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浜中騎手の落馬事故について、思うところがあります
2016.1.27
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24日(日)中京1レースで、浜中俊騎手が騎乗する1番人気のマーキークラブが2番人気のアルセナーレを巻き込む形で逸走して、浜中騎手が落馬するアクシデントが起きてしまいました。

観戦していた方々は、一瞬何が起こったのか、理解できなかったかもしれません。

JRAのホームページなどでレース映像やパトロールビデオを見ることができますので、ご覧頂ければこれからの話が分かりやすくなると思います。また、これからお話することはあくまで僕自身の考えである、ということを前提として、お話ししたいと思います。

よく新聞などで、“モタれる”という言葉を見かけると思います。このコーナーでも何度かお話をさせていただきましたね。

その“モタれる”というのは、基本的には馬の身体のゆがみ、あるいは馬の身体に辛い場所などがあるために、そういう行動を取ることが多いものだと思います。

例えば、右肩が出ないために右にモタれてしまう、あるいは、左トモの踏み込みが甘いから右にモタれる、または両トモが甘いからハミにブラさがってくる、という感じですね。

要するに、その“モタれる”という行動の原因の多くは、肉体面に何か要因があるということなのです。

それに対して我々は、馬が気にしているところ、痛みを感じていると思われるところを緩和したり、治療してあげるなどの対応をとるんです。

ですが、今回はモタれるとかいうレベルではなくて、そういう肉体的に何かある、という感じではないように思うんですよね。

実際、今回については詳しいことはわかりません。ただ、僕自身も調教で同じような経験をしたことがあって、馬場に出ると、右に跳んで行ってしまう馬に乗ったことがあったんです。

この馬の場合、特に肉体面には要因がなかったんです。

乗る時以外でも、例えばロンギをかけたときに、何か肉体に要因がある馬というのは、キッチリと自分の周辺で円を描くように動くことができないものですから。

ですが、その馬については全くそういう素振りがありませんでした。角馬場とかでも普通に乗ることができるんですが、馬場に出ると右に跳んで行ってラチに張り付いてしまったんです。

それは僕だけではなく、騎手の人たちが乗っても同じ行動をみせたんですよ。

ですから結局、その馬は新潟1000mの直線競馬でデビューしました。ですが、なぜそういう行動を取ったのかは、誰にもわかりませんでした。

今回の映像をみながら、そのときのことを思い出し、馬は生き物であるという言葉を改めて痛感させられたんです。

観ている人たちはどうかわかりませんが、馬に携わっている我々も、時として「だいたい馬はこの程度の動きをするだろう」というような感覚が出てきてしまったりすると思うんです。極端な言い方をすれば、ある程度真っ直ぐに走るんだという感覚で接していたりするんです。

そのときに、先程お話をした肉体面での要因に目が向いていくんですが、実はそうじゃない部分があったりするんですよ。

ゴールドシップに騎乗した内田(博幸騎手)さんが負けてしまったときに、「馬ですから」というコメントを残しておられましたが、まさにそれなんです。馬たちも生きていて、何かしらの感情があるんですよ。

僕が乗って右に跳んでいってしまった馬も、恐らくは精神的な部分で何かあったのだろうと推測できます。苦しくてそこから逃げ出したいから、そういう行動をとったんでしょう。

もしかしたら、そのきっかけをつくってしまったのは人間側の至らなさだったりするのかもしれません。

また、そういうことに対してある程度は修正できる場合もあるのですが、人間の力ではどうしようもないこともあるんです。

今回についても、もしそういう素振りや兆候があったとしても、まさかあそこまでなるとは思っていなかったはずですよ。

その要因も、何かに驚いたのかもしれないし、逃げたかったのかもしれません。本当のところは馬に聞いてみないとわからないですよね。

そういう言い方をすると、批判を受けるかもしれませんが、これは我々にとって永遠のテーマだったりするわけですよ。

馬に携わる人間は皆、言葉を話すことができない馬たちの気持ちを、その行動から完全に理解できるようになりたいと思っています。

まだまだ僕自身はその域に達していないんですが、馬の回避行動について、僕の経験でひとつ感じていることがあります。

普段我々はなるべくストレスを掛けないように、という意識もあって、それぞれの馬が嫌がることはなるべくしないようにします。そのために、馬が何かに対して嫌悪感を示す機会そのものが少なくなってしまっているのかもしれませんね。

ただ、調教よりも遥かに辛くて、過酷なのがレースですので、ひょっとしたらレースのなかで何かが嫌で、あのような行動を取ったのかもしれませんよね。

でも、レースと同じ状況は調教ではつくり出せません。

今回の馬は2回目の競馬ということで、やはりまだみせていない本性があったということになってしまうのかもしれません。無責任に聞こえるかもしれませんが、それもあの馬の特徴と言うか、ああいう馬だということなんです。

実際、ここからレースを経験していくことで、修正されるかもしれませんし、またいつか同じような行動を取るかもしれません。

ただ、それが馬であって、これもまた競馬の現実だということを、ファンの皆さんだけではなく、我々もいま一度確認しておかなければならないと感じました。

何気なく走っているようにみえる馬たちですが、これでなかなか難しいものなんですよね。

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