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【対談・鈴木勝助手③】今年の調教師試験は、量が多く難しかった
2014.11.18
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鈴木勝久調教助手…以下[鈴]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]そういえば、秋華賞前のヌーヴォレコルトは栗東に滞在していましたけど、桜花賞前も滞在していたんでしたっけ?

[鈴]桜花賞は美浦で調整して、そこから輸送競馬でした。

[西]秋華賞はプラス10kgでしたよね。そこでお聞きしたいのですが、鈴木さんご自身は、馬体重をどこまで気にされますか?

[鈴]減り過ぎは良くないかな、と思いますね。こちらが意図せず減ったということは、何か要因があることが考えられます。あと、減った状態でレースをしたときというのは、その反動が大きいことがあります。増えるということについては、調教をしっかりと積んでいれば気にしません。よく、ふた桁を超える増減は影響すると言われます。でも個人的には状況によりますが、それを超えなければ気にはしません。

[西]なぜそんな話をするかといいますと、僕自身飼い葉を担当しているんです。どの馬がどれだけ食べて、どれだけ残してという状況を把握しているので、食べてないから減る、しっかり食べているから増えるというように、意図した増減というか、把握していることに関しては納得できるんですよね。でも、思惑通りにならないことも珍しくないんですよ。

[鈴]すべての馬にやっている?

[西]そうです。

[鈴]あっ、尾関厩舎はフェードマンというシステムなんだね。

[西]そうなんです。毎日やっていると、その馬の傾向というものもあるんですよ。例えば、輸送で減る馬ならば、木曜日に計測をして、今回は福島だから何キロくらい減るだろう、といった感覚があるんですが、それとは全く違う結果になったりすることがあるんですよね。

[鈴]そういうことは往々にしてありますよね。

[西]さらに、ここまでやってきて、飼い葉と馬体重、あるいは馬体重と着順が、必ずしも一致しないと言いますか、ブッチャけさせていただきますと、あまり関係がないような気がするんですよ。もちろん、ひとつの目安ではありますよ。でも、そこまで関係がないように思えるんです。外国は計測しませんよね。

[鈴]英国で言えば、日本のようにレース前に計測されることはありません。でも、僕が働いていたマーク・ジョンストン厩舎では計測していました。

[西]あ、そうなんですか。

[鈴]レースの前々日に計測していました。ただ、あくまでコンディショニングを把握するひとつの目安であって、体重に合わせて調教のメニューを考えるとかいうことではありませんでした。

[西]逆に言えば、飼い葉を食べる、食べないに関しては、コンディショニングの影響だったりするんですよね。調子が良いときには食べますし、体調がいまひとつのときには食べる量が減ったり、遅かったりするんでしょうね。意外と単純だったりすると思います。

[鈴]食とコンディショニングは深い関係でつながっていると言えるでしょうね。

[西]例えば、食欲がない時に飼い葉の種類を変えたり、胃薬を服用させて何とかしようとします。でも、そもそもそこに無理があって、人間の意志で馬のコンディションを急激に変化させたり、調子のバイオリズムを変えることなんてできないはずなんですよ。

[鈴]体重で言えば、同じ増えたときでも、乗らないで体重を増やした場合と、しっかりと乗り込んで増えた場合では、その意味が違うのは間違いないですからね。

[西]それですよ。体重の話で言えば、数字を追うために、調教を軽くするとか、あるいは飼い葉を調整するとか、そういう反応をしてしまいがちになりますよね。でも、食べていても体重が減るときもあれば、逆に同じ量なのにどんどん増えていくこともあって、それに振り回されるのはどうかと思います。

[鈴]大切な指標ではありますから、数値化することで可視化すること自体は良いことだと思います。客観性と主観という話で、そういう指標も大切ですが、それと同時にそれぞれの馬を主観的に見ることも大切だと思います。

