【対談・佐藤博紀師①】川崎には地元騎手の“地の利”がある
2015.3.18
佐藤博紀・川崎競馬調教師…以下
[佐]西塚信人調教助手…以下
[西][西]今回のゲストは3月31日で川崎競馬場所属の騎手を引退、調教師になられた佐藤博紀先生です。よろしくお願いいたします。
[佐]よろしくお願いいたします。
※佐藤博紀(さとう・ひろのり)調教師…1979年6月18日生まれ。川崎競馬所属の騎手として1998年にデビュー。8505戦512勝の成績を残した。
[西]ここで川崎の佐藤が出て来るということは、どういうことなのか困惑される読者の方々も多いかもしれませんので、簡単にご説明させていただきます。佐藤先生は、川崎所属の騎手でいらっしゃいました。その現役時代に通っておられた整骨院の先生がいらっしゃって、その方こそ私、西塚信人が馬に乗り始めたときに、イロハを教わった師匠でもあるんです。かつて乗馬クラブのインストラクターをされていて、そこから整体師になられて成功されています。後藤先生という方なのですが、そこに佐藤先生が通院されていたという縁があるんですよ。そうですよね、佐藤先生。
[佐]はい、そうです。
[西]そこにはJRAの水野先生のお兄さんでもある水野貴騎手なども通院されています。そこの先生がフェイスブックを公開していて、佐藤先生が何度も登場していて、フェイスブック上でよく存じ上げていました。そうしたところ、斎藤誠厩舎に研修に来た佐藤先生と、中山競馬場でお会いしたんですよ。
[佐]『サトパクだ』と声をかけていただいたんです(笑)。
[西]そうですよね。
『あっ、サトパクだ』と言ったんですよね(笑)。その際には失礼しました。
[佐]いえいえ。声をかけていただいて嬉しかったですよ。
[西]そう言っていただけると助かります。そんなご縁なんですが、今日はよろしくお願いします。早速ですが、斎藤誠厩舎で研修をされていらっしゃいますが、どのような経緯だったりするんですか?
[佐]今年小学校5年生になる私の息子が、昨年JRAさん主催のジョッキーベイビーズに関東地区代表として出場させていただいたんです(編注:翔馬君。昨年の決勝は出場者中最年少となる9歳での出場で、5着に健闘しました)。それ以前から毎年参加させていただいているなかで、斎藤先生の息子さんである新君(2013年の決勝大会で優勝)も出場していらっしゃいまして、そこでお話をするようになったんです。
[西]そこでのつながりだったんですね。
[佐]いろいろお話をさせていただいて、馬についてもお話をお聞きしていたんですが、僕が調教師になることが決まりまして、斎藤先生のところで勉強させていただきたいと思って、お願いをしたんです。
[西]他にどこかで研修することは考えていらっしゃるんですか?
[佐]5月からノーザンファームさんでお世話になります。時間の許す限り、様々な角度から、様々なことを学びたいと思っていまして、世界一の施設とされるJRAさんのトレセンはぜひ観て、実際に乗って、実感したいと思ってのことです。上を目指す以上は、絶対に知っておかなければなりませんし、知りたかったので、斎藤先生にお願いさせていただきました。
[西]実際、研修されてみてどうですか?
[佐]刺激がありますよ。なるほどと思うことがとても多くて、毎日が新鮮です。良いと感じたり、やってみたいと思うことを、自分が川崎に戻ったときに、どうやって活かすかということをイメージしています。
[西]美浦トレセンと川崎競馬場の決定的な違いと言えば、馬場のパターンがないということですよね。失礼かもしれませんが、川崎には角馬場ってあるんですか?
