【対談・バレット②】バレットという仕事は、思っている以上に大変なんです
2015.11.10
八田礼奈さん…以下
[八]楠木由華さん…以下
[楠]西塚信人調教助手…以下
[西][西]バレットになるにあたって、規則とか手続きなどはどんな感じで行われるんですか?
[八]面接を受けて、誓約書を提出させられます。
[楠]あと、私たちのように親族に競馬関係者がいない場合、借金がないかとか、身内に犯罪歴がある人がいないか、というようなことは調べられるようです。3週間近くかけて調べていると聞きました。
[八]会社などにも確認の電話があるみたいです。
[西]凄いですね。馬主さんともそういう調査があるらしいんだけど、そう考えるとエージェントの方々にはないらしいんですよ。話は違うけど、それはそれでおかしいですよね。失礼な言い方ですけど、勝浦さんのバレットが八田さんから誰か別の人になったとしても乗り馬は変わりません。でも、エージェントが代われば、乗り馬は変わってくるから。
[八]成績は変わるかもしれないけど、馬の質は私たちが代わったからと言って変わらないですよね。
[西]そう考えると、バレットは近くにいるので、情報漏洩とか、馬券購入とかの可能性を防ぎたいということなんでしょうね。でも、それを言うならばエージェントの方々はそれ以上の存在なのに、予想はOKというのは確かにおかしいですよね。
[八]あと、PATとかに入っていてはいけないんですよ。
[西]八田さんはバレットをやる前にPATは入っていたんですか?
[八]入っていましたけど、馬券は購入できないと言われたので自分で解約しました。あとクラブ法人のことも言われました。
[西]いわゆる一口馬主でしょ。え、持っちゃいけないんですか?
[八]持ってはいけないということでなくて、たとえ持っていても写真撮影に入ってはいけないと言われました。
[西]これは聞いた話なんですけど、エージェントに関してその責任は雇っている騎手にあるという規則らしいんだけど、バレットはどうなんですか?
[八]同じです。
[楠]私たちがもし何か問題を起こしてしまったら、騎手に対して責任が問われることになっています。
[西]あ、そう、そう。以前、マスコミ関係の人をバレットにお願いしようとしたところ、マスコミの通行証を返還しないと駄目というような話をされたことがあったらしいんですよ。そう考えると、いろいろ規則があるんですね。時間が許せば、調教助手がやってもいいんじゃないかと思いますよ。お二人は鞍を運ぶことができないんですよね。
[八]装鞍所には行くことができません。
[楠]でも地方競馬では、調教助手さんたちがバレットをやられていますよね。
[西]地方競馬では、何人かの方々はお二人のように専属の方々がいらっしゃるようですが、基本的には調教助手さんたちがバレットをやられていますよね。我々、調教助手がバレットをやると何が良いかというと、検量した鞍をそのまま装鞍所まで運べて、しかもそのまま鞍を着けることができるということです。
[楠]鞍を持って検量室の外に出ることは禁止されていますから。
[八]お客さんのエリアも当然だめです。
[楠]検量室と騎手の方々がいるジョッキールームのみですね。
[西]基本的に、バレットの皆さんは検量室で騎手の方々の鞍の準備など身の回りのお手伝いをされているということなんですが、ちなみに、報酬はどうなっているんですか?
[八]たぶん雇い主によって金額が違っていると思います。
[楠]雇われている形も違いますからね。
[八]私たちのように、週末のバレットだけという人たちばかりでなく、平日も運転手をするなど完全なマネージャー的な存在になっている方もいらっしゃいます。
[西]確かに専属という形で平日トレセンに来ていたりして、マネージャー的な人もいらっしゃいますよね。また、福島とか新潟、あるいは関西や北海道に同行していくときがありますよね。当然、新幹線代や飛行機代、そしてホテル代がかかるわけですが、そのときはどんな感じになるんですか?
[八]それもそれぞれみたいですよ。
[西]八田さんのところはどんな感じなんですか?
[八]私の場合は、例えば経費が5万円かかったとします。そのときは勝浦さんが2万円、丹内さんが2万円、そしてもう1人が1万円という感じで払っていただいています。
[西]なるほど。ところで、以前松岡に
『バレットは大変な仕事ですよ。朝早く来て、帰りも遅くなるし、楽じゃないですよ』と言われたことを思い出します。そこで思ったんですけど、バレットの方々は朝何時くらいに競馬場に行かれているんですか? 僕たちは基本的に調教が終わってから競馬場に行っているので、わからないんです。
[八]1レースの発走が10時だとすると、検量が8時50分となります。どんなに遅くても8時30分までには行っていないと駄目ですね。ただ、8時30分はほぼ遅刻という感じです。
[楠]それが厩舎装鞍ということになると、検量が8時という可能性もあるので、そのときは7時30分までに行っている感じですよね。
[西]よく騎手の方がギリギリで、慌ただしくなることがあったりもすると聞くんですけど。
[楠]だいたいギリギリの方たちは、自分で鞍を装鞍所に運んで行くんですが、たまにギリギリに来て、検量だけして後は任せたという方もいらっしゃいます。
[八]そのときは、調教師さんや助手さんとバレットで検量するのを待っています。
[西]そこから装鞍所までダッシュとなるんですね。
[八]私たちバレットは、だいたい7時半には皆来ている感じですかね。
[楠]2時間から1時間半前には到着している感じですよね。
[西]2時間は早くないですか?
[八]でも、電車が遅れてしまう可能性がありますし、それで遅れてしまうような事態にならないようにしなければなりません。電車が遅れましたというのは理由にはなりませんよね。
[西]7時半に競馬場ということは、通勤時間にもよるけど、女性ならば5時起きという感じだったりするんですね。
[楠]しかも、開催替わりとかだと、装備を広げて、準備しなければならないので、ほとんどの方々がもっと早く競馬場に来ています。
[西]じゃあ、逆に帰りなんですが、最終レースが4時半だとすると、何時くらいに終わるんですか?
[八]土曜日だと、翌日の準備があるので、だいたい5時半くらいですかね。
[楠]日曜日は最終レースの後片付けを済ませて終わる感じなので、もう少し早く終わります。
[西]5時としても、朝7時からだから、結構長いですね。しかも、連続騎乗だったり、八田さんのように3人担当していると休憩とかも取れなかったりということもありますよね。
[八]担当している騎手の方が乗り続けていれば休憩はないですよね。
[楠]最初慣れるまでは、お昼を食べるタイミングがなかったりしました。
[西]なるほど。ファンの方々がお昼を食べている昼休みも、検量とかあるから。スピード感も求められるだろうし、簡単にできる仕事ではないですね。言葉は悪いですが、テキパキと要領良く仕事ができないと務まらない部分はありますよね。
[八]務まらないということではないとは思いますが、仕事を頼まれなくなるとは思います。
[西]八田さんは、最高でどのくらい鞍を拭くんですか? 単純に3人の12鞍で36鞍が最高ですよね。
[八]そこまではありませんけど、最高で30鞍ですかね。
[西]検量前の準備に、引き上げてきた後の後片付けですか。それを3人。大変ですよね。
※次回に続く
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