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“ナカノコール”のアイネスフウジンを今振り返る
2014.6.19
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中野栄治調教師…以下[中]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]先生にとってはもう聞かれ過ぎているかもしれませんが、ダービーと言えばやはりアイネスフウジンです。よく野球が好きな人が、長嶋茂雄さんのプレーをみて好きになったとか言いますが、そんな感じで、インパクトを受ける何かがあって興味を持ち始めると思うんですよね。僕も含めて、多くのファンの方々のそれがアイネスフウジンダービーだったりすると思うんです。

[中]そういう気持ちはわかりますよ。野球で言えば僕はアンチ巨人なんですが(笑)、長嶋さんと王さんには打ってもらいたいと思ったりするんです。いまの少年たちが、サッカーの本田選手や長友選手を見て、憧れてサッカー選手を目指すというような気持ちは多くの人が持つものでしょう。

[西]僕自身、同級生のお父さんという存在でもありましたが、あのダービーは競馬って凄いと思わせられた存在でした。あれだけの人が競馬場に来るんだと思いましたし、あのナカノコールは子供ながらに鳥肌が立ちました。

[中]最近思うことなんですが、グリーンチャンネルをはじめ、他の中継してくれるテレビ、あるいはラジオなど、競馬を伝えてくれるメディアはとても大切です。でも、競馬場に足を運んでライヴでその雰囲気を感じていただくことはとても大切なんですよ。その雰囲気を感じたファンの方々は競馬から離れていきづらいと思います。

[西]エンターテイメントとはそういうモノだと僕も思います。

[中]プロレスにしても、テレビだと時間通りに終わってしまいますし、筋書きがある云々という言われ方をします。でも、実際に会場で見てみると、肉体と肉体がぶつかりあったときの音は明らかに違いますし、もの凄い迫力を感じますからね。サッカーにしても、あまり詳しくないんですが、なでしこを観てファンになりました。感動しましたよ。

[西]そういう意味では、競馬においてはアイネスフウジンからオグリキャップというのが繋がっていって、多くのファンが夢中になったと思うんです。

[中]またあの時代は、そういうスターホースが出現しましたよね。そして騎手も武豊君が出てきました。

[西]先生は、こちらに豊さんが来ているときに、乗せていらっしゃいますよね。

[中]なかなか乗ってもらえる馬がいなくて(苦笑)。

[西]でも、この前も京都で乗っていましたよ。

[中]よく見ているね(笑)。

[西]先生からみて、武豊騎手はどんな騎手なんですか。

[中]頭が良いですよね。スポーツはもちろんですが、料理でも、それこそ何においてもセンスが大切で、そのセンスというのは頭の良さだったりするんです。そういう意味では、騎手としてのセンスが抜群に良いということです。

[西]確かにセンスに勝てない部分はあると思います。

[中]よく技術云々ということを言われます。それも確かに大切です。野球で言えば毎日ノックを受けることで、それが体に染み付いていくわけですよ。試合でたまたま目を閉じて飛び込んだら、捕球できたということもありますが、それは偶然であって普通は2回、3回とは続きません。それを練習することでできるようになっていくわけです。チャンスを掴む人というのは、必ず努力しています。人に見えるか、見えないかは別にして、必ず努力しています。豊君がそうかどうかは見たわけでもないですし、知りません。でも、その騎乗をみていると、いまでも進化していますので、そういうことなのでしょう。頭が良いですし、本当に謙虚ですよ。


[西]武豊さんに乗っていただいたことがありますが、僕たちに対しても実に丁寧ですよね。俗っぽく言えばもっと威張っても良いのにと思います(笑)。

[中]そこが豊君の豊君たる所以でしょう。だからこそ、一流なんだと思いますよ。

[西]アイネスフウジンに話を戻しますね。あの頃は、中野先生御自身、騎手として苦しい時期で、そんなある夏の日に美浦にいらっしゃった当時の中野騎手に、加藤修甫先生が「1頭、乗ってみないか」と声をかけたと聞いています。それは実話でよろしいんでしょうか。

[中]その通りですよ。

[西]最初から凄い馬だったんですか。

[中]表現が難しいのですが、よく使う言葉で言わせてもらいますと、前輪がパンクした自転車を想像して頂ければ良いと思います。前がガタガタした感じの乗り味でした。

[西]そういう感じだったんですか。

[中]ガタガタの前に対してトモは良いんですよ。踏み込みがとても良かったので、ハミにブラさがるような感じだったんです。前も出ているんだけど、トモ脚の踏み込みがすご過ぎたですね。調教で助手さんが騎乗していたときに、止め掛けに2回ひっくり返ってしまっているんです。