[佐]一応あります。
[西]コースのなかは駐車場ですよね。
[佐]調教は、競馬場ではなく、多摩川に隣接する小向トレセンで行われているんです。
[西]あっ、そうなんですね。失礼しました。
[佐]いえいえ。川崎駅からすぐの住宅地に囲まれているという環境なんです。
[西]ちなみに1周どれくらいの馬場なんですか。
[佐]1周1200mです。内コースと外コースというのがあって、内コースで速歩、外コースでキャンターが行われるスタイルです。
[西]内、外というのは、例えば京都や新潟のような内、外ではなく、美浦で言えばDコースとウッドチップというように、それぞれコースがあって、内と外になっている感じですか。
[佐]そうです。形状としてはおにぎり型になっています。
[西]スパイラルカーブだ。
[佐]知っていますね(笑)。
[西]船橋の、ですね(笑)。川崎の方々はすべて小向トレセンなんですか。
[佐]そうです。
[西]あ、そうだ。川崎競馬場はすべての馬たちが馬運車から装鞍所に直接行きますよね。僕はかなり地方交流レースに行っていますので、各競馬場の施設については知っているつもりなんですよ。
[佐]川崎競馬場の印象ってどんな感じですか?
[西]川崎と言えば1500mがあるということでしょうね。JRAで1500m戦というのは、札幌の芝であるだけなんですよ。
[佐]あっ、そうなんですね。
[西]あとは繁華街のなか、都会にある競馬場ということももちろんありますが、独特の感覚が要求されるコースということですね。
[佐]どういうことですか?
[西]これは南関東のすべての競馬場に言えることなのですが、それぞれコース、そしてレースに特徴があって、時としてJRAの騎手の方々にお願いするよりも、そのコースを知り尽くした地元の騎手の方に騎乗をお願いするという選択肢が有効な作戦となるという感覚があります。
[佐]なるほどですね。
[西]浦和、川崎は特にそういう感覚がありますよね。逆に一番そういう感覚がないのは、南関東の4場では船橋競馬場かもしれません。張田さん(現調教師)をご紹介していただいて、乗っていただいたんですが、その騎乗に“地の利”を感じさせられたことがありましたよね。
[佐]僕自身は、JRA所属馬に騎乗させていただいたことがありますが、いつも来ている自分の勝負服ではなく、馬主さんの勝負服を着るときに、特別な思いを感じました。賞金も違って、JRAの基準での賞金を貰えます。すみません、お金の話をしまして。
[西]全然、大丈夫です。このコーナーは“ブッチャけ”が売りですから。金額が違いますからね。
[佐]本当に違います。
[西]交流レースでは、JRAの馬が勝つとJRA基準の賞金が支払われますが、地方所属馬が勝った場合は地方が発表している賞金のみですよね。
[佐]そうです。騎手はJRA所属馬に乗っていないと駄目です。お金の面に関して言えば、多くの人間がハングリーになりますよ。いつも以上に気合いが入りますよね。
[西]僕自身は競馬に乗ったことがないので、よくわかりませんが、競馬場によって流れの特徴みたいなものもあるように感じるんですよね。逆に、佐藤さんをはじめ、地方所属の騎手の方々が中山や東京で乗るとなれば、やはり感覚がわからないということもあったりするんじゃないですか?
[佐]そうですね。
[西]川崎もそういう印象があります。
[佐]コーナーもきついですね。
[西]話は逸れますが、盛岡もそういう印象があります。JRA包囲網的な感覚を受けます。
[佐]それぞれ主戦場としているところでは、やはり“慣れ”と言いますか、地の利という部分はあると思います。
[西]そういう意味ということではないんですが、我々は地方競馬をよく観ています。
[佐]実は、今回の研修でそのことを痛感させられました。いろいろな方々と知り合って、お話をすると、『馬券で取らせてもらったんだよ』、あるいは逆に『馬券でやられた』というような話をされるんですよね。確かに、JRAの方々は地方競馬の馬券を購入できますし、逆に我々NAR関係者はJRAの馬券を購入できるんですが、それにしてもこれほどとは思いませんでした。
[西]『サトパクにやられた』という声があるわけですね(笑)。
[佐]馬券も含めて、本当によく観ていらっしゃいますよ。
※次回に続く
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