独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン


騎手時代の経験をバネに、ダービートレーナーを目指したい
2014.8.7
✉️応援、質問メッセージを送る

加藤士津八調教助手…以下[加]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]ハナズゴールのレースについてはこれくらいにして、オーストラリアへの海外遠征について、いろいろ聞いてみたかったことがあったんですよ。勝負服はサテン(生地)だったよね?

[加]実は、サテンじゃないと駄目なんですよ。

[西]えっ、そうなんだ。エアロ(生地)は駄目なんだ。

[加]プロテクターが厚くて、エアロだと見栄えが悪くなってしまうということもあったりするらしい、とは聞きましたけど、本当のところはどうなんでしょうね。でも、急遽サテンの勝負服を作成しました。

[西]なるほどね。でも、そういうところに目がいってしまうんだよね(笑)。

[加]実は、馬具もうるさくて、こちらから持っていた馬具を取り上げられてしまいました。

[西]えっ、本当?

[加]ステッキも日本のタイプは駄目で、先が柔らかくて音だけが出るタイプじゃないと認められないんですよ。

[西]どんな感じ?

[加]先が太いというか、大きいタイプなんですよ。

[西]あ、わかった。もし可能ならば読者の方々には写真を掲載させていただきますか(編注:写真は次回掲載させていただきます)

[加]あと、鐙も安全鐙じゃないと駄目なんです。

[西]競馬も?

[加]いえ、調教だけです。でも、取られました。

[西]凄いね。返してもらったの?

[加]帰国するときに返してもらいましたよ。あ、それと僕たちが着てるデサントの保護ベストも駄目です。

[西]えっ、なんでだろう?

[加]それとヘルメットも駄目で、取り上げられてしまいました。ほぼ全部駄目で、靴だけでした。

[二人](笑)。

[西]でも、レースで駄目というならばわかるけど、調教でも駄目というのは凄いね。そこまで違うんだ。ある意味面白いね。

[加]日本では、レースで拍車の使用は禁止されていますけど、勝ったレースでハナズゴールに騎乗していたナッシュ(ローウィラー騎手)は拍車を付けているんですよ。

[西]えっ、ハナズゴールに?

[加]そうなんですよ。あれだけ引っ掛かる、敏感な馬に拍車?って、正直疑いましたよ。

[二人]ははは。

[西]ナッシュという名前なの?

[加]苗字はローウィラーですが、みんながナッシュというので、ナッシュと呼んでいたんです。拍車はたぶんですけど、前のレースに付けていて、時間がなくてそのままにしてしまったんじゃないかと思うんです。使わなければ良いんですが、でも驚きますよね(苦笑)。

[西]基本的には拍車は認められているの?

[加]わからないんですよ。今度聞いてみようと思うんですよね。でも、海外はアバウトだったりするかもしれません。

[西]いやぁ、日本ではあり得ないね。そうだ、薬とかはどうなの? 獣医さんは日本から行っていたの?

[加]獣医さんも現地の方に依頼しました。治療薬は日本とは全然違うものを使用して、注射を多用します。

[西]そうなんだ。

[加]追い切り前に注射して、追い切り後にも注射していました。あと、日本ではレースの前日に注射することは禁止されていますが、オーストラリアはOKだと言ってました。本当かどうかわかりませんけど、検査は問題ありませんでした(苦笑)。

[西]うははは。凄いね。日本では昨年ぐらいから、消炎剤などが一層厳しくなっています。国際的な流れに合わせての動きだと言われていますが、西塚厩舎時代には相当注射しましたよ。

[加]以前は許されていましたからね。

[西]その1本を打つことで、良い結果が得られる、あるいは1回の競馬が使えて、みんなが無事に終わるわけですよ。

[加]そうですよね。

[西]ブッチャけさせていただきますと、国際的流れがそうであるのはわかります、注射まで打って競馬をする必要がないという意見があることもわかります。ただ、1本の注射で競馬に出走できることも重みもあるのが現実だと思いますよ。西塚厩舎時代、零細厩舎としては、1回競馬を走れることは本当に大きいと痛感させられました。エビの馬、トウ骨の痛い馬、かなり多用しましたね。

[加]そうだったんですね。今回、一種類だけやらないで欲しいとお願いした薬がありました。

[西]それは何という薬?

[加]名前はわかりません。日本にはなくて、それは歩様が硬い馬とかが、シャンシャン動けるようになるらしいんです。でも、それくらい効果があるからこそ、使用すると故障する確率も高くなるということでした。自分の限界を超えて動けるようになるということみたいで、これが最後とか、このレースは何が何でも勝ちたいというときの最終兵器的な存在らしいのです。でも、ハナズゴールにはまだ競走生活が残されていますし、オーナーにはハナズゴールに繁殖牝馬としての夢を持っていることは聞いていますので。G1レースは勝ちたいですが、故障させるわけにはいかないですし、使用しませんでした。勝っても、壊してしまっては元も子もなくなってしまいます。

[西]なるほどね。

[加]そう言ったら、獣医さんは「こんな良い薬を使わないとは、なんて愚かなんだ!」と言われました。

[二人](笑)。

[西]でも、現地ではOKなんだ。

[加]OKだと言っていました。

[西]薬に関してオーストラリアは先進国だよね。それと、オーストラリアでは獣医師は、人間の医師と同格だとされているらしいんだよね。

[加]そうみたいですね。

[西]競馬そのものはどうなの? G1とかは日本のようにお客さんが入るのかな?

