いろいろな種類がある矯正道具は、使用法、効果もいろいろ
2013.8.22
新潟もあと2週となりまして、もうすぐ秋競馬となりますね。
さて、今週は何人かの方から、
シャドーロール、
ブリンカー、
メンコといった
矯正道具について質問をいただきましたので、お答えしたいと思います。
先に挙げた以外にも、
チークピーシズや
ホライゾネット、馬のオデコにシャドーロールやチークピーシズのようにフサフサのものが付く、
ブローバンドあたりがメジャーです。
効果については、シャドーロールは下の視界を遮ることで集中力を高める、逆にブローバンドは上の視界を遮ることで、立ち上がることを防止したり、あるいは頭をあげてしまう馬に対して、集中力を高めるという効果があると言われています。ちなみに個人的には使ったことがありません。
またブリンカー、チークピーシズ、そしてホライゾネットも、視界を制限することで集中力を高める効果が期待できるとされています。
ホライゾネットは、
サクラゴスペルがパドックだけ装着しています。この理由は馬っ気防止なんです。他の馬からの刺激を遮断、あるいは軽減するためでした。
それ以外に、引っ掛かる馬に対して、視界を奪うことで進んでいかないという効果を期待して装着したことがありました。でも、これは効きませんでしたね(笑)。
そしてもうひとつ、ポピュラーな矯正道具がメンコです。
メンコのなかには、耳の部分に皮などでカバーが付いているタイプ(写真下)があります。カバーによって音が遮られることから、よくうるさい馬をおとなしくするために装着すると言われたりもします。
実際、音に敏感に反応して、調教に集中できない馬たちに対して効果があったりします。
また、集中力が散漫なタイプの馬に集中させる効果を得ることができることもあるんですよ。ブリンカーに近いとも言えるかもしれません。
あと耳の部分がないタイプもあります。これについては、ダートで砂を被ると嫌がる馬たちに効果があると言われています。
これらの矯正道具のほとんどは、集中力を高める効果を求めているものです。
そこで我々、道具を使う側としては、何によって馬の集中力が削がれてしまう、あるいは散漫になってしまっているのかということを見極めなければなりません。
音、それとも他の馬を気にするのか、あるいは走っているときに見える影なのかというように、それぞれを見極めた上で、それぞれに効果が期待できる矯正道具を使うようにしなければならないのです。
ただ、僕の少ない経験のなかではありますが、すべての矯正の道具を装着したからといって劇的に変化した経験はありません。
それは恐らく、競馬、つまりレースで騎乗していないために、効果を感じることができないということはあると思います。
調教から競馬を通して騎乗していなければ、その変化を実感することができないはずです。
逆に言えば、テン乗りで初ブリンカーということになれば、騎手だって見た目でしか比較ができませんので、その変化を実感することはなかなか難しいはずですよ。
例えば、ハミを取っていかない馬がいたとします。
そんな馬が、あるレースでは外々を回らされたのに対して、次のレースではブリンカーを付けて出走し、馬混みの中で終始ハミを取って走っていたとすると、それがブリンカーの効果なのか、馬混みの中でレースができたからなのか。それは一概に判断できないと、僕自身は思っています。
うちの厩舎で言えば、
レッドシュナイトがブリンカーを装着してレースをしていますが、調教ではその効果について劇的な変化を感じることはありません。装着のビフォー、アフターでそこまでの変化はありませんでした。
ただ、耳つきのメンコだけは、調教において、装着のビフォー、アフターで、変化を感じることがあります。物見をする回数が減ったり、余計なところに気を遣わなくなるということがあるんです。
まあ、乗り手の技術はさておき、調教において物見をするということは限りなくない方が良いわけですよ。
ゲートの音、他の馬の鳴き声や脚音などが気になってしまう馬はいるものです。それをメンコで遮断することによって集中力がアップするならば、良いことですから。
ただ一方で、そのような矯正道具に対する“慣れ”という問題点もあるんです。
よく「初ブリンカーの効果があった」というようなコメントをみかけると思いますが、その1回は効果があっても、2回目以降全くなくなってしまうことも珍しくありません。
あと、矯正道具を使うと、しばしば効果があった気になったりするのですが、本質的というか、根本的な解決にはなっていないわけです。
例えば、モタれる馬に対して片ブリンカーをすることで、モタれないようになることを期待されます。しかし実際は肉体に問題があったり、バランスの問題だったりすることの方が多いのが現実だったりするわけですよ。
何を言いたいかというと、僕の少ない経験のなかですが、耳つきメンコに関しては、効果を実感できています。ただ、他の矯正道具についてはそこまで劇的な効果を実感できていません。
もちろん、その効果はあるとされていますし、その実感を口にされる方々も多くいらっしゃいます。
我が尾関厩舎も、ブリンカーやチークピーシズなどを、追い切りと競馬でしか装着しておりません。だからこそ、効果が得られやすいということもあるはずです。
ただ、慣れ、さらには本質的にどうしてそれらの矯正道具を必要としているのか、ということを、我々馬に携わっている側は考えなければならないと思っています。
上手く言葉にできずにすいません。ファンの皆様には、矯正道具はもちろん効果は期待できますが、ダビスタのようにいきなりブリンカーを付けた途端、G1ウイナーまで駆け上がってしまうというようなことは稀だと思っていただければと思います。
※あと数回、皆さんからいただいたご質問にお答えする回を予定しています。西塚助手への「指令」、質問、西塚助手へのメッセージなどは、上部リンクからお送り下さい!