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【対談・高木助手①】今回はメジャーエンブレムの田村厩舎から、高木調教助手をお迎えしました!
2016.6.1
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高木大輔調教助手…以下[高]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]今回は、先日メジャーエンブレムNHKマイルCを制した田村厩舎から、高木大輔調教助手をお迎えしました。今日はお忙しいところありがとうございます。よろしくお願いします。

[高]こちらこそ、よろしくお願いします。



[西]厩舎の人と一緒に飯を食べるような感覚でお願いします。そういえば、高木さんと話をしていないなぁと思ったんですよね。

[高]話すタイミングとしては、いまが一番良いですよね。

[西]攻め馬でいつもお会いしますが、高木さんとお話をする前に当時助手でいらした高木(登)先生と話をさせていただいたりして、先生が調教師になったときに、ヒカルの冠名を付けられていた高橋光オーナーのところに一緒に行ったりしていました。そんな中で、高木さんについてお聞きしたのが最初でした。従兄弟でいらっしゃるんですよね?

[高]そうです。

[西]調教助手としてあるべき姿や心得などについてお話をさせていただいていたときに、高木先生が高木さんの名前を挙げていらっしゃったんですよ。

[高]ああ、そうだったんですか。一緒に働いたことはないんですけどね。

[西]高木さんのご実家は馬主さんですよね。

[高]育成牧場を営んでいます。登さん(高木調教師)がうちに来ていた当時は、僕は小学生だったので、一緒に遊んだ記憶というのはほとんどありません。元々、登さんはその頃は小柄ということもあって騎手課程を目指していたんですが、残念ながら不合格となってしまったんです。

[西]高木先生は、当時中学生だったということですか。

[高]そうです。騎手課程を不合格になってしまったので、高校に進学して、大学に進学して、厩務員課程を経て、現在の調教師ということです。高校に進学してからはよくうちに来ていましたし、兄弟という感覚ではありませんが、調教師と助手という間柄とはまた違って、よくしてもらっています。

[西]そういうことだったんですね。

[高]実は、僕が田村先生にお世話になるきっかけも、登さんだったりするんです。僕が競馬学校にいたときに、登さんとうちの先生はまだ助手で、ドバイ研修で一緒になったりしていたらしくて、「ちょうど田村さんという人が開業するんだけど」という感じで話をしてくれました。当時は10馬房スタートで、18、20馬房になるには3年くらいかかることが多く、攻め専もそれに合わせて増えていくという感じだったんです。

[西]攻め専志望だったんですか?

[高]ただ、トレセンに入った1年目がうちの厩舎の開業1年目でしたので、最初は調教厩務員として働き始めました。他の2人の先輩たちがいて、18馬房になるときに攻め専に、ということでした。

[西]ということは、3年間はオレンジ(調教厩務員)だったということなんですね。でも、いきなり助手を経験するよりも良かったんじゃないですか?

[高]いまとなっては、本当に良かったと思いますよね。うちでは調教に行く前に、先輩の町田さん(元騎手)と僕で馬体のチェックを行うのが日課となっているんですが、そこで厩務員さんたちの思いや考えを理解できると思っています。

[西]仰りたいこと、分かります。

[高]毎日、直接馬に一番近いところで、触っているのが厩務員さんたちであって、だからこそ感じる感覚というのもありますし、こちらの感覚とは違ったりすることもあります。そのときに、3年間一緒に経験しているという部分を理解してくれますし、だからこそ僕の話にも耳を傾けて、こちらの考えを受け入れてくれます。そういう意味で3年間は役立っていると思います。

[西]偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、現実問題として厩舎の実務に関して、調教師に代わって行うのは助手だったりするじゃないですか。どのような調教メニューを、どの馬で行うのかという部分について、最終決定をするのは調教師ですが、助手の意見が反映される部分も決して少なくなかったりしますよね。

[高]そうだよね。

[西]あとは緊急事態のときには、助手が動かなければならないわけですよね。例えば、厩務員さんが体調を崩して急遽休みとなれば、助手が代わりをしなければなりません。そういう意味では、馬乗り以外に、厩舎全体に関して、様々な業務を行わなければならないわけです。特に実務に関して、助手でなければ困る部分はありますよ。

