感謝の気持ちを忘れず、諦めず頑張りたい
2014.5.15
柴田未崎騎手…以下
[柴]西塚信人調教助手…以下
[西][西]障害にはしばらく乗らないのですか?
[柴]いまのところはそう考えています。
[西]障害と平場ではやっぱり違ったりしますか?
[柴]最初は戸惑いますよ。障害の感覚だと、どうしても重心が少し後ろ目になりますので、遅れ気味になってしまうんです。でも、実際競馬に乗ることで感覚が戻ってきて、より前の重心で乗ることができています。
[西]障害だと何かあったときに対応できるように、少し後ろ目になるんですかね。
[柴]そうです。それに対して、平地は逆に前重心で乗らなければなりません。
[西]変なことをお聞きしますが、前回騎手を辞めたときに、鞍とかってどうされたんですか。
[柴]実は処分してしまいました。今回復帰するときに、ミルファームの清水社長が鞍をはじめとする一式をひとつ買ってくださったんです。
[西]そういうことがあったんですね。
[柴]そうなんです。そしてもうひとつは大知が買ってくれたんですよ。
[西]大知君が買ってくれたんだぁ。いまはいくつ鞍あるの?
[柴]2つです。
[西]足りなくない?
[柴]何とか対応しています。足りないときには大知のところへ行って借ります(笑)。
[西]当たり前だけど、双子なわけだよね。もう一人の自分が頑張って、そして活躍しているということになると、それはやはり俺もと思うんだろうなぁ。
[柴]全く同じ遺伝子なわけですから、できないわけはないんだと、いつも自分に言い聞かせています。
[西]そうだよ。でもね、同じ遺伝子を持った人間として、大知君はここまで頑張ってきたわけだけど、ここまでになると正直思いましたか?
[柴]正直、思いませんでしたね。大知の性格は、諦めずにコツコツと頑張るタイプなんです。それに対して僕はやるだけやって駄目ならば諦めるというタイプなんです。でも、諦めたら終わりなんですよ。
[西]諦めたら終わり。重い言葉ですね。
[柴]本当にそう思います。だからこそ、今度は諦めずに頑張ります。
[西]答えづらいことを聞きますが、一回辞めているわけですよね。しかも成績が残せないということで。そういうなかでもう一回チャレンジしようとしたときに、周囲の反応が冷たかったりしませんでしたか。
[柴]いや、なかったんですよね。みなさんに頑張れ、と言っていただいていたんです。もちろん、いまさらと思っておられた方々もいらっしゃったのかもしれませんが、頑張ってという言葉が嬉しかったですし、力を貰いました。そして受かったときに、藤沢(和雄)先生が握手してくださったんですよ。
[西]あっ、そんなことがあったんだ。
[柴]朝早く、一番乗りのときに坂路のスタンドに行ったんですよ。そうしたら藤沢先生が一人でモニターを見ていて、挨拶をしたら握手してくださったんです。嬉しかったですね。
[西]良い話だなぁ。いやぁ、一緒に勉強していたから言うわけではないけど、頑張ってほしい。何もできないんだけどね。
[柴]いや、そんなことはないですよ。西塚厩舎のとき、たくさん乗せてもらいましたからね。
[西]未崎ちゃんというと野平佑二先生のところも良く乗っていましたよね。
[柴]この前、グリーンチャンネルの番組で野平先生に乗せてもらっているところの映像が映ったんですよ。試験に合格した後、野平先生のお墓に行って報告してきました。
[西]野平先生とはどんな関係というか、乗せてもらう切っかけは何かあったの?
[柴]実は僕もしばらく知らなかったんですが、野平先生にデビューしたときに、同期のなかで僕が一番上手に乗っていると言ってくれた方がいらっしゃったそうなんです。それから目をかけてくださって、最初から乗せていただきました。2勝目が野平先生のところの馬だったんですよね。
[西]野平先生に言われたことで、何か覚えていることってありますか。
[柴]常に格好良く乗りなさいと言われました。例え勝ったとしても、「もっと格好良く乗らないと駄目」と怒られたことがありました。
[西]それは乗っている格好のことですか。
[柴]乗っているフォームもそうですし、あとは勝ち方についても言われました。ただ、感覚的に話をする方でしたので、わかり難いところがありました。
[西]ミスターだったわけですね(笑)。
[柴]そうです(笑)。ミスターみたいな感覚的な言葉が多かったです。
[西]あと、未崎ちゃんというとフレンドリーエースの印象が強いんですよ。スイートピーSを勝ってオークスにいったんですよね。
[柴]そうでした。
[西]タマモクロス産駒で自厩舎の高木厩舎でしたよね。
[柴]そうです。あと、ファストフレンドも最初乗せてもらっていたんです。
[西]あっ、そうだったんだ。やはり凄い馬でしたか。
[柴]確か2戦目に乗せていただいたんですが2着で、そこで骨折してしまったんです。でも、相当走ると思いました。
[西]やはり、そういう感覚ってあるんですね。でも、いろいろ良い馬にも乗っていたんですね。まあ、いまの時代、騎手にとって厳しい時代とも言われますよね。復帰してみてどうですか。
[柴]やはり仲介の方々の存在は大きな変化です。
[西]いわゆるエージェントですね。
[柴]自分でいろいろ営業もしているんですが、やはりその存在感の大きさを感じます。
[西]誰かにお願いしているの?
[柴]はい。大知と同じ方にお願いしています。
[西]現実の話、そこがポイントのひとつになっているよね。でも、その一方で、未崎ちゃんが辞めた当時と比べて、騎手の人たちが減ってもいるから、チャンスが回ってきやすいということはありませんか。
[柴]確かに、そういうことは言えると思います。
[西]いま、3場開催のときに、ローカルに行くよりも本場に残っていた方が、騎乗馬だけを言えば、乗るチャンス自体は多かったりする感覚があります。
[柴]そうかもしれません。でも、調教に乗ることが難しかったりもするんですよ。
[西]えっ、どういうことですか。
[柴]調教だけでも乗せてもらえればと思って声をかけさせていただくんですが、調教に乗せるとレースにも乗せなければならないという意識になるのでしょう。なかなか調教に乗せてもらえなかったりするんです。
[西]あっ、そうかぁ。そんな苦労もあるんですね。でも、本当に頑張ってください。折角、騎手として再びレースに乗ることができて、活躍できる可能性があるわけですから。
[柴]本当にありがとうございます。
[西]もっといろいろお聞きしたのですが、そろそろ時間も迫って参りました。まずは1勝ということでよろしいでしょうか。
[柴]そうですね。とにかく1日、1日感謝の気持ちを忘れずに、諦めずに頑張っていきます。
[西]またぜひよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。
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