【対談・上野翔騎手①】今回のゲストは美浦に移籍して頑張っている上野翔騎手です!
2015.9.16
上野翔騎手…以下
[上]西塚信人調教助手…以下
[西][西]今回は上野翔騎手をお迎えしてお送りいたします。よろしくお願いします。
[上]よろしくお願いします。
[西]なんで俺たちが話をするようになったんだろうね。スタンドかな。
[上]馬の上でしか話をしてきた記憶がないんですよね。
[西]話をする以前から、認識はあったよね?
[上]もちろんです。
[西]俺のなかで、花田と同じような感じで期間限定での美浦騎乗だと思っていたんです
(編注:上野騎手は栗東所属でデビューし、12年秋から美浦に拠点を移した。14年1月に正式に移籍)。
[上]最初はそのつもりだったんです。僕自身は、とにかく環境を変えて頑張ってみたいという思いだったんです。その前に韓国へ行ったのもそういう思いからでした。こちらにきて、いろいろな方々にお世話になっていっていくなかで、美浦への移籍を決めました。
[西]言い方は変かもしれないけど、それだけ美浦で需要があったということですよね。もしなければ、帰っているわけで。僕的には、
「だんだんと変な馴染み方をしているなぁ」と思っていたんですよ(笑)。
[上](笑)
[西]最初は伊藤大士先生のところを手伝っていたよね。
[上]そうですね。あとは池上(昌弘)先生のところです。
[西]あ、池上先生のところも手伝っていたね。きっかけは何かあったの?
[上]美浦に来る1年前、北海道で、池添さんに
『池上厩舎の馬を手伝ってほしい』と言われて、何回かお手伝いをさせていただいたんです。そうして翌年の北海道で、池上先生から
『調教を手伝ってほしい』というお話をいただきまして、その流れで美浦でもお手伝いさせていただいています。
[西]池上先生のところ以外にも、いろいろな厩舎から声がかかっているよね。だからブッチゃけ
「すげぇ食い込み方をしているなぁ」と思うわけですよ。自分でもそう思わない?
[上]それは障害に乗るようになったことが一番大きいと思います。障害を乗るようになって、まずは先輩の方々から馬を回していただいて、そこでいろいろな厩舎の方々と知り合うことができました。そこから声をかけていただけるようになっていったんですよね。
[西](小野)次郎さんのところと、あとは藤沢(和)厩舎も乗っているよね。
[上]そうです。
[西]あ、いまひとつ気がついたんだけど、障害に乗り始めたのは美浦に来てからなの? いろいろな部分で不思議なんだけど、何で? 単純に、障害も乗ることで騎乗機会を増やしたいということだったりするのかな。
[上]それももちろんありますけど。
[西]でも、それだけでは乗れないと思うんだよね。
[上]あとは、障害のレースを見ていて、関西馬だけのレースと関東馬のレースがありますよね。これは僕自身の印象なんですが、関西は力と力の勝負と言いますか、とにかく馬に力があると思えば多少強引でも、というレースをするのに対して、関東はレースのなかで様々な分析をして、それで動いているような感覚を覚えたんです。
[西]言いたいことはわかる。関西馬は力があって、その力に任せたようなレースをするのに対して、関東馬は力を分析し、考えながら乗らないといけない、ということでしょ。
[上]あくまで僕の感覚ですよ。特に関西馬だけのレースだとそう感じます。それに対して、関東はスタートしてから、道中の位置取り、そこからの流れ、そして自分に有利になるように、ライバルたちをどうやって動かすかというような感覚で乗っている騎手の人たちが多いと思ったんです。
[西]いま思い出したんだけど、引退してしまったのでお名前を出させていただきますが、出津(元騎手)さんが現役当時、関東に乗りにいらっしゃいました。その時の出津さんは関西馬に乗っていたんだけど、
「あり得ない位置から平気で動いてくる」と関東の騎手たちから聞いたことがある。
[上]それでも勝ってしまったり、残ったりするんですよね。
[西]そう、そう。それだけ能力に差があるということなんでしょうね。単純じゃないのはわかるけど、上野がそういう感覚ならば、そのままで関西馬に乗った方が勝てるんじゃないかと思うんだけど。
[上]確かに、総合的に見て、関西馬の方が
中山グランドジャンプをはじめ、重賞を勝っているかもしれません。でも、個人的に関東馬に唯一チャンスがあるのが
中山グランドジャンプと
中山大障害だと思っているんです。中山だったら、そこまで差ができないはずだと思うんですよね。
[西]平地の脚の差が出ないということだよね。
[上]それだけではない部分が、中山では要求されます。
[西]東京とかだと、平地の脚の差が確実に出るからね。
[上]もちろん、中山でも力で押し切ってしまう馬たちもいます。でも、やはり道中のリズムをはじめ、上手く乗ってこないと、上手く乗ってきた馬にすくわれてしまう、それが中山だと思うんです。しかも、距離が長くなればなるほど、そうなんです。
[西]その通りだよ。言い方は悪いけど、そうじゃなければ
バシケーン(10年
中山大障害を勝利)とかが勝つことはできないのかもしれない。批判される方もいらっしゃるかもしれませんが、あれが東京だったら、やはり関西の脚がある馬にはなかなか太刀打ちできないと思うよ。だって、パドックでみていて、
マルカラスカルなどの関西馬は本当に良い馬で、迫力を感じるよね。その馬たちが負ける、しかも伏兵にすくわれるような負け方だったりするんだよ。
[上]そうなんですよ。蓑島さんがバシケーンで勝ったときで言えば、大障害まで本当に上手く運ぶことができていたことと、蓑島さんが考えて、考えて、考えて、考え抜いて、勝つにはこれしかないという競馬をしてそれがハマったレースでした。あれが東京や京都といった広い競馬場だと、なかなかハマりづらくなるんです。
[西]ハマったところで、平地の脚があるとそれでも負けてしまったりするからね。
[上]「最高に上手く乗っているけど……」というレースになってしまうんです。
[西]そういう意味では、関東の障害レースのほうが騎手の方々の駆け引きが激しいんだね。
[上]もちろん関西の方々もそういう意識なんですけど、馬の力がある分、力で押し切るという選択肢もあるということですかね。
※次回に続く
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