厩舎関係者たちは、血統についてどこまで意識しているのか?
2013.8.29
ようやく朝は25度を下回り、涼しさを感じることができるようになりました。日中こそ暑さが残りますが、馬たちも随分と楽になっているように思います。
さて、今回は
PNジーク!の息子さんから以下のような質問をいただきました。
「私は一口馬主をやってるんですが、血統的に適性ベストな条件を使わない馬がよくいるんですよ。で、勝ち上がれない(苦笑)。会社側に聞いても明解な答えはなく『現場の判断』とか。それで質問です。実際、厩舎サイドって、血統的背景を無視するほど適性を把握してるものなんですか? そういう使い方で結果を出してくれれば文句はないんですが、中にはいつまでたっても血統的ベスト条件を使わずに故障、なんてパターンもあるもので」厩舎にもよりますし、馬にもよりますし、状況にもよりますが、例えばデビューに向けて調教をしている馬ということでいえば、目前にいる馬をみながら、番組を決めていくことになる場合が多いと思います。
どういうことかと言うと、フットワークや脚捌き、反応、あるいは乗った感触などから、適性を“推測”していくということなのです。
うちの厩舎だけなのかもしれませんが、この馬は短距離血統だから、あるいは逆に長いところというように、乗り手が意識をしていないというか、決めつけないようにしています。
実際、馬と相対していると、正直それ以外に、環境への馴致であったり、ゲートへの馴致であったり、あるいは体調の変化であったりと、意識することも多く、適性だけを意識することが許されなかったりするんです。
正直、適性については、追い切りを重ねて、時計を出す頃になって、実戦に近づいた馬を見てから、という感じです。
ブッチャけさせていただきますと、“馬は血統”だとよく言われますが、そのようにその部分を感じるケースもあれば、そうじゃないんじゃないかと思うケースもあるんですよ。
例えば、血統的には長距離血統ですが、ゲートが速く、引っ掛かっていくくらい前進気勢が強い馬も実際います。デビュー前にそういう姿を見たとき、現場では短い距離を選択することもあるはずです。
逆に、血統的には短距離向きであっても、ゲートが遅かったりすると、長いところという選択肢も出てくるはずです。
あと距離についてのポイントとして、ストライドはあります。確かに大きいタイプにも短距離馬はいますが、急がせて競馬をするよりは徐々に加速していけるように、ある程度距離があった方が良いと考えます。
逆に、ストライドが小さいタイプは加速するのに時間が短くて済むとされる一方で、長い距離を走るにはそれだけ回転数をあげなければいけないので、不利とされています。
実際、そう感じることは多いし、距離適性を考察するとき、フットワークはやはり強く意識します。
ただ一方で、最近は血統についても考えなければならないとも思っています。
なぜかと言いますと、競馬にいったときに、調教でみせていた姿からは想像ができないといいますか、大袈裟ではなく人知を越えた部分をみせられることがあるんです。
よくも悪くも、全く想像もできないことが起こります。そういうときには、もうこれは血統としかいえないと思わせられるんです。
ゲートの入りが悪かった馬がレースではスムーズに入ったり、引っ掛かっていた馬がピタっと折り合ってみせたり、またその逆だったりということがあるんですよ。
他には、血統が良いものの、小さくて、細くて、とても走るとは思えないような馬なのに、競馬に行くと、センス抜群の走りをみせることはあり得る話で、実際そういう馬もいました。そこは血統なんだろうなぁと思います。
もちろん、競馬を走った後は、そのレースでの姿や反応から、“次以降は?”と決めていくことになるわけです。
そのときに、距離に関しても血統が影響するケースもあります。
例えば、血統的には短距離であるものの、1600mでは短いと感じたとします。レースぶりからは2000mでも、と思わせるのに、最後の1ハロンで脚色が鈍ってしまい距離の壁を感じることもあったりします。
最近では、短いところよりも長めの距離からスタートさせる風潮が強くなっています。番組をみても、マイル以上の距離が早い時期から組まれていたりするのはそういう影響でしょう。
実際、新馬戦はスローで流れることが多く、本質的には短いところの馬であっても、折り合いやすく、好走したりすることがありますよね。
そこには、まずはクラシックという意識があるのでしょうし、長い距離から短いところの方が、短いところから長いところへ方向転換していくよりも、適応させやすいということもあるはずです。
とはいっても、新馬で長めで好走したとしても、競馬を走っていくと結局は1200mに適性を示すことになったりして、難しかったりするんですよ。
それでも、距離適性について、実際乗っている人間たちの感覚は一致したりしますし、ダートと芝についても、乗った感覚から見解が一致したり、あるいは
「言いたいことはわかる」ということになったりするんです。ただ、いまどうしても血統的には短いところであっても、最初は少しでも長いところという風潮があるのも事実です。
ただ、ひとつだけ競馬をしてみないとわからないことがあります。それはダートを被ったときの反応です。
調教でも被せたりしますが、量も違えば、環境や状況も違ってきますので、全く想像がつかない反応を示すことがあります。
その部分は血統とも繋がらない部分かもしれません。血統はダート向きと言われるのに、砂を被ると全く駄目という馬もいます。もちろん、ダートと芝どちらでも大丈夫な馬というのもいます。
なんだかまとまらずにどうもすみません。
ただ、実際馬を目の前にするとその反応を見逃さないようにと意識して、それらから推察、判断していくことが多いのですが、特徴を表すとされる血統も十分に考察しなければならないと思います。
その両方を判断材料とすることで、その馬の本質を見抜けるようにしていくことが我々に求められているのでしょう。
ぜひ、これからもクラブ法人で愛馬生活を楽しんでいただければと思います。
※次回からは中谷雄太騎手をゲストにお迎えして対談予定です。西塚助手への「指令」、質問、西塚助手へのメッセージなどは、上部リンクからお送り下さい!