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引退が決まったモンストールに、今伝えたいこと
2014.12.2
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モンストールの引退が決まりました。恐らく皆さんがこの文章を読んでいるのと同じか、こちらの方が若干早いくらいのタイミング発表されることになるはずなのですが、どうしてもお別れの挨拶と言いますか、モンストールに伝えたいことがあるので、編集部にお願いして予定を変更してもらいました。

先週の木曜日にモンストールは障害試験を受験したんですが、不合格となってしまい、引退ということになったようです。

飛越などお世辞にも上手とは言えないながらも、義行(横山)さんと練習していたんですが、結局は合格できませんでした。

試験の翌々日、土曜日の朝に僕自身がモンストールに跨がったんです。調教助手として、これまでたくさんの馬に跨がってきました。そんな中で、歩様が悪い、あるいは肉体的に辛いという状況でも、乗らなければならないことがブッチャけあるものなんですよ。

そのとき、僕自身は馬に乗って調教すること、そして馬たちは調教を頑張ることがお互い仕事だという思いでやっています。

少しでも良い方向に向かえるように、僕ができる限りやるようもしますし、ときには乗りながら『あと少しだから頑張れ』と声をかけることもあります。

しかし、今回は生まれて初めて、“やめさせてあげられるならばやめさせたい”と思いました。

モンストールとはデビュー以来の付き合いですので、良いときの姿も悪いときの姿も知っているんです。もっと言えば、モンストールについては、僕自身もよく理解できているという思いがあります。その時々の気持ちも把握できていたとも思うんですよ。

僕は、馬の精神論推進派ではありませんが、過ごした時間が長いですので、肉体だけではなく、気持ちの面でも感じる部分とがあると思っています。

その僕が、まるでモンストールらしさがなくなってしまったと愕然とさせられてしまったんですよ。

そこには伏線もあって、障害試験前に飛ぶ障害を見せていたときに、義行さんが「重賞を勝っていて、活躍した馬なのに、決して良い状態ではないいま、さらに障害を飛ばすのはかわいそう」とつぶやくように言ったことがあったんです。

それでも、モンストールは障害試験でも懸命に完走していました。追い切りをして、さらに障害練習というハードな調教メニューを行ってきていましたので、いわゆる我々関係者が言う“ゴトゴト”になってしまうのは想定内なんです。

でも、それまでのモンストールらしさはなく、何の特徴もない、批判を恐れずに言えば、普通の馬になってしまっていたんです。

それでもモンストールは懸命に走ろうとするんですよ。角馬場でも、自分から走ろうとするんですが、残念ながら進んで行かないんです。

いままでも、角馬場で進んでいかないことはありました。そういうときには、モンストールが持つ独特のスイッチを入れてあげて、そういう態勢にしてあげると、進んで行ったんです。

しかし、その態勢になることさえできなくなっていました。例え良い状況、状態ではなかったとしても、そのポテンシャルの高さを必ずみせてきたんですが、それが全くなくなってしまいました。

角馬場での調教が終わったときに、矢原さんに「もうここでやめてあげたい」と口にしていました。

こうやって言うと、かわいそうという方々もいらっしゃると思いますが、僕は競走馬たちにとってそれが仕事だと思っています。そのなかで、各馬がそれぞれに目標を立てて、それに向かって調整が続けられていきます。

ただ、モンストールは重賞を勝ちながらも、最近ではなかなか良い結果が出ていませんでした。新天地として障害を目指したものの、不得意のために断念せざるを得ない状況になってしまったわけですね。

かつては良い背中で、良い乗り味をしていて、抜群の反応をみせていたモンストールの姿とダブったときに、目標がない現実と変わり果ててしまった姿に涙が出そうになりました。

ダービーにも連れて行ってもらったんですよ。あの週の角馬場、武豊騎手が騎乗するアルフレードの後ろを付いて行っていたんです。

重賞を勝ったときのこと。ゲート練習をしていたときのこと。いままで一度も、「よし、今日はモンストールに乗るぞ」と意気込んで乗ったことはありませんでした。競走馬であるモンストールは走ることが仕事だし、それを跨がって調教するのが僕自身の仕事だという思いで乗ってきましたし、そのときも懸命にそう思うように努めました。

また、そう思わせられたのは、モンストールのプロ根性をみせられたことになるとも思うんです。アスリートして立派というか、肘や肩を故障しながらも、誇りをかけて懸命に投げ抜こうとするプロ野球選手の姿にダブりました。

途中でノド鳴りを発症するなど、苦しい状況に追い込まれながらも、懸命に走り続け、入着を果たしており、まさに満身創痍で頑張り続けた現役生活だったんですよ。障害試験でも、肉体的にはもう限界だったとも思われるなかで、義行さんを落とすことなく、障害試験を走り抜きましたからね。

振り返れば、モンストールには2歳のときから優等生というか、プロっぽさを感じてきたんですよね。

当たり前ですが、馬にも個性があって、少し痛いところがあれば、やめてしまう馬がいれば、レースだけ本気で走る馬など、本当にいろいろいます。限界を超えていたかもしれない状況のなかで、それでも走ろうとしたモンストールの姿はプロの競走馬でしたし、僕自身ひょっとしたら二度と出会えない馬かもしれません。

2歳時にはあのジャスタウェイを撃破した実力の持ち主だっただけに、もし順調だったらと思ったりします。でも、こうして命を落とすことなく、JRAの競走馬を引退できたことにホッとしたりもするんです。

モンストールがみせてくれた風景のすべてを僕は忘れることはないでしょう。一緒にダービーに連れていってくれたことも、ひょっとするとそれももう二度とないかもしれないんですからね。

モンストールには、感謝の気持ちしかありません。本当にありがとうございましたと言いたいです。そしてお疲れさまでしたという言葉を送りたいと思います。

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