[高]助手になって15年ですけど、うちの先生には“助手としてセールスポイントをできる限り多く持つように”と言われているんです。馬乗りの技術だけだと、年齢を重ね体力的に衰えたとき、若いときと同じというわけにはなかなかいきません。でも、脚元をみることができる、他に何ができるというように、自分の“売り”があったならば、馬乗りの技術は落ちたけど戦力になれる可能性があります。

[西]馬乗りが上手ではないかもしれないけど、厩舎に対しての貢献度というか、助手として他の部分で力を持っている人というのはいますよね。そんな人をみていると、だから新しい厩舎に行っても仕事ができるんだと思うんですよ。

[高]そういう意味では、オレンジの3年間は大きかったですよね。その3年間を知っている厩務員さんは、助手になってもどこかでその時の感覚があります。もちろん、助手になってから一緒に仕事をしているスタッフの人たちはそれぞれ話を聞いてくれますが、あくまで助手という感覚だったりしますから。

[西]またオレンジのときに培われた感覚という部分が厩務員さんたちは理解できたりするんでしょうね。他の助手さんには言えないけど、高木さんにはわかってもらえるという意識はあると思います。

[高]そういう部分はあるのかもしれません。

[西]脚を捲く、読者の方々にご説明するとバンテージですけど、上手い下手は別にして、やったことがあればできますからね。やったことがない人にはできませんよね。

[高]調教のときのポロバンは捲くことができたとしても、レースのときのベトラップ(バンテージ)は負けないでしょうね。

[西]いきなり捲けと言われても無理です。みんな何回かは失敗しているはずです(笑)。

[高]よく坂路やウッドにポロバンが落ちていますよね。そもそも、落ちないように捲くためには、微妙な力加減が求められますので、簡単ではありません。

[西]失敗といえば、ゲートもそうだと思うんです。高木さんもいろいろな経験をお持ちだと思います。そんな高木さんも、いまの技術ならば問題なく対応できたのに、若いから故に上手くいかなかった過去もあると思うんです。僕自身はありますし、経験値という部分はどうしてもあるものですよね。

[高]あります。また面白いのは、過去に苦い経験をして、それが自分自身の引き出しになっていて、対応できるようになるんですけど、何年かに1頭かは、その引き出しからはみ出したというか、超越した馬が出てくるんですよ。

[西]出てきます、出てきます(笑)。

[高]この前、馬場で話をした馬はまさにそうでした。経験値を超越していて、自分の経験を押し戻させて、考えさせられる感じですよ。

[西]わかります。

[高]先週もある別の馬で、ゲートが駄目だと言われて入厩してきた2歳馬がいるんです。普段は大人しいんだけど、ゲートに寄っていかないし、動こうとすれば動かない。最初の1週間、所属となっている江田(勇亮)騎手が乗って対応していたんですが、立ち上がったりしてしまい、良化を示しませんでした。そこで先生から、指名を受けたんです。結果的には合格したんですけど、2回落ちました。初めてですよ、技術云々ではなく、“もうお願いだから普通に出て”という気持ちになった時に、そういった跳ね返された思いになりますよね。

[西]高木さんでもそういうことがあるんですよね。だって、高木さんは18年働いているわけですから、年間20~30頭の若馬たちのゲート試験をやってきているわけですよ。その高木さんが言うんですから、相当なんでしょうね。その馬の問題はゲートだけなんですか?

[高]そうなんですよ。馬場の入り口とかも大丈夫ですし、大人しくて本当に良い馬なんです、ゲート以外は。

[西]そういう馬って、難しいですよね。普段うるさかったり、立ち上がったりするような馬の方が、ゲートでヤバイ場面では逆に簡単だったりしませんか?

[高]その通り。

[西]逆に、普段は大人しい馬の方が、何かひとつの部分で嫌悪感を示して、指示を受け入れなくなる方が難しかったりしませんか。最近凄くそう思うようになってきたんです。

[高]2回落ちた馬はまさにそういうタイプでした。久々に2回落ちましたよ。

[西]ゲートへの寄りが駄目だったんですか?

