今年も新年恒例、田辺騎手との対談で幕開けです!
2014.1.2
田辺裕信騎手…以下
[田]西塚信人調教助手…以下
[西][西]皆さん明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。はい、新春恒例となっております、田辺裕信騎手をお迎えしております。またまたよろしくお願いします。
[田]明けましておめでとうございます。今年は53kgがキツイ件について、という話題でいきましょう。
[西]年末年始は忘年会、新年会もあるから、体重がキツイんだぁ。
[田]いや、冬がキツイ。なかなか落ちない。疲れるけど、腹は減るけど、体重は減らない。
[西]うははは。というか、そもそも53kgって、あまり乗っていないんじゃないの?
[田]秋シーズンは53kgがあったりするんですよ。「53kg無理なの?」という顔をされたりする。52kgは胸を張って無理です、と言いますけどね。
[西]53kgは言いづらかったりするんだ。
[田]夏の終わりの53kgは、キツイですと言いながらも乗れる。でも、この時期の53kgは本当にキツイわけですよ。
[西]相変わらず鞍は軽いモノを使わないということに拘ったりしているの。
[田]いや、導入しましたよ。
[西]遂に(笑)。
[田]腹帯は普通のモノだけど、鞍はスポンジ製の軽いタイプを使い始めました。
[西]いまではレアアイテムになるけど、田辺の軽い鞍、サイン入りで持ってるんだよ。
[田]重い鞍、欲しい?
[西]サイン入りで(笑)。
[田]ある外国人騎手が、日本人はなぜあれほどまでに減量するのか、と言っていたらしいんですよ。軽い道具があるのに、なぜ使わないのか不思議だと言っていたらしく、『確かになあ』と。
[西]昔はなかったらしいからね(笑)。
[田]昔は軽い鞍を使うことをよしとしない風潮もありましたが、いまは軽い鞍を使うことが自然になってきています。
[西]あれほどまでに頑なに軽い鞍を使わなかったのに、何かあったの?
[田]最近は、スポンジ製の鞍が進化しているんですよ。試しに使ってみようかぁと思って、いままでよりも少し大きめで、しっかりめに造ってもらって導入してみたんです。最軽量のタイプよりは重いんですが、これが乗りやすい。『なにっ!』という感じでした(笑)。
[西]ははは。使ったら良かったわけね。
[田]鞍を置く方もピンポイントで置きやすいみたいですよ。ウチの先生にも、この鞍置きやすいから、乗りやすいんだろうと言われたくらいですから。
[西]どの鞍だろう。
[田]12月から使い始めたんですよ。
[西]今度見てみよう。どのくらい軽くなったの?
[田]以前まで使っていた鞍よりも300gくらい軽いのかな。
[西]となると、どのくらい?
[田]鞍と腹帯で1.6kgくらいかな。でも、アブミは普通のタイプを使っているし、腹帯も普通のタイプですので、まだ軽くできます。
[西]外国人で一番軽いのは0.9kgとかだよね。
[田]それは嫌です。
[西]腹帯が嫌だったりするの?
