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【対談・重岡課長③】芝の状態は先のことを考えて試行錯誤している
2015.4.1
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重岡真司・JRA美浦TC馬場造園課課長…以下[重]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]前回雪の話が出ましたが、除雪はやはり人海戦術なんですよね。重機を使うのは厳しいのですか?

[重]芝は重機を入れるともう取り返しのつかない状態になってしまいますので、現状は人海戦術しかないのです。

[西]相当な数の作業員の方々で除雪を行っていらっしゃいますが、その人員確保は大変ですよね。

[重]建設会社が人員を確保してくださっていて、必要に応じて来てもらうんです。ただ、急に言っても無理ですし、他との取り合いになってしまいます。

[西]他というのは?

[重]高速道路をはじめとする道路ですね。

[西]あ、そうですよね。競馬場だけに雪が降るわけではありませんしね。

[重]ですから、まずはシーズン前に入る前の段階で「そのときにはお願いします」と声をかけておいて、週末に向けて怪しいときには「今週お願いする可能性があります」と話をすると、向こうが「準備しておきます」ということになります。

[西]今年もありましたよね?

[重]雪予報でも降らずに済んでくれたことが多かったけど、一度発走時間を遅らせる形で開催が行われたことがありました(1月31日東京)。あのときは、10センチくらいの積雪があって、ギリギリという感じで、除雪が間に合って開催できたという感じでしたね。

[西]トレセンは機械でやっていらっしゃいますよね。

[重]トレセンの場合は、ウッドやダートが主に使用されていて、芝コースはそれほどでもありませんので、たとえ閉鎖となったとしても、かわりが利きます。それでも厩舎馬道などは人海戦術での対応となっています。競馬場は、やはり芝コースでレースが行われているわけで、芝があってこその競馬ですから、人海戦術で除雪を行っています。

[西]ダート変更にすれば何に問題もなかったりするんですよね?

[重]そうなんですけど、したくはないですよね。やはり、芝のレースは芝で行われてほしいですよ。

[西]ファンの皆さんはご存知ではないかもしれませんが、調教でもレースでも、雪予報のときには馬場造園課の方々は徹夜で準備されるんですよね。

[重]この時期は慢性寝不足状態になりますよね。

[西]徹夜でハロー掛けを行うんですよね。

[重]そうなんです。

[西]話は変わりますが、日本馬場については高速化が言われたりしています。ただ、よく“硬い”と表現されますが、鉄球を落下させて計測するクッション性は年々柔らかくなっているとされています。クッション性に富んでいるのに、脚元への影響が出るというのは、それだけスピードが出てしまうからだという意見がありますよね。

[重]そこがジレンマなのです。よくレースとレースの間に芝コースにたくさんの人が馬場に出てきて、作業をしている光景をみられると思いますが、あれはとにかく平らにしているんです。掘れたところには土を入れて、捲れ上がってしまったり、盛り上がってしまったところには上から叩いて、次のレースまでにできる限り平らにして、走りやすくしています。馬場管理として、不均一ではないように、全体に走りやすい馬場を目指しています。


[西]その結果として、速い時計が出る、いわゆる高速馬場が生まれるんですよね。でも、じゃあ高速馬場は駄目だから、走りづらいボコボコの馬場にすれば良いかというとそうではないですよね。

[重]荒れた馬場では、不正着地が起こる確率が高くなります。それによって故障の確率も高くなってしまうわけですが、それらをよりなくしたいという思いから、平らで走りやすい馬場造りを目指してきたのです。

[西]走りやすい馬場ができました。でも、今度はスピードが出るため、脚への影響が懸念されるというのは、相反しますよね。

[重]ジレンマですよね。ただ、荒れた状態で、危ない馬場で競馬が行われることだけは避けたいです。やはり、すべての馬が思い切り走ることができ、全能力を発揮してもらいたいです。荒れた状態ならば時計は出ませんし、荒れた状態をつくり出すことはできます。でも、そこは目指していません。

[西]荒れたボコボコ馬場でいま思い出したのは、一昨年の函館。札幌の分も連続開催となった年です。記録的な遅さでしたよね。ダート?というレースもありました。あれはどういう状態だったんですか?

[重]あのときは出張で行っていたんですが、特に8月の後半は連続的な降雨もあって、大袈裟に言えば田んぼみたいで、ヌルヌルした状態になってしまっていました。北海道には梅雨がないと言われますが、雨期はありますよね。以前の北海道は、札幌が先の開催で、それから函館となっていました。現在はそれが逆になったので印象が薄くなっていたかもしれませんが、8月の下旬から9月の函館は雨が降るんです。あのときは、ひとえに雨の影響でした。そう考えると、函館と札幌を入れ替えて良かったということでしょう。

[西]昔、母親の実家が函館で夏休みに遊びに行っていたんですが、函館は酷い馬場という印象がとてもあります。

[重]そうだったんですね。それと、いまは函館も札幌もクッションが利いて良い馬場だと言われます。

[西]あ、洋芝だ。

[重]その通りです。いまは洋芝ですが、当時の函館は野芝でした。ギリギリ野芝が成長するのが函館で、生息する北限とされていたんです。野芝というは横に広がりながら成長していくんですが、本当にギリギリという感じで、はげてしまう部分も多いですし、なかなか修復できなかったりしました。洋芝に変わって、函館は劇的に良くなりましたよね。

[西]気候条件に影響を受ける部分があるんですね。

[重]それはありますよね。

[西]そういえば福島とかもいろいろありますよね。

[重]いまはそこまで荒れたりすることはなくなりましたが、我々の悲願でありました。先輩の方々を含めて、我々としては、福島の馬場を何とかしたいと思って頑張ってきましたから。

[西]どういうことですか?

[重]やはり、一番状態が良くありませんでしたしね。

[西]季節とか、自然の影響だったりということなんですよね。

[重]先程説明したように、基本的には温かいところが良いんです。寒いところは苦手です。福島も基本的には寒いんですよね。あとは、夏が一番成長するんですが、9月でも関東地方は暑くて、中山開催でも野芝が旺盛に成長します。でも、福島では1ヶ月くらい早くて、お盆を過ぎるともう成長が止まる感じなんです。

[西]いわゆる“秋福”の前ですね。

[重]そうです。以前は、秋の福島開催は茶色の馬場となっていましたよね。

[西]雨とか降ると、もう芝とは思えないような感じでしたよね。

[重]芝がない状態になってしまっていましたよね。

[西]あ、そういえば、震災で福島の代わりに新潟で行われたとき、ダートのみしか競馬がなかったことがありましたよね(2011年6月4日~12日)。

[重]あのときは1つでも良いから芝のレースをやるべきという意見もありました。ただ、夏の競馬に向けて、養生と言いますが、必ず養成しなければならない時期というのが必ずあるんです。7月の競馬から逆算して、ここから先芝のレースをしたら、夏競馬で芝は保ちません、という状況だったんです。

[西]そうだったんですね。

[重]1レースでも芝のレースが行われていたら、7、8月の開催は悲惨な状況となっていたでしょうね。

[西]こういう言い方をしたらいけないのかもしれませんが、ダートのみ、しかも1200、1700、1800しかないというのは凄い状況でしたよ。あれが中京だったらまた違ったんでしょうね。でも、1レースでも行ったらダメージが残るという、そういう部分を我々は知りませんからね。先のことを考えて試行錯誤されているんですね。

[重]新潟で言えば、新潟の芝コースの特徴はもちろん、気候や降水量など、様々な角度、それにこれまでの過去のデータと経験に基づいて対応しています。

※次回に続く

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