[高]1回目は寄りで寄っていかなくて、2回目は逆に出て行かなくなってしまったんです。

[西]硬直系だ。

[高]最初は寄りの練習から行って、1週間は通過のみという感じでした。そうして強い扶助を与えなくても反応してくれるようになったので、出してみようとしたら5秒間くらい動かなくなってしまったんです。

[西]僕はこの前、ブリーズアップセール出身馬でなかなか手強いのがいました。

[高]実は今日、違う馬でゲート試験を受けて合格しているんですけど、ある厩舎の助手さんから前日の夕方電話があって、一緒にゲートに連れて行ってほしいと言われて、今日一緒に行ったんです。そうしたらブリーズアップセール出身馬らしく、縛っていました。他の厩舎の出身馬も縛っていましたし、多いようですよ。

[西]本当に多いみたいです。僕が乗っていた馬はゲート以前の問題でした。

[高]えっ、乗れないということですか?

[西]背中が苦しくて、どこであっても1歩目で尻っ跳ねをするか、立ち上がるしか、できないんです。

[高]なかなか強敵だね。

[西]キャンターとかいう手前、それこそハッキングでさえそういう感じだったんですよ。でも、捕まって勢いに任せて行かせようとすると、もうロデオ状態になってしまうんです。しかも、障害の飛越ができるんじゃないかと思うくらい激しかったんです。

[高]ゲートに関しては何件か聞きましたよ。いま時代の流れもあって、厩舎に行ったらすぐにゲート試験を受けるという風潮ですけど、馬に合わせてやらないとなりませんし、人間の都合で進めると結果的に時間を要することになったりますよね。

[西]ブッチゃけ、ゲートを知っている馬たちというのは手強いですよね。知らない馬は僕たちが教えることができますからね。

[高]最近はないけど、一時期ゲートをみただけで、激しい嫌悪感を示して、パニック状態に陥ってしまう馬たちが少なくありませんでした。確かに、中に入って、出るという動作は経験していない馬とは比べものにならないくらい速いんです。でも、そもそも試験は、寄り付きという部分も重要ですので、とても試験なんて受けられないということもありました。

[西]無理矢理やられてしまっているという部分は間違いなくあるでしょうね。

[高]入ったら出されるとわかっている。だから、寄り付きたくないし、中に入ったらもう興奮してしまうんでしょうね。

[西]僕の意見ですけど、ゲートを通すくらいまでで良いと思うんです。やはり停止(状態)からの発進というのは、馬にとっても負担が大きく、それなりに体力が求められるんです。よっぽどぶっ放されて走っていた方が楽なんですよ。角馬場とかでハミを取って、身体を丸めて走る方が負担は大きい。その部分を省略して進めてしまうと、今度は修正がなかなか利かなくなってしまうんです。わかってもらえますよね(苦笑)。

[高]よくわかりますよ(笑)。ゲートに関して言えば、1、2日の感覚で、おおよそのことは把握できます。嫌悪感があるのかないのか。あるならばどの程度なのか。それを見極めながら、進めて良いのか、もう一度戻ってやり直さなければならないか、という判断をします。

[西]やり直すにしても、どのくらいまで戻らなければならないのかということもありますよね。

[高]状況によっては、嫌悪感を取り除く作業まで戻らないとならない馬たちもいます。そうなると、逆に時間を要してしまいます。若い人たちにも言うのですが、ゲートこそ“急がば回れ”ですよ。

[西]焦りは禁物だったりしますよね。

[高]階段を登るということで言えば、本当に一段、一段、確実に登っていくべきで、その方が早いだけでなく、もし競馬を経験していくなかでゲートに嫌悪感を示すようになったときにも修正が利くんです。

[西]まさにそうなんです。(小野)次郎さんや(田中)勝春さんたちも「ひとつずつやっていかないと駄目」と再三言われてきました。とにかく順番を守りながら、進めていかないと絶対に駄目だということなんですが、本当にそう思います。そういう意味ではゲートを知っている馬と知らない馬というのは本当に違いを示しますよね。

[高]トレセンではほとんどの人たちが、最初は前扉が開いた状態のところを素通りをした瞬間、わかりますよね。

※次回に続く

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