先週の中京で起こった、2頭の出走取り消しについて話します
2016.2.3
先週土曜の中京競馬で、2頭の出走取り消しがありました。今回はこの件についてお話しさせていただきたいと思います。
出走取り消しと聞くと、
「右前の寛跛行のため」、
「フレグモーネのため」あるいは
「感冒のため」といった感じで、その理由として疾病を思い浮かべるファンの方々が多いのではないでしょうか。
実際、出馬確定後の取り消しの多くは、そういう理由が多いはずです。
ところが、先週の2件、中京2レースの
カレンコマンドール、中京6レースの
エテルナミノルは違っていました。JRAのホームページでも確認できますが、この2頭とも、取り消しの理由は
“事故”と表記されていたはずです。
これはどういうことか、まずはそこからお話しさせていただきましょう。
カレンコマンドールは金曜日にゲート練習を行ったところ、激しく立ち上がり、転倒してしまったそうです。そのため調教師に状況の確認を求めたところ、
「今週の競馬に出走させることは適切ではない」と判断したために、取り消し願いを出して、許可を得たということでした。
このようなことは、出走取り消しの理由としてあまり馴染みがありませんよね。でも、実は“取り消し”までは至らなくても、結構あることなんですよ。
いま、JRAではゲート試験に合格してはじめて、“レースに出走して良い”という許可が与えられます。
ですから、2歳馬は入厩してまずゲート試験を受けて、それに合格してから追い切りを行っていく、というのが主流になっています。
ただ、この過程を踏んでいくと、最初はゲートが大丈夫だった馬が、追い切りをやられて苦しくなってくると、ゲートに問題を抱えてしまうという難しさもあったりするんですよね。特に多いのは、入らなくなるケースかと思います。
もちろん、いろんな馬に携わっていると、
「この馬は調教が進んでいくとゲートがヤバくなるかもしれない」と、ある程度までは雰囲気などから感じたりはします。
いずれにしても、ゲート試験に合格した後でも、ゲート練習をするケースは少なくないんですよ。この時に、入らなかったり、出なかったり、あるいは立ち上がったりということがあるんです。
その時に、発走委員の方から
「しっかりと発馬できるようになるまで練習してください。そうしないと出走させられません」と指導されるんです。
詳細については、僕自身知らないので何とも言えませんが、木曜日までの時点でそういう事態になることは珍しくありません。
例えば木曜日の朝、つまりは出馬登録前であったならば、取り消しという事態にはなりません。ゲート試験に合格したけど、練習に行ってみたら駄目だったから、
「今週は出走させられないから登録を見送る」という話になるだけですね。
それが今回は出走確定後に練習を行ったことで、出走取り消しをせざるを得ない状況となってしまったということなんだと思います。
もうひとつ、
エテルナミノルの方は、レース前日に治療を受けたことが判明したため
「獣医委員の指示事項に違反する」として取り消しとなりました。
今回は、前日にビタミン剤の投与を受けたということです。人間で言えば、筋肉注射を受けたようなものでしょうか。
ただ、施行規定では、治療行為の一切はレースの前々日までしか認められていないんですよ。
もし何の異常がなかったとしても、使ったのが禁止薬でなかったとしても、治療を受けたら出走させてはならないんですね。
どういう過程で、今回のようなアクシデントが起こったかはわかりませんが、僕たち現場の人間からすると、これはレアケースと言えると思います。
皆さんもご存じのように、“出走取り消し”は少なくありません。そんな中で、今回の2件はJRAが個別に説明しています。そういうことからも、レアケースだとお分かりいただけるとは思いますが、内情はそういうことだったんです。
馬は生き物ですので、突然の変調に取り消しせざるを得なくなってしまうのは、仕方がないことだったりするんですよね。
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