今年もいままで通り、馬とともに頑張ります
2014.1.23
田辺裕信騎手…以下
[田]西塚信人調教助手…以下
[西][西]ゲートの話を続けましょう。尾関厩舎のゲート担当みたくやっていて感じるのは、入らない馬を入るようにするのは馴致力が大きいということですよ。入らないときに、後ろから促せとか、縛れとか言われるけど、まずは人間の脚での扶助に反応できるかどうか。できなければそれに反応できるようにしていくことだったりするんですよね。それでほとんどは解決したりするんだよ。
[田]塵も積もればじゃないけど、練習することは大事。
[西]入る、入らないは、厩舎サイドの仕事だよね。ただ、速いか遅いかはどうにもならない部分があったりする。“出る速さ”に関してはセンスの部分が大きいよね。
[田]それはそう。速さはセンスだと思う。そのセンスも能力だから。頭が良い、悪いのもセンスだし、調教ではオープン馬なのに、レースでは力が出せないのもセンス。
[西]ゲートの出に関しては、速さは大きく変わらないよね。
[田]そうなんですけど、要領は良くなりますよね。1ヶ月に1回レースをしているとします。そのときに、速いところは毎週やるわけですよ。それに対してゲートは1ヶ月に1回となってしまう。馬たちがどれほどドキドキしていることか。しかも、無理矢理走らされることを馬たちがわかっているわけですよ。
[西]慌てもするわな。
[田]どれだけ平常心で臨むことができるかが大切なわけで、そういう意味では1度競馬をした後はレース本番までゲートを経験しないのは良くないと思います。
[西]中でうるさい馬はどう?
[田]練習するしかないでしょうね。ただ、何が嫌でそうなっているのかを考えなければならないですよ。狭いところが嫌なのか、出されるのが嫌なのか、それとも隣に馬がいることが嫌なのか、いろいろな理由があるはずですから。
[西]わかるわぁ。
[田]同じ嫌がるのでも、全部が同じ理由でそうなっているわけではありませんからね。それに対して、同じ対応では駄目でしょう。
[西]当たり前のことだけど、なかなかそうじゃなかったりするからね。
[田]ゲート係もプロですが、その馬については厩舎スタッフの方がよく知っているはずなんですよ。いろいろ意見を交わすことは大切ですが、やはり1頭1頭について係の人に説明することも大切ですし、我々乗り手に例えば『こういうことに反応する』とか『こういうことが嫌い』と伝えることはとても重要だったりしますよね。
[西]いやぁ、深いなぁ。あと、出ることに関してはやはり騎手の人の方が上手いよね。
[田]確かに、静止しているところから走り出していくのに、乗っていくのは上手だと思いますが、でもやはり1歩目は馬自身の問題ですよ。叩けば速く出ることができるわけではないと思います。もちろん、それは僕の考えであって、騎手の人たちのなかには、叩けば速く出ることができると考える人もいるかもしれませんので、それが駄目とは言いません。
[西]1歩目は馬自身だと思うけど。
[田]基本的には、騎手はゲートを出すつもりで乗っているので、躓かれたときには落ちちゃいますよね。
[西]ブッちゃけちゃいますが、自分も含めて競馬に乗ったことがないわけだから、そういうところは教えてもらわないとわからない部分があると思う。
[田]なかなか信頼関係がないと難しいところもありますからね。ただ、馬のエンジンを強化することも大切なのでしょうが、誰もが乗りやすくすることはもっと大切だと思います。持てる能力は決まっているわけですよ。問題は、それをもっと伸ばそうと考えるよりは、まず持てる能力をいかに、よりすべてを発揮できるようにするかということでしょう。もし信君が調教師になったらズバズバ言いますよ。
[西]あ、お願いします。
[田]調教にも、方法にも正解はないわけですよ。ただ、その馬の足りないところをどうするとより良くなる可能性があるのかと考えて、信頼関係がある厩舎にはハッキリ言うようにしていますよ。
[西]でも、それが大切なんだよね。しかし、田辺とこんな真剣な話したことなかったかなぁ。
