障害競走を第三場に移すことのデメリットとは
2014.3.13
五十嵐雄祐騎手…以下
[五]西塚信人調教助手…以下
[西][五](先週から続き)もちろん逆もあります。後ろから進める形になったときの勝ちパターンというのもあるわけですよ。
[西]なるほどね。説明してよ(笑)。
[五]バラしたくないんですけどね(笑)。障害レースは騎手のメンバーが同じだったりするので、癖とか特徴が良くわかっています。この人が2、3番手のときはこう動くというように、読めたりするんです。簡単に説明すると、それを利用させていただくんです。
[西]読者の方々のために、何かひとつ例をあげて説明してくれるかな?
[五]例えば、ハナを切っている馬の2番手が、早めに動く傾向が強い騎手だったとします。早めに動くということは、ハナを行っている馬にプレッシャーをかけるということになります。その後ろで我慢して「行け、行け」というように、利用させていただくわけです。いろいろなパターンがありますので、一概には言えないのですが、そういう感じです。
[西]いやぁ、勉強になります。同期の田辺さんもそんな話したことあったかも(笑)。
[五]田辺も同じように考えているはずですよ。道中で無駄な動きがないですし、自分から勝ちに行ってやろうという競馬が少ないですよね。
[西]そうだね。
[五]でも、それが良かったりするんだと思いますよ。先日の
京都記念を勝った
デスペラードの(横山)ノリさんも、ハナを切って、自分のペースで行ったわけですよ。結局は、2番手、3番手に脚を使わせることになったんですけど、そこで動かず、自分の競馬をしているんです。いやぁ上手いなぁと改めて思いました。あんな競馬がしたいです。
[西]脚を使わせるような形にする技みたいなものって、なかなか見えづらかったりするんだよね。
[五]ノリさんなんかは、僕よりも遥かに技というか、引き出しを持っていますよ。
[西]なるほどね。でも、五十嵐も凄いよ、今回にしたって、乗り替わりでのG1だったわけだよ。
[五](草野)太郎もついてなかった。前のレースで、前にいた(大江原)圭が落ちてしまって、それを馬が見て落馬してしまったんですよね。ただ、そもそもは平沢先輩がつくった馬なんですよ。
[西]あ、そう言えばこの前平沢に会った。関西に移籍したのに、菊川厩舎の馬に乗っていたので、「関西馬じゃないの?」って言っておいた(笑)。
[五]関西で結果が出ているから、平沢先輩良かったですよ。
[西]五十嵐って、言うほど関西馬に乗ってない印象があるんだけどさ。
[五]いえ、最初の重賞勝ち(
07年東京オータムジャンプ)の
ベストグランチャが藤原辰先生で、それから(堀井厩舎の)アポロまではすべて関西馬(
エリモマキシム、エーシンディーエス、ランヘランバ)なんですよ。
[西]そうか。五十嵐さんと言えば、
ランヘランバみたいなイメージが強いんですよ。掛かったらしいよね。
[五]みんな掛かるというんだけど、かかりませんでしたね。あの馬に乗せてもらったときもラッキーだった。あのとき、小坂がね。小坂と言っているけど、先輩なんですよ(笑)。
[西](笑)。いくつ上?
[五]1年先輩です。その小坂に別の馬がいて、「A、Bで名前貸して」と言われて貸したら、入って勝ったんですよ。その次もその乗せてもらって、また勝ったんです。
[西]あの馬は稼いだでしょ。
[五]稼がせていただきました。
[西]家建った?
[五]建ちましたね。
[二人](笑)。
[西]でも、こうして話をすると、やはり障害って面白いと思う。騎手の駆け引きひとつにしても、魅力のひとつですよ。関東で言えば、五十嵐、(横山)義行さんですか。どうなんですか、やはり今は義行さんが君臨しているんですか。
[五]いまさらですが上手ですよ。競馬に対してのタイプは僕と同じ。ただ、違うところは義行さんはハナに行くことがとても少ない。
[西]確かに少ないね。
[五]僕はハナ好きですから(笑)。
[西](笑)。でも、義行さんは良い位置にいるんだよ。チャンスが少ないと思われる馬でも、あっ、と思わせられるくらい良い位置にいたりするんだよね。
[五]上手ですよ、本当に。
[西]五十嵐から見てもそう思うんだ。
[五]障害を跳ばす技術とかは、かないません。
[西]どんな感じなの。先程の1歩入れるとか、そういうことなのかな?
