長期休養明けの馬に対し、どのように接していくべきか?
2013.12.12
東京開催の最終週となる先月23日、最終レースに
ヴェルデホ(※母は06年セレクトセールで税抜6億円で落札されたディナシー)が11ヵ月ぶりに復帰し、2番人気に支持されたものの、7着という結果となりました。
送り出すとき、正直な気持ちとしては半信半疑でした。
順調に調教を消化して、仕上がりは良いという感触を持っていましたが、何せ中央場所の1000万下というのは、オープン馬予備軍が揃っていて、これまでの経験からもそれほど甘いものではないという思いはありました。
約1年ぶりの競馬ということを考慮すれば、着順こそ7着ということですが、着差や内容は次以降に期待を持てるものと思っています。
レース後も順調ですし、次走は今年の最終日となる23日の出走を目指して調整が続けられています。
この
ヴェルデホは特に大型馬(前走の馬体重が520kg)で、パドックなどでみていただければわかりますが、外向で、しかも接着蹄鉄を装着しています。
また、馬場に向かうときに止まってしまったりなど、性格的にヤンチャな面があります。
僕自身は、1度も跨がったことがないんですが、乗っている人間に聞くと、そういう脚の影響なのでしょうか、利き脚があると聞きます。
ハミに関しても、トライビットという新型のモノを使用することでより良い感じになっているようです。
そのような状況のなかで、11ヶ月ぶりとなる今回は“まずは無事に”という意識がみんな強かったように思います。
2歳から3歳秋の時期にかけて休んでいましたから、体重が20kgくらい増えていることは不思議じゃありません。ですので、今回の10kg増というのは想定内でした。
あくまで、数字ではなく、とにかく見た目に太く映るような仕上げにはならないようにと、中間でプールやトレッドミルを併用してフィットを図っていたんです。結果的に、仕上がりとしては良かったと思っています。
大型馬で、脚元に何かある馬の長期休養明けということで言えば、太く映りませんでしたし、及第点だったのではないでしょうか。
今回の
ヴェルデホのケースのような長期休養明けの馬について、どのような形で接するのかということもお話ししましょう。
タイプにもよりますが、自分が尾関厩舎にお世話になってからというもの、いわゆる鉄砲駆けする馬かどうかを判断するひとつの規準として、新馬で走った馬は大丈夫、というようなことが言われています。確かにそういう部分はあると思います。
具体的に言いますと、新馬戦に向かってどのくらい追い切りができたのかということとつながりがある、という感覚があります。
入厩して1ヵ月半じっくりと調整できる馬と、入厩して3週間でレースに向かう馬とでは、追い切りの本数という物理的な差が存在するわけです。
1ヶ月半じっくりと追い切りを行っていくことができるということは、脚元の不安もなく、さらにはそれに耐えることができる体力を兼ね備えているということになります。
馬のタイプにもよりますが、多くのケースで、そうやって調教を積むことができている馬というのは良い結果となるものです。
そういう意味で今回の
ヴェルデホは、良い調整過程を踏むことができていたと思います。
長く実戦から離れていると、実戦の勘や息遣いなど、調教では補えない部分があるとも言われますが、そういう面があると僕自身も思っています。
ただ、
ヴェルデホは割とレースに行って闘争心にスイッチが入りやすいタイプですので、レース勘というようなことは心配していませんでした。
もちろん、レースに行ってみないと、そのスイッチの入り方がわからかなったりするんです。前回は入ったのに、今回は入らないということも珍しくはありません。
そこで、そのスイッチが入るように、例えば当該週に併せ馬を行うなど、調教で対応していかなければならないのでしょう。
たとえわかっていても、思い通りになっていかないこともありますし、決して簡単なことではないのですが、時系列で対応していくことが我々仕上げていく人間としては何よりも大切だと考えます。
繰り返すようですが、結果はもちろん大切ですが、結果だけで判断するのではなく、レースに向かうその過程も含めて、見極めていかなければならないんです。
仕事の精度を上げていくためには、そういうことが求められているのだと思います。
話が逸れてしまいましたが、
ヴェルデホはレース後も順調ですし、今後がとても楽しみです。次走もぜひ注目していただければ、と思います。
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