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【対談・高木助手③】実は、馬術は辞めたくて仕方なかったんです
2016.6.15
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高木大輔調教助手…以下[高]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]話は飛びますが、高木さんのご実家は高木競走馬育成牧場でよろしいんですよね?

[高]そうです。

[西]神奈川県にあるんですよね。

[高]厚木です。

[西]元々育成牧場だったんですか?

[高]父方の祖父が東京競馬場の近くに住んでいて、馬主だったんです。それでかなり頭数を持っていたらしく、自分で牧場を、ということから育成牧場を始めたということなんです。

[西]かなり昔ですよね(注:設立は1963年)。

[高]そうでしょうね。当時は向正面のあたりに家があって、そこから馬を連れて行って競馬をしていたという話を聞いたことがあります。

[西]お父さんは長男なんですか?

[高]次男なんです。登さん(高木調教師)のお父さんが長男なんですけど、馬のことはやらないということで、ウチの父親がやることになったようです。

[西]実は、僕自身もそうなんですけど、みなさん調教師の息子だと競馬の世界におけるエリートという錯覚をされているみたいなんですけど、それは違うと思っているんです。本当のエリートは育成牧場の息子さんたちですよ。

[高]そんなことないと思います。

[西]高木さん、聞いてください(笑)。確かに、調教師は収入があって、力があるとされてきました。でも、こと馬に乗るということで言えば、厩舎の馬にその息子たちが勝手に乗ることはできませんし、それこそ触ることもありません。ですから、もし乗りたいのならば乗馬苑に行って乗るしかできません。それに対して、育成牧場の息子さんたちは、子供の頃から馬に触れることもできますし、乗ることもできる環境だったりしますよね。勝春さんも牧場の息子さんでいらっしゃいますけど、子供の頃から馬に乗って、走らないと言われる道産子に乗って草競馬をしていたと聞きました。馬に触れて、乗る時期は圧倒的に育成牧場の息子さんたちの方が早いわけですよ。そういう観点からエリートだと思うんです。ちなみに、高木さんは何歳くらいから馬に乗ったんですか?



[高]実は、僕は中学2年生、ですから14歳から乗り始めたんです。

[西]騎手になりたいとか思わなかったんですか?

[高]逆でしたね。幼いころから傍に馬がいる生活でしたので、馬の仕事はしたくないと思っていたんです。小学校の頃、友達に『家に馬がいるんだろう。いいなぁ』とか言われるのが、何よりも嫌でした。

[西]えっ、そうなんですか。

[高]中学生になる頃には、そういう感覚はなくなっていました。それで、14歳のときに乗馬クラブに行き始めたんです。

[西]実家じゃないんですか。

[高]競走馬しかいませんからね。だから、馬に乗ってみたいというと、父親に乗馬クラブに行きなさいと言われましたよ。

[西]いやぁ、育成牧場の息子さんというと、勝春さんのイメージしかないんですよね(笑)。

[高]そうじゃない人もいるんですよ(笑)。

[西]そこから馬術で頑張ったわけですよね。

[高]それですね、馬術は辞めたくて仕方がなかったんです。大学も、馬術をやるのが嫌で辞めました。

[西]マジですか。

[高]マジですよ(笑)。だから、いま馬術をみていると、凄いと思います。

[西]なんで馬術が嫌なんですか?

[高]馬術というのは、大きく分けると馬場馬術と障害に分かれます。障害は、順番と経路が決められていて、その通りに馬を導いていかなければなりません。それは試合の日の朝に発表されます。それに対して馬場馬術は最初からメニューが決められているんですが、どちらにしても馬に乗るということだけではなく、そういう決められたことを考えながら馬に乗っていることがとにかく苦痛だったんです。本当に嫌で、一刻も早く馬術を辞めたかったんです。



[西]いやぁ、意外です。でも、馬に乗ることは嫌ではなかったんですよね。

[高]最初は抵抗はありましたけど、馬に乗ることは乗れば乗るほど面白くなっていきました。高校のときに、馬術の大会で賞をもらったりしていたんですが、内心では一刻も早く辞めたいと思っていたんです。

[西]マジですか(笑)。それでご実家に戻って競走馬に乗り始めたんですか。

[高]そうです。結局5年間働きました。何と言えば良いのかなぁ。まだ馬場馬術は馬と一緒に、というか馬との信頼関係を感じながらできます。もちろん障害もそういう部分もあるんですが、ちょっと違う部分があるんですよね。

[西]おっしゃりたいことはわかります。

[高]そういう感覚が理解できなくて、嫌だなぁと思うようになったところはあります。

[西]そう言われてみると、競走馬と馬術では、馬への向き合い方は違いますよね?

[高]そう思います。

[西]先程のゲートの話ですけど、馬術は乗り手の指示をしっかりと理解させて服従させることになりますけど、ゲートなどはその馬が歩んできた歴史を環境に思いを馳せながら、リアクションから想像して対応していかなければならないところがあります。そういう部分の違いはありますよね。

[高]うちの父親にも言われたことがあるんですが、馬術をやっていらっしゃる方々は、馬への当たりが強い人たちが多いかもしれませんよね。いかに馬に自分の言うことを聞かせるようにするかということが大事なわけですよ。

[西]服従させるためには、道具も様々なものを使うというのもそういう部分の表れかもしれませんよね。それと、馬術の場合は、こういう扶助をやったときには、馬はこういう反応を示す、ということがあります。でも、残念ながら競走馬にはありません。先程の話ではありませんが、全く想像していない反応を示す馬たちがいますからね。

[高]でも、競走馬の方が良いと思いますよ(笑)。

[西]なるほど(笑)。トレセンに入ろうとか思わなかったんですか。

[高]最初は考えていなかったかなぁ。それが3年、4年と経験を積んでいくなかで、うちのスタッフの人たちのなかに受験して、厩務員過程に合格していく人たちもいて、『1回受けてみようかなぁ』と思って、それで受けたんです。当然、落ちると思っていたので、親にも内緒だったんですけど、それが合格したんです。

[西]えっ、そうなんですか。イメージと全く違います。

[高]どんなイメージですか(笑)。

[西]バリバリ馬術で鳴らしてきて、馬乗りのエリートという経歴の持ち主というイメージというか、実際馬乗り、上手ですからね。勝手に思っていただけなんですけど(笑)。

[高]全然そういうことではないですよ。

※次回に続く

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