猛暑の時期を過ぎた後でも、“バテ”には気をつけなければならない
2014.8.21
毎日、暑いですねぇ。今回は、暑さに対して我々が行っている対処についてお話したいと思います。
これまでもこの話題について、ミストや葦簀(よしず)などのハード面については何度かお話をしてきたと思います。それ以外に行っていないかというともちろんそんなことはなく、調教時間を変更するというような、
ソフト面での対策ももちろん行っています。
例えば、5時、6時と乗って、通常なら7時半となる場合でも、7時半を7時に早めて、より涼しい時間帯に乗るようにしたりするんです。
これだけの暑さですから、今は夏負けしてしまう馬、あるいはバテてしまう馬たちもいます。
よく目の回りが黒ずんでいる、あるいは睾丸が腫れるなどといった症状が、夏負けの特徴として言われます。それ以外にも、乗っていると息使いというか、凄い心臓の音が聞こえてくる馬も中にはいます。人間でもそうですが、暑いなかで運動をすると呼吸が荒くなります。それと同じです。
もちろん暑さに負けず、克服して、逆に調子をあげてくる馬もいます。ただ、人間でも、暑さを乗り越えて涼しくなりつつある時期に疲れが出ることがあります。同じように、涼しくなってからバテをみせる馬たちもいます。
ウチの厩舎のように、連戦するケースが少ないとまだ良いのでしょうが、夏の間戦ってきている馬たちのなかには、涼しくなってバテる馬も出てきますよ。実際、僕自身もそういう馬に携わった経験があります。
ただ、この
“バテる”ということについては、見極めるというか、説明するのが難しかったりするんですよ。
どういうことかと言いますと、
“バテている”と判断する基準が主観的なものだったりすることが多いということです。
飼い葉食いの程度が判断基準としてよく言われます。それも間違いないのですが、それは暑さ云々ではなく、調子そのものを判断するバロメーターでもあるのです。
あと食で言えば、人間だと冷たいものを食べ過ぎて胃腸の調子を壊してしまうことがあります。馬は冷たいものを食べないのでそういう心配はありませんが、暑さで食欲を落とす可能性はあると思います。
そのように、飼い葉をはじめ、毛づやや調教での動き、いつもの前脚の出方、あるいは踏み込みと違うなど、何かこちらに対するサインがあるときはわかりやすいのです。
それに対して、何となくと言いますか、
「いつもと違う」「良いときと違う」というような、説明しづらいわずかな
“違い”のみしかないケースが多かったりするんです。
それは本当に、
“何か雰囲気が違う”というレベルでしかないんです。
これは疲労感だけが原因になるわけではありませんが、馬房のなかで、
いつも立っている場所に立っていない、ということも実は大きなサインだったりするんですよね。
そして、自分は精神論者ではありませんが、説明しづらいわずかな「何となく」について、精神的な理由がある可能性も否定できないでしょう。
この時期に「何となくだるい」と感じたことがある方は多いと思います。夏の暑い中、レースでは真昼に馬が走るわけですし、“走るのが嫌だ”と思う馬がいても不思議ではありませんよね。
だから、継続的にその馬を観察していくことが大切で、状態を把握する上では唯一で、最大のヒントであると思っています。
目に見えない疲労感であっても、それを感じて取り除いてあげることも、我々の大切な仕事なんです。
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