[田]腹帯は1本になるから、伸びやすく、耐久性がなくなりますよね。次から次と新しいモノを、ということになります。
[西]いざ、勝負というときに、よし軽く行っちゃえということにはならないの? アブミも腹帯も軽いものにしちゃえ、という選択はあるのかなと思って。
[田]53kgに乗るということになれば、完全にそうしますよ。騎乗依頼を受けた後、ハンデ戦で後から53kgに決まることもありますからね。そういうときには、オプション導入ですよ。
[西]鞍といえば、アルテミスSでのマーブルカテドラル鞍ズレ事件です。重賞レースで、しかも勝ったということでクローズアップされましたが、普段のレースではそれなりにあるというか、決して珍しくはないよね。1開催に1、2回はみかけますよ。
[田]よく見てますね。さすが次期調教師ですよ。
[西]あのようなケースは、個人的には置いた側の責任だと思っています。鞍の形が変形したことについて調教師に対して制裁というのは理にかなっていますよ。調教師、及び調教助手が臨場において一番注意しなければならないのが、キッチリと鞍を置くということでしょう。装鞍所に引きつけなければならない、パドックを周回させるのが当たり前のことですから。あとは、蹄鉄がしっかりと装着されているかどうかということと、タイムオーバーになったときにハ行であったかどうかという、3つに対して特に注意しなければならないと思っています。
[田]蹄鉄は装鞍所でチェックしてもらうべきだとは思います。
[西]一応、何か変形など異常がないかということはチェックされています。
[田]いや、締め具合までチェックしてもらえたら良いと思うんですよ。俺たちが蹄鉄を見てもわからないですからね。
[西]死んだ親父に、止まれの声が掛かって、パドックを出るまでの間が蹄鉄を直せる最後のチャンスだから、よく見るように、と言われた。馬場へ出てからも直せるけど、できることならばより前であればあるほど良いからね。
[田]オーダーメイドで仕上げた靴を履いて試合に行ったら、靴ひもが切れたり、壊れたりしてしまって、片方だけ既製品の靴を履かなければならなくなってしまったみたいなものですからね。
[西]我々としては、そういうところも注意して見なければ駄目だということなんですが、鞍の件については完全に置いた側に責任がありますよ。腹帯の締め方ひとつにしても決して簡単じゃないよね。
[田]調教のときに使用する腹帯とは違うし、やはりやり難かったりもするんだよね。
[西]よく乗ってから締めるから大丈夫というような言葉を耳にしますが、ある程度は締めておいてくれた方が良いよね。
[田]個人的にはそう思います。レースでは上腹を付けているわけですし、やはり調教とは違いますよね。
[西]先日も田辺とは話をしたばかりだけど、攻め馬での鞍の感覚だと、どうしても前目になってしまう傾向があって、前になればなるほどズレる可能性も大きくなるわけですよ。
[田]でも、攻め馬で鞍を置くのは担当の厩務員さんというのがほとんどであるのに対して、レースでは調教師の先生たち。個人的には、装鞍も厩務員さんたちがやった方が良いんじゃないかと思ったりはする。キ甲に対して、この馬はズレやすい、あるいは下がってしまいやすいというように、それぞれの癖がある。そういう癖を知っている、つまりは担当の厩務員さんたちが鞍を置いた方が良いと思うわけですよ。
[西]なるほどね。ただ、鞍が下がるということはほとんどないでしょう。
[田]競馬はないけど、調教はある?
[西]ほとんどないように思う。キ甲の感じで迷ったときには後ろに置くようにしている。馬に乗ったことがないとわかり難いことなのですが、手綱を引っ張ったときに鞍がズレるとしたら前へズレていく。後ろにはいかない。
[田]そういうことです。最初のポジションがフロントであっても、引っ張らなければ何の問題もない。引っ張ったときのことを考えて、若干後ろ目においてもらった方が良かったりする。
[西]そうなんだよね。後ろではなく前にズレるんだよね。
[田]前にズレるのをキ甲で止めてほしいわけですよ。
[西]今年、我が尾関厩舎以外にも、鞍置きはかなりの数やらさせていただきました。そしていろいろ話をさせていただいたのですが、結論としてはみんな前に置く傾向があるということでした。
[田]見栄えという観点なんだろうね。確かに、バランスは良いんだけど、鞍を置いて腹帯が肘のところから離れていたら不安になるのでしょうね。
[西]そう。でも、離れていてむしろ良かったりするんだよね。
[田]個人的には離れていて良いと思う。
[西]前に置かれるケースとして、その理由はわからないけど、厩舎装鞍の馬たちが多い。
[西]あっ、そう。
[田]厩舎装鞍で、返し馬に行って、前鞍だったとき、騎手は直すと思いますか。
[西]まず直さないよね(苦笑)。
[田]装鞍所で鞍を置けない馬が、ゲート裏で置けるわけがないと思いませんか?
[二人]わははは。
[西]確かにそりゃ無理だよね。
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