[田]普段はしないよ。でも、騎手たちの間では、意外とします。ノリさんとか馬の話が大好きだし、やはり一杯乗って、一杯勝っている人は馬が大好きだよね。
[西]昨年ノリさんと一緒に仕事をさせていただくことがあったんですが、いやぁ良くわかります。
[田]そうなんですよ。
[西]そのなかで印象的だったことがあって、調教で一緒に乗っていたときに『俺のことをやらねぇとか、すぐ止めるとか言っているけど、それなりの理由があるからなんだ。それをわかってねぇんだ』と言った言葉なんですよ。
[田]これは書いてください。僕からもお願いします。
[西]その言葉を聞いて、俺がわかっていると思って言ってくれているんだなぁと思ったんですよね。
[田]当たり前ですけど、やったら走るということではないわけですよ。やらない理由としては、余力がない。そしてそういう状態の馬を叩けばヨレてしまう。他の馬に迷惑をかけてしまう、そうなれば自分にも影響が出てしまう。さらに、馬によっては嫌気がさしてしまい、その後に影響を及ぼすことになりかねない。それ以外にも、歩様が悪いなど、そこには何か理由があるんです。疲れるからということじゃないんですよ。
[西]ブッちゃけますけど、みんながノリさんが凄いという意味を少しだけわかった気がしました。何せ、いままで田辺最高と思ってきた人間ですから。
[田]それはそのままでいいんじゃないの?
[西]え、田辺最高ということ?
[田]そう。
[二人](爆笑)。
[西]いやぁ、まだまだ話をしたいのですが、時間がありますので。
[田]いまから飲みに行く?
[西]行きたいのはやまやまなのですが、明日、早いので。
[田]なんだぁ。
[西]最後に2014年の目標などをお聞きしたいのです。無駄だとは思いますが(笑)。
[田]世界征服ですか(笑)。
[西]似合わないよ(笑)。マレーシアだけじゃねぇかよ。
[田]例年呼ばれるようになるかな(笑)。
[西]100勝ですか?
[田]ブッチャけ、数字は気にしていないんだよね。本誌での(丸山)元気との対談(サラブレ本誌2月号に掲載)でも言ったんだけど、一昨年88勝して、去年50勝だったら、スランプとか言われた。でも、俺自身は絶好調なわけですよ。
[西]ははは。
[田]元々、何勝していたんですかと聞きたくなるし、その55勝は本場だったりするわけですよ。数字がすべてはないというか、内容も大事だったりしますよね。
[西]いや田辺らしいというか、らしくないというか(笑)。
[田]そうだなぁ。強いて言えば、関わっている馬たちのなかで楽しみな馬がいますので、その馬と一緒に上がっていきたいというか、できることをしてあげたいということですかね。
[西]良い話だぁ。
[田]ノリさんともそういう話をするんだけど、一見するとレースだけの関係になる騎手と馬だけど、そういう関係が楽しみというか、モチベーションになったりするんですよね。
[西]深いなぁ。
[田]結果はわかりませんが、勝ったときにはそりゃ嬉しいですよ。
[西]じゃあ2014年は馬とともに、ということで。
[田]そろそろ本気出しますか。
[西]おっ、と(笑)。
[田]いままで通りいきまーす、ということで良いでしょ。
[西](笑)。
[田]良くなってきたから、その勢いでとか言われますけど、だからこそいままで通りが大切なんだと思うわけですよ。これまでお付き合いしてきた人たちとの関係を大切にしながら頑張っていきますよ。
[西]何か、田辺との対談じゃないみたいだぞ。
[田]いやぁ、元気との対談でやり過ぎちゃったんですよ(笑)。原稿直す、直す。それでもハジけ気味なんですよね。
[西]わははは。面白そう。
[田]目標はないということにしましょう。数字はみなさんが決めてください。100勝とか、G1勝ちとか勝手に決めてください。
[西]それに応えてくれるということですか。
[田]いや、僕は僕自身で頑張りますので。
[二人](笑)。
[西]いやぁ、ありがとうございます。また来年の正月にお願いします。
[田]調教師になっていてくださいね。
※次回からは、西塚助手が皆さんからの質問にお答えします。西塚助手への「指令」も募集中。質問、素朴な疑問を、上部リンクからお送り下さい!