[西]あ、そうなんですか。その助手さんはいまの高市先生ですよね。

[中]そうです。調教には毎回乗ることはありませんでした。なぜかと言いますと、馬は感じます。僕が跨がると、何か感じますので、調教にはほとんど乗りませんでした。

[西]そうだったんですね。

[中]最初は、加藤先生にこういう馬がいるから乗ってみなさいと言われて乗ったときの感想しては、前はガタガタだけど、トモは凄いということでした。

[西]他の馬とは違うと感じましたか。

[中]力そのものが違いましたよね。

[西]いま馬に乗るようになって改めてみると、緩そうなイメージを持つんです。

[中]追って味があるタイプではないという乗り味でした。スローペースで直線33秒の脚を使うタイプではないんですよ。ハミにぶら下がって走る走法だったということもありましたので、あのような競馬スタイルをすることになったのです。

[西]話が逸れてしまいますが、ハミにぶら下がるタイプの特徴として、トモに力がない馬が多いように思うんですけど、どうですか。


[中]多いですよね。それとはまた違うんです。だから凄い。トモが強過ぎるために、ハミにぶら下がるようにして走らないと駄目という稀な馬でした。だから、新馬戦から連続2着でしたが、まだ完成されていませんでしたので、まずはゲートをそっと出ることだけを注意していて、負けはしましたがイメージ通りの競馬ができましたし、何の心配もしていませんでした。

[西]差されて負けてしまっていたんですよね。

[中]案の定、追い出してダラしなかったんですけど、手応えがありました。だから、2連続2着で府中に戻ってきたときに、加藤先生に特別登録をお願いしました。

[西]えっ、未勝利馬で特別ということですか。

[中]負けない自信がありました。でも、加藤先生が未勝利のマイル戦を選択されて、そこで6馬身突き放して楽勝したんです。

[西]そこから朝日杯にいったんですよね。当時は牡馬、牝馬混合戦でした。

[中]朝日杯でも大丈夫だと言いました。牝馬でしたがサクラサエズリがライバルだとは思っていたんです。

[西]確かあの馬も行く馬でしたよね。

[中]スピードでは相手の方が上だと思っていたんですが、スタートしてすぐに後ろに付けることができたんです。相手はこの馬だけだと思いましたし、これならば競り落とせると思いました。

[西]そこからクラシックに向けては、距離が延長されていきますよね。

[中]父シーホークという血統背景から距離に関しては全く心配していませんでした。そしてこの馬も、持ち味はスピードとスタミナなんです。でも、追って味がなく、切れ味はないわけですよね。よくスローペースだと逃げ馬が有利と言われますが、この馬の場合は違ったんです。相手を引き離して逃げて、相手に脚を使わせるレースがこの馬の真骨頂でした。

[西]逆ですね。

[中]33秒の脚を使えるならば良いのですが、そうではありません。本当に追ったら、全くと言って良いほど味がなかったですね。だから差されてしまうんです。自分のペースに相手を巻き込まなければならないということですよね。

[西]最近、そういう馬はいませんよね。末脚勝負という感じばかりじゃありませんか。

[中]言葉は適切ではないかもしれませんが、乗り役さんたちがみんなエリートになってしまいました。それは強い馬に負けてしまいますよ。淡々としたペースを、淡々と進む。みんなが強い馬に負ける競馬をしてしまっているんです。メンバーをみて、レース展開を読んで、いかに強い馬に思い通りの競馬をさせないかということも騎手の大切な仕事ですし、技術というか能力ですよ。

[西]重い言葉ですね。

[中]確かに、いまの若い子たちは上手に乗れるようになったかもしれません。でも、自分の馬が8着に来れるのか、5着に来れるのかということを考えることが足らないんです。ふた桁着順が続いている馬でも、考えることで8着、そして5着に来るようにすることはできるはずなんです。能力に差があるならば、その差をどうやって埋めるのか。それを考えなければ駄目なんですが、最近はみんなが同じような競馬ばかりをしてしまっていますよね。

[西]ただ、そういう指示が出たりする傾向も強くなってきているように思います。

[中]よく技術云々といわれたりしますが、追ってどうのこうのではありません。言葉では表現できない感覚的なモノです。具体的に言えば、引っ掛かる馬を折り合わせるのもそうです。引っ掛かる馬をスッと折り合わせるのは本当に技術ですし、それができるのが本当に上手い騎手です。

[西]そういうものなのですね。実際、引っ掛かる馬を抑えるのは調教でも大変です(苦笑)。
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