲望や、それが生み出す力のこと)でしたよ。
[西]うははは。リビドーですね。今日の答えとして、大竹先生に
『西塚君、君はリビドー不足だよ。もっとリビドーを持たないと調教師試験に合格しない』と言われたということにしましょう。昔、清原選手が、“プロ野球選手は赤いスポーツカーに乗って、球場に来てホームラン打って、夜遊ぶものだと思った”という話をしていました。
[大](笑)。でも、本当にそういう側面はあるとは思う。競馬だけでなく、どんな分野も飽和状態というか、いまの時代は突き詰めていっていて、拮抗した争いのなかで頭ひとつ、どうにかして出ることが勝負をわけるというような世界になっているので、なかなかそうはいかないのかもしれませんよね。
[西]そういう閉塞感というか、大らかさが感じられないということは、競馬の世界に限ったことではなく、社会全体に言えることなのでしょうね。
[大]そういうことでしょうね。
[西]リビドーの話に戻ってしまいますが、性的な欲求が薄くなっていますよね。
[大](笑)
[西]ちょっと待ってください(笑)。目が覚めましたよ。例えば、高校生が甲子園を目指して頑張っているのは、リビドーの一歩手前というか、目立ちたい、モテたいという思いが少なからずそこにはあったはずです。でも、いまの時代は、現実的な話だったり、技術面の話の方が重んじられる傾向が強くなっていますよね。
[大]言わんとしていることはわかりますよ。
[西]昔、高校野球と言えば、延長戦になっても、連戦になっても1人で投げ抜いたわけですよね。また、そこに美学があるとされてきました。でも、いまでは、2人いるのが当たり前。プロ顔負けの継投策があったりします。良い悪いは別にしてそれが現実ですよね。競馬だって、
ダイタクヘリオスが
有馬記念で逃げた時代があったんですよ。
[大]昔の使い方は不思議でしたよね。マイルでも、2500mでも、あるいはG1で連闘したのですから。
[西]ナリタブライアンが1200mのG1を走ったんですよ。
[大]いまの時代は絶対に無理ですよ。もし出走したとしても凡走してしまいます。競馬の質が変わりましたし、それだけレベルが高くなっていますよ。
[西]世界的にもそういうケースは減ってきているんでしょうね。
[大]フランケルとかどうなんだろうね。ニュータイプなのかもしれないよ。
[二人]ははは。
[西]先程の話ではないですが、突き詰めていったからこそ、マイルならばマイルに専念しなければ勝つことができないレベルになったということなのかもしれませんよね。そうは言っても、個性的な馬がいなくなりました。
ダイタクヘリオスとか、印象に残っていますよ。
[大]サブタイトルが付くような馬がいなくなりましたよね。そういうタイトルを付ける記者の方々もいなくなったのかなぁ。
[西]そういうこともあるのかもしれませんよね。あと、そういう極端な戦法を武器とする馬も少なくなってきたのでしょう。
(来週に続く)
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