[西]ヨーロッパなどでは、馬体重や調教の時計を計測しないらしいじゃないですか。

[鈴]僕が行っていた当時のイギリスではそうでした。多くはいまでもそうだと聞きます。

[西]ということは、すべては調教師やスタッフの主観や感覚が指標になるわけですよね。

[鈴]そういうことになるよね。

[西]生き物ですから、数字では推し量れない部分があって、それを感じ取る力というか、感覚が大切だと思うんです。

[鈴]少し話はズレますが、勢司厩舎では調教の前に、隊列を組んだ状態で、先生が馬上のスタッフとコミュニケーションを取っているんです。これは良いことだと思います。隊列で並ぶというのは、競走馬たちにとってはゲートのときしかなかったりしますから。

[西]あっ、国枝厩舎もポリの角馬場のなかでやっていますよ。

[鈴]そうなんだ。

[西]そうです。勢司先生は国枝厩舎の出身ですよね(笑)。そして、最後に調教師試験の話に移らせてください。鈴木さんも調教師を目指して試験を受けられていらっしゃるわけですが、いつから受験されているんですか?

[鈴]30歳から受験しました。

[西]僕は今年で3回目なんですけど、いやぁ難しいですね。

[鈴]厳しいよね。最初を思い出すと、甘くみていたと痛感させられます。まだ、勉強の量も質も含めて、すべてが足りないんだと思っています。

[西]いやぁ、同感です(苦笑)。僕は、基本的に1人でやって、週に何回か谷原さんとやっているんですよ。

[鈴]あ、そうなんだ。どんな風にやっているの?

[西]範囲を決めて過去の問題などをみて、ひたすら問題を解いていた感じで、谷原さんとお互いに問題を出したり、いろいろ聞いたりする感じですかね。鈴木さんはどんな感じですか?

[鈴]基本的には1人ですね。あとは、わからないときは裁決委員の方に質問させていただいています。

[西]今年の問題はどう思いましたか?

[鈴]書く問題が多かったですよね。書くスピードというのも求められていたと感じます。

[西]法規の試験は100%書けたという人はごく少数というか、ほとんどいないんじゃないかと思います。書くことができたという人で、7割から8割じゃないですかね。そうなると、書いた答えがすべて正解していないと駄目だということになるはずなんです。法規もそうですし、馬学に関しても書く量が多かったですから。

[鈴]知識だけではなく、限られた時間のなかで、より正確に、より多くの問題に対しての答えを記述する訓練もしなければなりませんよね。

[西]間違いないです。

[鈴]質問に対して考えているようでは駄目なんですよね。すぐに答えが出て、書くことができなければ。

[西]僕はこのコーナーで、試験の話をあまりしないんですが、本当に大変ですよね。

[鈴]でも、そういう“速さ”について言えば、実際調教師になったときに求められる臨機応変さであったり、馬主さんに対して預託馬について報告や説明することのテストという意味があるんでしょう。

[西]そうなんだと思います。

[鈴]今年、フレグモーネに関して写真付きで出題がありましたが、まさにそういう部分でしょう。獣医師を呼ぶ前に何をするべきか、ということでしたが、日常やっていることですよね。まずは、いろいろな可能性を探るわけですよね。

[西]写真は明らかにフレグモーネだとわかるものでしたが、決めつけてはいけないわけですよね。

[鈴]状態を把握して、様々な可能性を瞬時に考え、そこからさらに考え得る対応策を弾き出さなければなりません。触診して、痛みの有無、熱感の有無を確認して、思い浮かぶ疾病に対しての可能性を考えなければなりません、という感じですかね。

[西]さらにレントゲンも撮影しなければなりませんよね。

[鈴]試験なんですけど、調教師になったときにはやることですから、そのときのことも考えながら勉強だけでなく、日々の仕事もしなければならないと痛感させられます。

[西]いやぁ、試験を受ければ受けるほど、そう思いますよ。

[鈴]確かにテストは紙に書くという作業です。でも、実際は調教師として馬主さんをはじめ、様々な人たちに説明をして、対応しなければなりません。ですから、そういう感覚で、勉強もしなければなりませんし、日々の仕事もしていかなければならないと思うんです。