[加]それはないですね。確かに、メルボルンカップはお祭りとして盛り上がるようですが、日本ダービーのときのようにスタンドがファンの方の頭髪で黒く埋め尽くされるということはないようです。少なくとも、ハナズゴールが出走したレースはそうではありませんでした。もちろん、お祭りとして楽しむという雰囲気ではありますけどね。

[西]日本では、ヨーロッパやアメリカで勝つことが凄いというような雰囲気がありますが、全く違う次元というか、ひとつの文化として考えたとき、オーストラリアの競馬に挑むというのは選択肢としてありだと思いませんか?

[加]あると思います。検疫の問題にしても、厳しいということを向こう側も気にしているんですよ。今回、僕らが行って、レース前に話をしていて、日本の馬がレースに来やすくなるように政府の関係機関に働きかけているんだという話をされました。

[西]そうだよね。可能性として、オーストラリアはありだと思いますよ。

[加]検疫所に、海外から来てG1を勝った馬の勝負服が飾ってあるんです。そこにデルタブルースの勝ったことを記録するように、サンデーレーシングの勝負服が飾ってありました。

[西]秋はスプリンターズSを目指すのかな?

[加]その予定です。

[西]あの切れ味は凄いよね。

[加]オーストラリアの馬たちは世界中で、特に短距離で活躍しているということで、短距離にプライドを持っていて、絶対に負けないと思っているらしいんです。そこで、最後方から一気に突き抜けたというレースぶりはある意味ショックだったみたいです。

[西]秋も楽しみだよね。あっ、そうだよ。士津八の話も聞かなきゃ。

[加]えっ、別にいいですよ(笑)。

[西]いや、駄目だよ。お父さん、加藤先生は名騎手として知られています。シリウスシンボリダービーを勝った口取り写真には、生まれたばかりの士津八を抱っこしていたんですよね。

[加]そうみたいですね(笑)。

[西]やはり、幼い頃から騎手になろうと思っていたの?

[加]そうですね。父の背中をみてというか、幼心に騎手って格好いいと思っていましたし、気がついたときには騎手になるんだと思っていました。小学校のときから、体重が増えないようにとか、気にしながら生活していました。

[西]なるほどね。

[加]ただ、ジョッキーには慣れましたけど、ウチの先生みたいにはなれませんでした。小さい頃、あのダービーを勝ったのがお前への誕生日プレゼントだって言われていたんです。僕自身、騎手になることと調教師になること。そしてダービージョッキーになることと、ダービートレーナーになりたいと思ってきました。ダービーを勝って、父親に返したいという思いがあるんです。

[西]素敵だね。

[加]ダービージョッキーにはなれませんでした。そこで気持ちを切り替えて、今度はトレーナー、そしてダービートレーナーを目指して頑張りたいと思っています。それもひとつ親孝行かなと思ったりするんですよね。

[西]今回のハナズゴールのG1制覇だって、立派な親孝行だよ。

[加]そうですかね。

[西]いや、しっかりしているよ。

[加]そんなことはないんですけど。

[西]実は、このコーナーで同じように騎手を辞めた人たちに話を聞いてきたんだけど、ほとんどの人が「ゴールした瞬間の快感が忘れられなくて迷うんだ」と言っていたんだよね。

[加]あぁ、わかります。やはり、辞めるときは迷いましたし、勇気がいりました。子供の頃からなりたいと思い続けてなったわけですし、競馬学校とかでも苦労して、ようやく騎手になったわけですよ。でも、決断できたのは、父親の姿をみてダービージョッキーという理想があったんですが、いまの自分がそうなるのは無理だと思ったんです。このままダラダラと騎手を続けていても、ダービーを勝つことはできない。それならば、スパっと切り替えて、ダービートレーナーを目指そうと思ったんです。ひとつの挫折でしたけど、それをバネにして頑張ろうと思えたんです。

[西]同期とかの活躍はどんなふうに感じるの?

[加]騎手のときはライバルでしたけど、いまはやはり一番応援したくなりますね。松岡と石橋には頑張ってもらいたいですよ。自分が仕上げた馬はもちろんですが、他の馬で活躍している姿をみると本当に嬉しく思います。いつの日か調教師になって、仕上げた馬に乗ってもらって勝つことができるをいいですよね。あの2人は特別な存在です。

[西]いやぁ、良い話をありがとうございました。もっと話を聞きたいのですが、明日早いですし、すぐに裏札へ向かわれる大切な体ですので、この辺で。またぜひ来てください。

[加]ぜひまた誘ってください。

[西]ありがとうございました。


※西塚助手への質問、「指令」も募集中。競馬に関する質問、素朴な疑問をお送り下さい!