【対談・上野翔騎手③】栗東と美浦の施設は、それぞれに良い点がある
2015.9.30
上野翔騎手…以下
[上]西塚信人調教助手…以下
[西][西]正直なところ、最初は
「この人、暗いんだろうなぁ」と印象だったんだよね。
[上]先程、言われて驚きましたよ。ただ、普段トレセンで調教していて、いろいろ考えていたりするときだと、挨拶とかも中途半端になってしまったりするんです。
[西]でも、それはみんなそうかもしれない(笑)。
[上]知っている方だと大丈夫なんですが、そうじゃない方だと意識が薄いというか、流すような感じになってしまうんですよね。
[西]なるほどね。でも、知らない人はその一回で素っ気なく感じてしまう。
[上]そうなんですよ。
[西]読んでいる関係者のみなさん、上野は素っ気なくありません。いじりやすいですし、意外と明るいんですということで。
[上](笑)
[西]なぜか、このコーナーは関係者の方々がよく読んでいらっしゃるんだよ。
[上]あ、そうなんですか。ぜひ、よろしくお願いします。
[西]僕などは、普段うるさいんだけど、角馬場の姿で『あっ、今日はアイツヤバイ馬に乗っている』というのがわかるらしい。
[上]普段より人も元気が良くなるんですか(笑)。
[西]逆だよ(笑)。あと
サクラゴスペル。走り出した後も年に2回くらい乗るんだけど、すぐ分かるみたい。話をする余裕がなくなってしまうんだよ。
[上]僕は馬を降りてからですね。スタンドで歩いているときの方が、いろいろ考えてしまうんですよ。馬の上では、こちらがリラックスできていないと、馬もリラックスできないと思っていて、なるべく冗談とかを言うようにしています。
[西]確かに、馬の上ではよくしゃべっているかも。タワー下で藤沢厩舎の待ちをしているときとか、確かに感じ悪いわ(笑)。
[上]ははは。でも、本当に感じ悪いと思います。
[西]話を戻しましょうね(笑)。栗東との違いだけど、施設面ではどうなの? よく坂路については言われるよね。
[上]坂路、ウッドチップ、逍遥馬道、コースの大きさなど、いろいろ言われます。そのすべてが違うんですが、僕自身が一番美浦と栗東が違って、効果が大きいと感じるのは逍遥馬道ですね。
[西]あ、そうなんだ。
[上]美浦の逍遥馬道は入厩してきたばかりの2歳馬でも歩くことができますが、栗東は出口にあたる坂路の入り口付近で、もうバテてしまっている馬がいるんです。
[西]じゃあ逍遥馬道を歩くだけでおとなしくなるね。
[上]そうなんですよ。
[西]何が違うの? 高低差があるとは聞いたことがあるんだけどさ。
[上]下はウッドチップで、言う通り高低差が凄いんです。
[西]そんなに凄いんだ。
[上]登ったり、下ったりと本当に凄い。しっかりと歩かなければ登れない感じで、しっかり歩くためには体力がなければなりません。そういう意味では、走るための筋肉を付けるために一番リスクが少ないのは常歩ですよね。それがあの逍遥馬道ではできるんです。
[西]ギャロップで使う筋肉と、常歩で使う筋肉はほぼ同じという話があるからね。
[上]四肢が連動していないと歩くことはできません。しかも、乗っている人間も常歩が一番コントロールしやすい。以前、先輩に言われたのが、常歩でできないことが速歩でできるわけはないですし、速歩でできないことはキャンターでもできません。だから、キャンターよりもまずは速歩、速歩よりも常歩でしっかりと段階を踏んでいかなければ駄目なんですよね。
[西]おっしゃる通りだと思うし、そういう意識で取り組んでいます。一時期、ダクを踏まないという風潮があった。でも、いまはポリトラックの角馬場で回ることで、馬とのルールを造る、ということをやる厩舎が増えている。
[上]乗っている人間の指示に対して、しっかりと反応することができるかどうかという部分の確認だったり、調教ですよね。
[西]横山典弘さんという騎手の方がいらっしゃいます。よく中山とかで外ラチ沿いを常歩で通りながら、僕たちに適当なことを言っていくことがありますが、そこで馬とのルールを確認しているということだよね?
[上]そういうことだと思います。
[西]どのくらいの扶助で、どれくらいの反応を示すのかということなどを把握することで、自分の手の内に入れているはずなんだよね。
[上]ある程度のことをあそこで確認しているんだと思います。
[西]本人に聞いたことはありませんが(笑)。
[上]ノリさんの感覚的な部分がありますので、それぞれ個人差はありますが、そういうことだと思います。
[西]話を戻しますが、逍遥馬道はそれほど違うんだ。
[上]坂路も高低差はありますが、いや逍遥馬道もなかなかですし、逍遥馬道を通って坂路に行くことになっているんですが、もし坂路だけ同じにしても、効果に差はかなりまだあると思いますよ。
[西]ウッドチップなども言われるけど。
[上]僕自身としては、ウッドチップ自体は美浦の方が負荷がかかっているのではないかと思います。
[西]あっ、そう。
[上]美浦は最後が坂になっていますが、栗東はほぼ平坦ですからね。
[西]確かに、最後はそれなりに登っているよね。
[上]それよりは、栗東は6ハロンから追い切りができることの方が大きいんじゃないかと思います。
[西]コースが大きいからね。
[上]栗東は向正面に出て、直線の部分になってから6ハロンありますからね。
[西]美浦では6ハロンはコーナーですからね。そういう差もあるんだね。関係者のなかには、調教ということでいえば、走る馬は元々能力があるからそこまで鍛えなくても良いけど、そうじゃない馬はある程度やらないと駄目、ということを言う人がいるよね。
[上]そういう感覚はありますよね。馬の能力と限界を見極めながら、どこまで調教をしていくことができるか、ということが大事になってくるんじゃないかと思うんです。
※次回に続く
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