[五]例えば、遠目から踏み切る、あるいは近目から踏み切るというときの、体のついていき方もそうです。僅かなことなんですが、そこも技術で、僕なんかよりも上手い。尊敬していますよ。
[西]去年って、怪我なかったよね。
[五]いや、骨折しました。春の東京の頃で、休みましたよ。
[西]2番乗りで和田(郎)厩舎に乗っているときに会うよね。居なかった印象がないなぁ。
[五]次の日乗れるかなぁと思っていたんですが、腫れてしまって断念しました。
[西]去年もリーディングだったよね。
[五]いえ、去年は山本さんです。
[西]じゃあ2位だったんだね。
[五]関東ではそうですね。
[西]関東、関西で言えば、今年から未勝利、オープンの平場のレースが第三場に移ることになったんですが、この番組編成はどうなんですか。
[五]いろいろあるのでしょうが、僕たちのただの意見としては嫌です(苦笑)。
[西]率直なご意見ありがとうございます。
[五]三場で行われることで、関東馬と関西馬が一緒に競馬をすることになってしまうわけです。そうなると、関西馬が有利ということになってしまうわけですよ。今年ここまでの結果をみていただければ一目瞭然です。
[西]あれ、関東馬は2勝だった?
[五]13勝に対して2勝ですからね。そうなることはわかっていましたけど、その通りになっています。
[西]ブッチャけてしまいますが、関東では馬がいない厩舎が登録頭数を稼ぐために障害転向というケースが少なくなかったりしますよね。バシケーンみたいな成功例はありますが、基本的には平地で厳しい馬たちということなわけですから、それだけ厳しいということになります。
[五]流れをみていると、関西から転厩してきて関東で障害馬になるケースが増えてきています。
[西]馬主さんとしては、お金を出して馬を持っているわけですから、可能性があるならば障害に可能性を見出すということは自然な流れだよね。
[五]そう思いますよ。
[西]あと、番組編成でいうと、1、4レースとか4、5レースというように続けて組んでいますよね。どういう意図なんですか。
[五]季節によって4、5レースが変わったりするんですけど。4、5レースは凍結の問題とからしいですが、個人的にはどちらでも良いです。
[西]ただ、何かあったときの乗り替わりという状況になったときとか、どうするんだろうという疑問があるんですよ。
[五]1、4レースだったら検査の時間はできますよね。
[西]それだけでなく、もし乗れなくなってしまったときに、三場だから替わりの騎手はどうするの。
[五]JRAに尋ねたところ、前のレースに騎乗していた騎手が次のレースにすべて同じメンバーで騎乗することはないので対応可能という説明がありました。
[西]でも、上位の14人で決まっていて、続けて同じメンバーということはあるし、万が一何人かが騎乗不可能になることも0%ではないわけだよね。
[五]なくはありませんよね。
[西]そうなると取り消さざるをえないということになってしまうわけですよ。そのあたりの危機回避というか、対処については不十分という印象を受ける。それと、いま障害騎手の交通費が問題になっていますよね。これまで障害や癖馬などに関しては、騎手は交通費を請求することができていたはずですが、それがそうじゃないということになりそうなのです。でも、そうなると騎乗手当から交通費を捻出する形になって、ただ働きどころか赤字になりかねないということだってあるわけですよね。
[五]確かに、多くの騎手が平地の免許も持っていますので、乗ろうと思えば平地にも乗ることができますが、現実問題としてそれができる騎手はほぼいないと言って良いでしょう。そうなると、厳しいですよね。
[西]そういう話が出ているなかでの第三場開催へのシフトですからね。生活さえ困難になる可能性が出てきて、辞めてしまう騎手が増えることも予想されていますので、決して簡単な話ではないと思います。
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