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調教コースのコンディション変化に対応するための、ある“秘密兵器”とは
2014.4.17
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今回は、調教の時計について少しお話をさせていただきます。

読者の方々のなかにも、既にお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、いま美浦の坂路は時計がかかっています。

例えば我が尾関厩舎で言えば、1本目18-18、2本目は17-17、あるいは終いの1ハロンだけ16-16を切るくらい、という内容の指示が出ています。

そのとき、以前にもお話をしたように、そういった指示に対して、1ハロンの完歩、つまり何完歩で走るかを数えることで時計を合わせるという方法があります。

美浦の坂路でいえば、1ハロン18-18ならば、39完歩に前後1、2完歩くらい、15-15ならば34完歩前後1、2完歩という感じです。1完歩が特別大きい馬が32完歩になることはありますが、だいたい完歩を数えれば時計が合ってきます。

ところが、ある日突然完歩通りに登っているのに、2秒程度遅れたんです。

最初、数え間違ったのかなと思ったくらいでしたが、結局は時計が掛かる馬場コンディションとなっていたことが原因だったんです。

ただ、同じ完歩で走っているのに時計が遅くなっているということは、それだけ馬にとっては負荷が掛かっているとも言えます。

乗り手の体重差については、重ければ重い人であるほど故障の確率が高くなるというデータは出ています。そこで、良馬場と不良馬場で負荷の差、要するに心臓への負荷がどこまで効果として出るのかということについては、ぜひ研究や分析を見てみたいと思いますね。

馬場状態による馬への負荷、故障率というデータについて、僕自身はまだ見たことがないんですよ。

個人的には、同じ1ハロン15-15でも、いまはより完歩が多くなっている、つまりはそれだけ負荷がかかっているということだと思います。ですから、オーバーワークにつながる可能性も意識しておかなければならないと思っています。

その調整をどのようにするかということですが、以前は時計が掛かる馬場であれば完歩を2歩詰めて乗ろう、というような形で調整してきました。それが、今はある機材が大人気となっているんです。

それは、メトロノームです。音楽の授業で見たことのある方が多いと思うのですが、これが多くの厩舎で使用されています。

これはリズムを音で伝える機材なんですが、例えばテンポを60にすると1秒に1回音が打たれます。これを基準に坂路を登っていくと、これが素晴らしいくらいに時計が合います。これはフラットコースでも同じです。

栗東の坂路について、時計が掛かることで負荷がより求められるという指摘もあります。より負荷が求められるのは良いことだとは思いますが、馬場が荒れることでミスステップなど故障の確率が高くならなければ良いとは思います。

逆に、負荷を求めてわざと荒れた馬場状態のなかで追い切りを行う厩舎もあります。その調教で何を求めるかということによっても、対応が違ってくるということなのでしょうね。

そんな状況なので、読者の方々が馬券を購入されるときに、調教内容をひとつの判断基準とされる場合、以前とは坂路のタイム内容が違っています。そのことはぜひご注意いただければと思います。

最後になりますが、ひとつ悲しいお知らせがあります。モンストールを担当していた厩務員さんが亡くなられました。

定年退職されていたのですが、突然の知らせでした。

一緒にダービーのパドックを歩いたときのことが走馬灯のように思い浮かびます。「40年で初めてのダービー」と言っていたなぁ。

ダービーでも、いつもと同じリズムとペースで馬に接していて、仕事をしていたことが強く印象に残っています。馬に対するスタンスは、そこからも教わりました。

それと、よくお酒を飲むと「俺は馬がかわいいんだぁ」と繰り返していたことも思い出します。酔っぱらったときに、「馬がかわいい」という人はその人以外、僕は会ったことがありません。

素晴らしい、僕にとって尊敬できるホースマンでした。どうか安らかにお休みください。合掌。

※次回の対談は柴田未崎騎手を予定しています。西塚助手への質問、「指令」も募集中。競馬に関する質問、素朴な疑問をお送り下さい!