[西]そうなんですよ。馬術で言えば、日々馬に対して何を求めていくか、どのような馬に仕上げていくのか、ということを考えていれば、自ずと出てくるものですけど、試験になるとそれを書くということになり、スピードが求められ、テンパっていくんですよね(苦笑)。

[鈴]試験という形になるからね。それに対しての対策は必要だし、それが難しかったりするんですけどね。

[西]今年の問題は難しいと言われましたよね。どう感じました? 僕は、難しさということで言えば去年の方が難しかったと思います。

[鈴]そうだね。難しさということで言えば、去年の方が難しかったと思います。今年は量が多かったですよね。一昨年から比べると、去年の方が平均点は下がっていると聞きました。

[西]あっ、そうなんですね。法規にしても、その範囲以上の問題がありましたし、去年の方が難しかったと思います。

[鈴]とにかく、まだ足らないということですよ。でも、信念を持ってやらないと駄目ですし、とにかく頑張るしかないんですよね。

[西]ブッチャけ、西塚厩舎時代に嫌なことをたくさん経験しました。だから、調教師で経験するであろうことが、少しはわかってしまっているんです。生意気な言い方とかもしれませんが、新規の先生たちをみていると、その当時の自分をみている感覚も現実として覚えますよ。

[鈴]なるほどね。実際、先生に代わって、そういう役割もやっていたんだよね。

[西]その当時と比べると、いまの助手という立場がとても楽に感じるのは正直な気持ちなんですよ。もちろん従業員としての責任はありますが、あくまで責任は先生ということになりますよね。確かに、ウチも親父がいたなかでのことなんですが、その重さの差があって、そこに迷いがないと言えば嘘になりますし、試験に向けて全身全霊で邁進できていないという部分が僅かですがあります。

[鈴]そうなんだ。

[西]以前、矢作先生に「『開成調教師』、読ませていただきました」という話をしたところ、「西塚君は、弘人(黛騎手)と一緒にバンドをやっているんだよね」と声をかけていただいたことがあるんです。そのときに調教師試験についての話題になって、当時は受験する前でしたので「受けるつもりです」と答えると、「調教師にならなくても、楽しいことはたくさんある。ならないのもひとつの道だよ。でも、もしなるならば、そういう覚悟を持って頑張らないと絶対に受からない。だから、遊ぶならば遊ぶ、勉強するならば勉強すると徹底した方が良い。だから僕は時間がかかったんだ」と仰っていたんです。

[鈴]重い言葉ですね。

[西]自分に当てはめて考えると、考えさせられるわけですよ。矢作先生の言う通りなんですよね。

[鈴]頑張って駄目だったときの悔しさも出てくるんだよね。

[西]チャンネルを変えて頑張らなければならないんだと、今年の不合格のときに矢作先生の言葉を思い出しながら、思ったんですよね。いやぁ、今日はお忙しいところありがとうございます。でも、競馬って良いですよね。

[鈴]そうですよ。一度に10万人以上の人たちが集って、歓喜するわけですから。どんなロックスターでも、なかなかそこまではできないんじゃないですか。

[西]ちなみに、10万人以上収容できる会場は日本にはありません。国立もスタンドとフィールドで8万人くらいだったはずですから。

[鈴]なかなかないエンターテイメントですし、その馬が生まれて、そこに立つまでに、様々な人たちが、様々な思いが込められていて、それを僅か、1、2分で表現することも凄さはなかなか他にはないですよね。

[西]確かにそうですよね。

[鈴]そういう思いというか、そういう部分をファンの方々はもちろん、我々携わっている側も感じられる幸せを、これから先々に向けても感じることできるように、と思うんですよね。それができることが競馬の魅力のひとつであると思いますから。

[西]本当にそう思います。

[鈴]昔から、その積み重ねがあって、スポーツとしていまの時代に受け継がれてきたわけですから、ここからもさらに受け継がれていってほしいですよね。その役割の一端を担うことができたならば、より幸せです。

[西]お互い頑張りましょう。今日は本当にありがとうございました。



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